医学部受験を決めたら 私立・国公立大学医学部に入ろう!ドットコム

私立・国公立大学医学部に入ろう!ドットコム は、医学部受験情報のポータルサイトです。
会社概要 | このサイトについて | 出稿ご希望の方はこちら

化学講座 第48回:浸透圧

きゅうりを濃い漬物液につけてしばらく置いておくと、水分が抜けてしんなりとしますね。これは濃度の低い溶液から高い溶液に向かって溶媒が移動するという性質によって起こる現象です。

これを二つのピストンと、溶媒分子を通すけれど溶質分子を通さない半透膜を組み合わせた実験装置を使って説明します。両端が開いた管の中央に半透膜を取り付け、右側に溶液、左側に純溶媒を入れてピストンを設置します。ピストンが自由に動くことができるようにしてしばらく放置しておくと、純溶媒の方から溶液の方へ溶媒分子が移動していくのが観察されます。

このような現象は、溶媒分子の移動速度に着目すると理解することができます。下図のように、純溶媒側からも溶液 側からも溶媒が半透膜の反対側に移動しようと衝突します。しかし、溶液から純溶媒側へ移動するときには、溶質が邪魔をする(溶質は半透膜を通過できずに跳ね返される)ため、純溶媒側からの移動速度より遅くなるのです。

この溶媒の移動は、半透膜の左右の濃度が同じになるまで続きます。この例だと、左側は純溶媒ですから、いつまで経っても濃度は同じにならず、最終的には右側にすべての溶媒が移動してしまいます。
もう1つ、溶媒の移動を止める方法があります。それは、溶液側に圧力を加えて押し返すことです。このとき、ピストンを元の位置に戻すのに必要な圧力を、この溶液の浸透圧と言い、で表します。

浸透圧は、ファントホッフの式は Cは(mol/L)で計算することができます。

この式の導出にも、蒸気圧曲線と同じように自由エネルギーの話が出てきます(大学で苦労してください)のでここで詳しい話はしませんが、この式は受験問題でめちゃくちゃ良く出てきますので、ちゃんと覚えてくださいね。

浸透圧が加わるのは、左右の溶液の濃度が違う時ですから、溶媒が移動した結果、左右の濃度が同じになると平衡に達して溶媒の移動はそれ以上起こらなくなります。浸透圧に関する問題を2つやってみましょう。

問題
装置の左側にV(mL)、の溶液、右側にV(mL)、の溶液を入れてピストンを自由に動く状態にします。

しばらくの間静置しておくと、浸透圧によって溶媒が半透膜の左側から右側へ移動します。溶液の体積は混合によって変化しないものとして、液体の移動が平衡に達して移動しなくなった時の濃度、体積を求めなさい。

解答
平衡時のA、Bの濃度をC(mol/L)、Aの体積を、Bの体積をとします。

C、の3文字がありますから、方程式が3本必要ですね。

まず、溶液Aの濃度に着目しましょう。体積がV(mL)→となって濃度がと変化しています。物質量が変化していませんから、変化の前後での物質量が同じだという式を作りましょう。
これは濃縮や希釈と同じですね。(分からない人は濃度の所を参照してください。)

次に、体積の和が変わらない、とありますので、・・・③が成立します。
こういう、溶液全体の量に関する保存則は方程式を作るときのマストアイテムですから、質量や物質量、体積や質量についての保存則が成立しないかを常にチェックしていてくださいね。

問題

下図のような断面積がのU字管の内部に半透膜を取り付け、左側に純水、右側にCmol/Lの水溶液をそれぞれVmL入れたところ、液面が同じ高さになった。浸透圧によって溶媒が左側から右側へと移動しはじめたため、溶液側に圧力を加えて液面差が生じないようにした。このときに加えた圧力を求めよ。(図2)
次に、圧力を0にすると、徐々に液面差が生じ、液面差が2h cmになったところで液体の移動が停止した。このhの値をS、C、Vおよび水および水溶液の密度として表せ。(図3)
ただしと釣り合う水銀柱の高さを76cmとし、水銀の密度をとする。また、は完全に電離するものとする。室温はT(K)とし、すべての液体はこの温度になっているものとする。

解答

図3に必要な圧力について。
この問題では、濃度が変化していることに気を付ける必要がある。
管の断面積と生じた液面差から、移動した溶媒の体積はであるから、溶液の体積はV mLからV+Sh mLへと増加している。

2h cmの溶液の柱がこの圧力を作っていることになる。、h等を用いてこの水柱の作る圧力を求めよう。

まず、1cmの水銀柱の作る圧力は、Paですね。

次に、1cmの水柱は、水銀との密度差から、水銀柱cmに相当します。

従って、1cmの水柱の作る圧力は、×Paとなります。

ですので、2h cmの溶液の柱が作る圧力は、××2h Paです。

これが、先ほど求めた浸透圧に等しいので、次の式が成立しますね。

 

平野 晃康

平野 晃康

株式会社CMP代表取締役
私立大学医学部に入ろう.COM管理人
大学受験アナリスト・予備校講師

昭和53年生まれ、予備校講師歴13年、大学院生の頃から予備校講師として化学・数学を主体に教鞭を取る。名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、株式会社CMPを設立、医学部受験情報を配信するメディアサイト私立大学医学部に入ろう.COMを立ち上げる傍ら、朝日新聞社・大学通信・ルックデータ出版などのコラム寄稿・取材などを行う。

講師紹介 詳細

 

全国私立大学医学部 各大学別入学試験情報