関西医科大学 一般入試 物理
関西医科大学の理科は二科目合わせて120分。単純計算で一科目あたり60分の計算である。
問題形式について
まず大問について。
どの年度も、最後の2問はうち1問を解答するという選択式になっていた。
結局受験生が解く大問は、2009年度までは5問で、2010年度からは4問に減少していた。
次に小問について。
解答方法は、記述式と選択式のものがあった。
この2つは、題材の難易度によって使い分けてあり、比較的難しそうなものは文章の穴埋めとなっていて、小問の形式によって難易度の調整をしているように見えた。
またごく少数だが、論述形式の問題もあった。
以下に各大問あたりの小問数の表を示す。
年度 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | |
---|---|---|---|---|---|---|
小問数 | 第1問 | 5 | 5 | 5 | 4 | 4 |
第2問 | 5 | 10 | 5 | 4 | 4 | |
第3問 | 10 | 5 | 5 | 10 | 4 | |
第4問 | 5 | 5 | 7 | 8 | 4 | |
第5問 | 8 | 5 | 4 | 10 | ||
第6問 | 6 | 6 | ||||
合計 | 33 | 30 | 22 | 36 | 32 | |
平均 | 6.6 | 6 | 5.5 | 6 | 5.4 |
下のそれぞれの大問の説明の所にも書いてあるが、この表で言えば小問数が4問ないし5問、6問なのが記述式、7問以上のものが穴埋め式となっていた。また、2010年度第5問は丸丸論述形式となっていた。
2010年度から大問数が5問から4問に変更になり、おそらくこの先も4問だと思うのでそうだとして話を進めると、物理にかけられる時間が60分である事から大問1問あたりにかけられる時間は15分となる。
小問が記述式の場合、2010年度以降だと小問数は5問のものしか無いのでそれで話を進めると、小問1問あたりに3分かけられる計算になる。一方穴埋め式の場合ほとんどが穴10個程度だったので、1つを平均1分半で埋めれば良い。これを目安に取り組むと良いだろう。
出題範囲について
以下に、年度・問題別の出題範囲の表を示す。
第1問 | 第2問 | 第3問 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2012年度 | 力学 | 万有引力 | 波動 | マイクロ波 | 電磁気 | ベータトロン |
2011年度 | 力学 |
衝突 | 波動 | 光波 | 電磁気 | サイクロトロン |
2010年度 | 力学 | 摩擦 モーメント 重心 |
電磁気 | 非線形抵抗 | 波動 | 光波 |
2009年度 | 力学 | 摩擦 | 波動 | 音波 | 波動 | レンズ |
2008年度 | 力学 | 運動量保存則 | 波動 | ドップラー効果 | 波動 | 光波 |
第4問 | 第5問 | 第6問 | |||
---|---|---|---|---|---|
2012年度 | 電磁気 | ダイオード | 原子物理 | ||
2011年度 | 熱力学 | 熱気球 | 原子物理 | ||
2010年度 | 熱力学 | 気体 | 原子物理 | ||
2009年度 | 電磁気 | 電磁誘導 | 熱力学 | 気体 | 原子物理 |
2008年度 | 電磁気 | 電流と磁場 | 熱力学 | 気体分子運動論 | 原子物理 |
上の表からわかる通り、必須問題(各年度の後ろの2問以外)には必ず力学、電磁気、波動が入っている。また、選択式の片方が原子物理となっていて、普通は原子物理はあまり出題されないのでほとんどの人がもう一方の問題を選択する事になるのではないかと思う。2012年度以外は選択式の問題は熱力学なので、全体としては非常にバランスのよい構成となっている。
問題について
まず、全体を通した雑感について。
関西医科大学の物理を解いてみて、この大学の問題は、他の大学と比べて問題ごとの難易度のばらつきが激しいなと感じた。簡単なものは表を読み取るだけとか、本当に教科書の基礎問題のレベルだったりするのにも関わらず、難しい方では球レンズを扱ったり、ベータトロンを扱ったりと非常にレベルの高い題材になっている。なので、この問題で合格点を取るためには、簡単な問題でぽろぽろと取りこぼしている場合ではないと思う。
