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第24回:イオン化傾向とイオン化列

酸化力のある酸に溶けない金属

酸と金属の反応について、もう少し突っ込んでおきましょう。

まず、金属が希酸に解けるのは、H と金属の酸化還元反応が起こるためです。例えば、HCl と Zn の反応では、以下のような半反応式で表される反応が起こります。

この2つをあわせると、亜鉛が希酸に溶ける反応式 Zn + 2H → Zn2+ + H2↑となります

これは、還元剤としての Zn の力(電子を押し付ける力)が、還元剤としての H2の力より強いために起こる反応です。ですから、H2よりイオン化傾向の小さな Cu~Au は希酸には溶けません。

Cu~Au はHよりもっと酸化力のある酸に溶けます。酸化力のある酸というのは、熱濃硫酸・濃硝酸・希硝酸・王水の4つです。これらは強い酸化剤として働きますから、H2 よりイオン化傾向の小さな金属も酸化して陽イオンにしてしまいます。
ただし、イオン化傾向がものすごく小さな Pt と Au はこの中でも最も酸化力の強い王水にしか溶けません。王水は濃硝酸と濃塩酸を 1:3 の割合で混合したものです。(一生三円と覚えます。)

銅や銀が希硝酸・濃硝酸・熱濃硫酸に溶けるときの反応は頻出ですから、必ず書けるようにしましょう。
これは酸化還元反応なので、半反応式とイオン反応式を書いて考えます。

例として、銅と希硝酸の反応式書いてみます。手順は、酸化還元反応で説明した通りですね。

半反応式
Cu → Cu2+ + 2e ・・・・ ①
HNO3 + 3H + 3e → NO + 2H2O ・・・・ ②
イオン反応式(①×3+②×2)
3Cu + 2HNO3 + 6H → 3Cu2+ + 2NO + 4H2O
全反応式(左辺・右辺にそれぞれ 6NO3- を加える。)
3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O

このように、酸化力のある酸に金属が溶けたときに発生する気体は、H2ではなく、それぞれの酸が酸化剤として働いたときに発生する気体です。

それぞれの酸に金属が溶けたときに発生する気体はすぐに答えられるようにしましょう。色や性質も大切です。

濃硫酸と金属 → SO2 : 刺激臭、無色、殺菌漂白作用

濃硝酸と金属 → NO2 : 刺激臭、赤褐色、有毒

希硝酸と金属 → NO : 無臭、無色、空気中で酸化されて NO2 になる。

さて、希酸に溶けない金属すら溶かしてしまう酸化力のある酸は、どんな金属でも溶かしてしまうような気がしますが、実は、希酸に溶けるのに酸化力のある酸には溶けない金属も存在します。

それは、Al、Fe、Ni の3 種類の金属です。これらの金属は酸化力のある酸(濃硫酸・濃硝酸)を加えると、表面にち密な酸化被膜が生じてしまい、それ以上反応しなくなってしまいます。

このように、表面の酸化被膜によって薬品に侵されにくくなった状態を不動態と言います。ただし、これらの金属も希硝酸や王水には溶けます。この3 つは良く出てくるので覚えましょう。

あ(Al)て(Fe)に(Ni)ならない不動態というゴロは聞いたことがありますよね。

また、Pb は硫酸と塩酸に溶けません。Pb は硫酸イオンと水に不溶の PbSO4 を、塩化物イオンとは同じく水に不溶の PbCl2を生じます。これらが Pb の表面を覆ってしまうと、内部が保護されてしまい、それ以上酸に溶けなくなってしまうのですね。考え方は不動態と同じです。

今回はここまでにしましょう。今回はイオン化傾向の説明でしたが、次回以降、電池の性質について解説します。

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平野 晃康

平野 晃康

株式会社CMP代表取締役
私立大学医学部に入ろう.COM管理人
大学受験アナリスト・予備校講師

昭和53年生まれ、予備校講師歴13年、大学院生の頃から予備校講師として化学・数学を主体に教鞭を取る。名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、株式会社CMPを設立、医学部受験情報を配信するメディアサイト私立大学医学部に入ろう.COMを立ち上げる傍ら、朝日新聞社・大学通信・ルックデータ出版などのコラム寄稿・取材などを行う。

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