面接指導は、いわばテーラーメイド 指導に困るタイプの生徒も必ず伸びる 第二回

私立大学医学部の入学試験では、ほとんどの大学で面接試験が課されます。グループ面接、個人面接、グループ討論など様々な形の面接が行われますが、面接指導の経験を基に、元私立大学医学部事務部長で医学部入試面接にも関わっておられた渡辺弥千雄参与にお話を伺いました。

平野:

前回の続きですが、面接指導の途中で入れ知恵される生徒というのはどういうことでしょうか。

渡辺弥千雄渡辺:

ずっと指導していると、それまでに面接指導で整理した内容が、急に違ってくることが稀にあります。志望理由に新たな文章が加わったり、その大学の受験理由などが急に変わったりするんです。

理由を聞くと、先生や先輩たちに「こういう文章を加えた方がよい」みたいなことを教えられたというのがほとんどです。ただ、大抵は建て前のような文章や単語が入ってきて、本人が面接で聞かれたら四苦八苦するだろうと思いますし、何より前の質問の返答と辻褄が合わなかったりするんですね。

周囲が本人のために良かれという気持は分からなくもないのですが、本来医師の志望理由、将来の医師像、ビジョンなどは関連しているのが普通ですから、その質問だけ単発的に考えるのは逆に疑問を抱かせますし、「面接試験にどう臨むか」というインタビューでお話したように歯が浮くような言葉で取り繕おうとするのは逆効果になってしまいます。例えば、「救命医を目指しフライトドクターとして命と向き合いたい」という者が「患者の話をじっくり聞いてあげられる医師」とか、「病名や治療法をしっかり説明してあげられる医師」になりたいとか答えると、あれ?という感じがしますよね。

平野:

確かに、そういう本質的な部分の矛盾点が見つかると、聞いている方としてはすべて作り話をしているという印象を与えてしまうでしょうね。話している人がそういう矛盾に気が付かないのは、点で捉えてしまうというか一つひとつの質問を別のものと思っているのでしょうね。

渡辺:

それから、コミュニケーション能力不足ですが、典型的なコミュニケーション力不足の生徒は、さほど難しくない質問にほとんど言葉が出てこなくて考え込む、質問の理解不足で返答がよくズレる、説明をよく聞かないで途中に思いついた質問をしてくる、など明らかに会話力に難があるんです。何回か言葉のキャッチボールをしてようやく普通の対話になってきますが、結構時間がかかります。

医学部のアドミッションポリシーによく「コミュニケーション能力を有する者」というものがありますが、コミュニケーション力がない者は医学部に入って親しい友ができるのか、医師になったときに患者の話をしっかり聞いたり、説明することができるのかという疑念を抱かせます。時間がかかりますが、ゆっくり矯正していく必要があります。

平野:

なるほど、ここまで伺ってきたタイプの人を修正して、医学部合格ができるレベルまで持っていくのは“テーラーメイド方式”でやるのはかなり手間がかかりそうですね。

渡辺:

はい。ただですね、これまでお話してきた生徒が一次はもちろんですが面接をクリアしてめでたく合格してくれたときは、嬉しさ一入ですね。面接は二人三脚だと考えています。指導する側とされる側が気持ちを一つにして立ち向かわなければ、クリアすることは難しいと思いますね。

それから、別の理由ですが、入試が近づいた時期に急に面接指導を希望してもらうのは対応しきれない場合があります。

11月の推薦入試にあたって、高校3年生で早い時期から希望する生徒さんは7月、8月の夏休みから始動するんですよ。希望が多い人はそこから10回ほど面接指導を行っていきます。ところが、10月の末あるいは11月に入って指導の希望が出てくるケースがあります。理由は、まず学科試験がクリアできなければ話にならないので、その勉強でいっぱいいっぱいなんですね。それがある程度めどがついてきて志望大学も概ね決まってくると、面接はどうしよう全く分からないという話になるんです。しかし、2、3回の指導で十分面接に臨めるという生徒さんは極めて稀ですから、試験が間近に迫ってきてそこからスタートするのは時間が非常にタイトなので結構難しいですね。もちろん、何回もやればいいというものでもありませんけど。

これは一般入試にも言えます。面接は大切ですから、後回しにせず早く取り組んでいくことが大切です。

平野:

すると、面接対策はいつごから始めるのが良いでしょうか。

渡辺:

推薦入試の場合は、できれば8月ごろから、一般入試の面接対策は10月ごろから取り掛かるとよいと思います。その方がじっくり対策できます。一般入試の場合は、1月に入ると学科試験対策に集中したい人が多いのですが、そういう人は12月には面接対策は終わっておく必要があります。

もちろん、直前に指導を申し込んでいただいても、匙を投げたりせずに全力で頑張りますが、やはり、早いうちに来ていただく方が確実ですね。

それから、少数ですが歯学部、薬学部希望者にも面接指導は行います。昨年は看護学部の希望者もありました。学部は違っても指導法は変わりませんし、開始時期も早いのに越したことはありません。

平野:

本日はありがとうございました。