正直な所、簡単な所は8割9割ではなく、自信を持って完答して欲しい。そうでなければ安定して合格点を取るのは難しいだろう。そうやって簡単な所できちんと満点が取れていれば、難しい所は半分取れれば十分な得点になるだろう。発展的な内容よりも、基礎を忠実に、計算ミス無くこなす能力がこの大学には求められていると思う。
次に、各年度について書いていこうと思う。
2012年度
全体
全体的な難易度は例年通り。第2問、第3問で完答するのは難しいと思うので、第1問でしっかり点数を稼いでおきたい。第2問では、(2)でつまずく人もそれなりにいるのではないかと思う。ここで間違えると後ろが全滅するので、ここはできれば取っておきたい。第3問はベータトロンの問題で難しいと思うので、最低半分ちょっとを狙っていこう。
第1問 力学 万有引力
難易度はやや低め。太陽の周りを回る物体について考察する問題。物体が太陽の重力圏を出ないような条件を求める問題である。万有引力の位置エネルギーというものは遠くにいけば行くほど大きくなるので、おおまかに言えば無限遠点での位置エネルギー分の力学的エネルギーを最初に持っていればよいという事である。
第2問 波動 マイクロ波
難易度は普通。電子レンジの仕組みについて考察する問題。(2)で正しく電子レンジの大きさと、解答のような定常波のイメージができるかどうかが分かれ目になってくると思う。ここさえ突破できれば、(5)の知識問題以外は解けるはず。
第3問 電磁気 ベータトロン
難易度はやや高め。ベータトロンについて考察する問題。電子加速器にはサイクロトロンとベータトロンがあるが、ベータトロンは内容のレベルがどうしても高くなるためにあまり出題されなく、また対策も疎かになりがちである。その代わり文章の穴埋めとなっているので、仮にわけがわからなくても半分以上は埋められるはずなので、6~7割を狙って取り組もう。この問題が全て解けていたらかなりのアドバンテージになるだろう。
第4問 電磁気 ダイオード
難易度はやや高め。太陽光発電の仕組みについて考察する問題。最初から論述があり、その後もそれなりに重たい。普段あまり見ない問題なので、その場で考える力が試されている。
第5問 原子物理
省略
2011年度
全体
全体的な難易度はやや低め。第1問~第3問の難易度がやや低く、教科書レベルの事を忠実にやっていけばさほど詰まる所も無く解けるだろう。第4問が少し計算量も多く難しいので、第5問を選択するというのもありだと思う。
第1問 力学 衝突
難易度はやや低め。水平投射された物体と床との衝突、および壁との衝突について考察する問題。内容はかなり単純だと思う。これは難無く全て解けていて欲しい問題である。
第2問 波動 光波
難易度は普通。水面で屈折、反射する光について考察する問題。文章の穴埋め式となっている。ごちゃごちゃと設定があって難しそうに感じるが、実際やってみるとそれほどでもないと感じるだろう。
第3問 電磁気 サイクロトロン
難易度はやや低め。サイクロトロンについて考察する問題。内容は教科書に書いてあるレベルの事を全く出ていない。この問題はしっかり取りたい。
第4問 熱力学
難易度はやや高め。熱気球について考察する問題。計算量が多く、また使う文字も多いので計算ミスに注意しよう。(5)が更に少し難しいが、最悪ここは捨てても良いと思う。半分強解ければ上出来だと思う。
第5問 原子物理
省略
2010年度
全体
全体的な難易度は例年通り。第1問、第3問、第4問が完答できるかどうかわからないので、少し簡単な第2問はしっかり取っておきたい所。残りはそう難易度にばらつきも無いので、できる所からどんどんやっていこう。
第1問 力学 摩擦 モーメント 重心
難易度は普通。角材に重りをつけ、運動を観察する問題。(4)を重心を使って考える事ができるかどうかという部分が分かれ目になってくるだろう。(4)が解ければおそらく(5)は解けるので、(4)が解けない上にそれ以前も解けないとなると少し痛い。最低でも(3)まではしっかり答えよう。
第2問 電磁気 非線形抵抗
難易度はやや低め。電圧によって抵抗値が変わる電球について考察する問題。内容は教科書レベルなので、ここは落とさずいきたい。
第3問 波動 光波
難易度は普通。光波を利用して空気の屈折率を求める問題。問題文が上手く誘導になっているので、これに乗っかっていこう。マイケルソン干渉計は、見た事が無い人がほとんどだと思うが、空気の屈折率を求めるのにはかなり有用なので、覚えておこう。
第4問 熱力学 気体
難易度は普通。同じピストンヘッドがついている二つの容器内の気体について考察する問題。文章の穴埋め式となっているので、第5問よりも取り組みやすいと思う。特に飛躍していたりしてわかりにくい所は無いので、基本の状態方程式から落ち着いて考えていこう。
