面接指導は、いわばテーラーメイド 指導に困るタイプの生徒も必ず伸びる 第一回

私立大学医学部の入学試験では、ほとんどの大学で面接試験が課されます。グループ面接、個人面接、グループ討論など様々な形の面接が行われ、合否の判定における重要性は年々増加していると言われています。元私立大学医学部事務部長で医学部入試面接にも関わっておられ、現在は医学部受験富士学院で面接指導に当たっておられる渡辺弥千雄参与に、指導における経験をもとにお話を伺いました。

平野:

渡辺参与はこれまで私立大学医学部で面接に関わられ、今は富士学院で面接指導に当たられていますが、その指導方法をお聞きしたいと思います。またこれまでに見てこられた、あるいは見ておられる生徒の中で、対応や指導に困難を感じるケースもあると思うのですが、その場合どういう指導をされておられるのでしょうか。

渡辺弥千雄渡辺:

すべての生徒に行っているのは、いわば、テーラーメイドです。面接指導は一様に型にはまったやり方ではなく、個々の思い、知識、性質などそれぞれの力量を勘案して、その上で志望する大学に応じた方法で行います。学院の理念である「教え育む」を地で行っている感じですね。もう1点は、やはりコミュニケーション力をつけてあげることに腐心します。面接の質問で肝心な部分は数点で、あとは面接者の視点に基づくものもありますが、多くはコミュニケーション能力の有無を試しているな、と思われる内容です。同い年や近い年代の人間との会話はよくできるのに、年齢が離れているとなかなか話ができない生徒はたくさんいます。まして面接試験という場ではなおさらですから。

特にこれからお話するタイプの生徒には、これを、よりしっかりやらないとなかなか伸びていきません。ですから、それなりに時間がかかります。

平野:

具体的にはどのような生徒さんでしょうか。

渡辺:

そうですね。医学部で行ってきた面接については、大学の採点基準に関わる部分もあってお話しできない部分もありますので、富士学院で面接指導をしていく上で困ったというパターンについて、いくつかのタイプに分けてお話ししようと思います。

典型的なタイプは、医学部志望理由が全くない生徒、受験希望の大学について全く情報がなくオープンキャンパスにすら参加していない生徒、面接指導の途中で入れ知恵される生徒、明らかにコミュニケーション能力不足の生徒です。それに加えて、入試が近づいた時期に、急な面接指導を希望する生徒も指導する上で困ることがあります。

平野:

ありがとうございます、では、1つずつ、最初の医学部志望理由が全くない生徒についてお願いします。

渡辺:

たとえば、親が医師で、医学部に進学するのが当然という雰囲気であった。だから何も考えていない、というような生徒です。志望理由が全くないのですから、当然卒業後のビジョンはありませんし、目指す医師像や診療科もありません。私が作文するというわけにはいきませんし、う~んと唸ってしまいます(笑)。

平野:

自分自身の考えや志望動機がまったくないというのは困りますね。そういう生徒には、どのように対応されるのですか。

渡辺:

そういう生徒にも、ほとんどが全く理由なしということはなく、普段は意識していないだけという場合が多いです。ですから、ゆっくりと時間をかけて、何かきっかけのようなものがないか聞き出していきます。そのうち、例えばお父さんが休日に診療に出かけていったり、診療時間が終わると直ぐ往診に出ていったり、しているとか、帰宅して間もなく病院から電話が掛かってきたりする姿をいつも見てきたとか、ぽとぽつと話が出てきます。それをどう思っていたかと聞くと、お医者さんはハードな仕事だと思っていたと。あるいは患者さんの姿を見たことは?と聞くと、よく感謝されているのを見ていたと。それで医師という職業は人の役に立っているやり甲斐がある仕事だと思って無意識のうちに医師像が芽生えていたかもしれないというような話になってきます。

それを聞いて話を項目的に整理してあげると、次第に説明ができるようになりますね。父のあとを継いで開業しながら往診や休日診療など地域の医療に携わりたいなんてビジョンの話もするようになるんですよ。

平野:

なるほど。では、受験希望の大学について全く調べておらず、情報がないような生徒さんにはどうするのでしょうか。

渡辺:

やはり、自分で調べさせます。その大学についてインターネットやパンフレットで徹底的に調べてもらい、私も特長などを調べてみます。その中で、単に格好良さそうな謳い文句ではなく医学生になろうとしている立場から本当に魅力的だと思うことを挙げさせ、その内容を説明して理解してもらいます。 また、オープンキャンパスに参加したことがない生徒には、自分が6年間勉学生活をしようとする大学なので、実際に見学に行って雰囲気などを感じてくるように勧めます。やはり、見たことのないものの良さは話せませんからね。結構、見てきて良かった、より入学したくなったという結果を聞きますね。

平野:

分かりました、本日はありがとうございました。