メルリックス学院は1999年の創立以来、多くの学生を私立医学部・歯学部に送り出しており、8年連続で推薦合格者数日本一となるなど、高い指導力を持っています。 そのメルリックス学院の指導力そのものである各教科の講師に、指導についてのお話を伺いました。

【小論文】大橋 義人 講師
「『何を』『どう書くか』、具体的に、実践的に練習しましょう。」

平野:

よろしくお願いします。まず、医学部の小論文について教えていただけますか。

大橋:

よろしくお願いします。 医学部の小論文を書いていく上で必要なものが2つあります。1つはその「テーマに関する知識」です、例えば、出生前診断・遺伝子診断について,その利点や問題点について自分の考えを書けといった問題では、そのプラス面や、マイナス面および、そのマイナス面をなくし、プラス面を活かす対策についての知識がどうしても必要です。もう1つは、「小論文に必要な書き方」です。 まず、設問をよく読み、何を答えるべきかしっかりと確認することが大事です。そして、設問に答えていく方向で、「序論」で「問い」の形を打ち出し、「本論」では読み手にとって分かりやすく、自分の「言いたい事」を「論」→「例」、「論」→「その理由」と順序立てて書くことを意識したい。 目の前におかれたテーマについて、「問い」から始まる考える順序、問題点→その問題が生じる理由・原因の考察・説明→ではどうするべきか、その対策の提示、といった思考の順序で書いていき、最後に「結論」ではっきり「問い」に答える形を作るように指導しています。

平野:

なるほど、予備知識と書き方が必要となるのですね。

大橋:

そうです。授業では「具体的に、実践的に練習する」という点では、様々なテーマについて、「何を」「どう書くか」、生徒が実際に書いて覚えるためのインプット用の解答試作を多く用意しています。 私の「解答例」や「解答試作」は全て今述べた「書き方」で書いたものです。 生徒たちは、はじめのうちは私の解答例を、それこそ写すよう書いています。インプットすることで、各テーマについて「何を」「どう書くか」必要な知識と書き方が体感できるようです。思考の順序で書くことが身につき知識が消化されると、今度は自分の言葉でそのテーマについて語れるようになります。そんな繰り返しで小論文は書けるようになります。 自転車も最初から自分でペダルをこいで走れる人はいないはずです。小論文も同じで、まずは補助輪付きで練習するのが効率もよく実践的です。

平野:

それを学んだら、それに対する自分の考えを持つことでしょうか。

大橋:

自分の考えを持つとは、まずは自分の言葉でそのテーマについて語れるようになることです。そのためには上記の作業が必要です。メルリックスの授業では、解答試作のような資料を見ながら、実際に書いていく中で、「何を書くか」という点で必要なキーワードや知識を確認し、自分に足りないものを身につけていくという形をとります。だから、これは、そのテーマについて初めて書く人には、知識の補充になるし、すでに書ける人には知識の確認になるはずです。また、実際に書いていく中で、「小論文に必要な書き方」も身につけてもらいます。このように実際に書きながら、必要な知識や、書き方を身につけていくことで、受験本番において、受験生が「何を書いたら良いのか分からない」とか「どう書いたら良いのか分からない」とか、そういった困った事態に陥らないようにすること。これを指導上の目標にしています。

平野:

なるほど、新しい知識、それに対する自分の考え、そして書き方。学ぶことが多くて大変そうですね。

大橋:

そうですね、言葉にすると何やら大変なことのように聞こえますが、「知識型」の問題でいえば、「テーマに関する知識」を消化し、そのプラス面とマイナス面を整理し、マイナス状況をプラスに転じる対策について読み手にわかりやすい言葉で書けるように練習をするということです。確かに、簡単なことではありませんが、練習を繰り返すことで確実に力がつきます。

平野:

なるほど、小論文の勉強を通じて、色々な知識や考え方が身につきそうです。

大橋:

まさしく、小論文の勉強とは、「自分の知識」を深めることで、先入観や偏見にとらわれない「自分のものの見方」や「自分の考え」を形成していく訓練だと思います。

平野:

なるほど。

大橋:

この訓練で大切なことは2つあります。一つは日常生活の中で目にふれる情報に対してただ鵜呑みにするのではなく、その情報が伝える物事のメリットやデメリットを整理し、「それは本当か」「それは正しいのだろうか」という「問い」を発してみることです。そして、「なぜ正しいのか」「なぜ正しくないのか」、その理由を順序立てて考えてみること。この繰り返しが、「自分のものの見方」、小論文において重要な「問題を発見する眼」の形成や「問題解決能力」の形成につながります。

平野:

情報の整理と問題点の発見、その解決方法の発見ですね。

大橋:

もう一つ大事なことは、様々な議論を知るということです。「自分の考え」というものは、最初から頭の中にあるわけではありません。テーマに関連した様々な問題を知り、それらに関する他者の意見を知ったとき、はじめて「自分もそう思う」「いや、それは違うのではないか」という形で、そのテーマについての「自分の考え」が明確になってくるものなのです。従って、様々な議論を知ることは、自分の考えを形成していくためにも必要なのです。

平野:

なるほど、そうするとその勉強はとても一人でできるものではありませんね。

大橋:

そうですね、生徒にとって自分の考えに対する第三者からのフィードバックが必要です。他者からフィードバックを受けることで、自分の考えについて客観的に振り返ることができます。だからこそ、添削を通してアドバイスを与えることが大事です。授業後、添削でチェックされた部分を消化して書き直してみることが大事です。また、他者の小論文を読み、そこに添削された部分を読むことも自分の小論文の参考になるはずです。

このような作業を通じて、入試本番においてメルリックスの生徒一人ひとりが様々なテーマに応じた自分の小論文を書けるようにすること、これが小論文の授業の最終的な目標です。