第5問 原子物理
省略
2009年度
全体
全体的な難易度は例年通り。ただし、この年度は大問ごとの難易度のばらつきが非常に激しい。具体的には、第1問、第2問、第5問はかなり簡単だが、その代わり第3問、第4問で完答するのは非常に難しいだろう。簡単な3つは8~9割以上しっかり取って、第3問、第4問は半分程取れば合格点には十分達するはずである。
第1問 力学 摩擦
難易度は低め。斜面上に置かれた物体と滑車でそれと繋がれた物体について考察する問題。物体が3つなので一瞬警戒するが、見てみればどの小問も何のことはない問題達である。これは絶対に、時間を余らせて完答したい問題。
第2問 波動 音波
難易度はやや低め。ギターの違う弦が出す音について考察する問題。内容はごちゃごちゃとしているが、結局は問題文の最後に書いてある「弦を伝わる波の速度の2乗は、張力に比例し、弦の線密度に反比例する」というのを駆使するだけである。他の公式はいらない。これもできれば全てできていたい。
第3問 波動 レンズ
難易度はやや高め。球体状のレンズが作る像について考察する問題。文章の穴埋め式となっているが、これがもし記述式だったらおそらく相当物理が得意な人でないと手が出ないだろう。まず文字が多く、計算量も多いので、無理に完答しようとしなくてもよいと思う。第1問と第2問で完答できている自信があれば、とりあえず半分強くらいで次に進むか、いっそ全部後回しにするのがよいだろう。
第4問 電磁気 電磁誘導
難易度はやや高め。変化する磁場によって導体に渦状の電流が発生する事について考察する問題。(1)は穴埋めでまた選択式のためおそらく難易度は低い部類に入るだろう。(2)のIH調理器は知識問題。(3)は自分で説明しなければならない。おそらくその場で1から考えて答えを出す事は非常に難しく、やった事があるか見た事があるくらいでないと書けないと思う。(3)が解けなくても仕方がない。
第5問 熱力学 気体
難易度はやや低め。ばね付きのピストンがついた容器内の気体について考察する問題。これも中身が非常に単純だと思う。早い人なら5分程で片をつけてしまう問題である。
第6問 原子物理
省略
2008年度
全体
全体的な難易度は例年通り。問題ごとの難易度のばらつきがあまり無く、どこで取ってどこで落とすかというのが一般化しにくい。時計を見ながら、自分に解けるところを解いていこう。
第1問 力学 運動量保存則
難易度は普通。ロケットの切り離しについて考察する問題。切り離しの際は運動量保存則は成立するがエネルギー保存則は成立しない事に注意しよう。(4)は(3)の答えに値を代入するだけなので、(3)が解ければ(4)も解ける。ここはできれば取っていたい。
第2問 波動 ドップラー効果
難易度はやや低め。動く音源の出す音について考察する問題。(2)でうなりを求める時は、観測者も音源と共に動いているという事に注意しよう。つまり観測者が聞く音のうち一方は音源の振動数そのままである。(3)は数値代入、(4)は知識問題なので、実質考える所は(2)までである。(4)のドップラー効果の応用例は挙げられない人も多いかもしれない。スピードガンが身近で挙げられそうな例になるのではないだろうか。ちなみに救急車の音は現象であって応用例ではないので注意。
第3問 波動 光波
難易度は普通。光波の屈折について考察する問題。問題自体の難易度はさほど高くないが、全ての解答に数値計算が入っているので計算ミスをしないように注意しよう。
第4問 電磁気 電流と磁場
難易度は普通。円形電流によってできる磁場について考察する問題。といっても問題に丁寧に色々書いてあるので、それを上手く利用しよう。(1)は、円の中心における磁場なので、z=0であるから、表を見るとHr/I=0.5とわかる。あとは、r=1とI=1を代入すればよいだけである。(2)はz=1,r=1なのでz/r=1、表のそこを見るとHr/I=0.18と書いてあるので、r=1、I=1を代入すればよい。ちなみにこの表を作り上げる方がもっと難しく、ビオ・サヴァールの法則という物を使ってはるかに複雑に考えなければならない。(3)は、よく勘違いする事だが、方位磁石のN極が北を向く、という事は北極はS極である事に注意。
第5問 熱力学 気体分子運動論
難易度は普通。気体分子運動論の考察。この分野の話は、発展性が無くいつ見ても同じ問題なので、逆に物理が苦手な人程最も丸暗記が生きるポイントとも言える。出るときは絶対にこれしか出ないのだから、ここで落とすのは勿体無いと思う。
第6問 原子物理
省略