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Vol.4 奨学金を利用して私立大学医学部に進学しよう(その①)

私立大学医学部を卒業するまでに必要な費用は、学納金が平均3,800万円(月額約53万円)、これに加えて書籍費が6年間で50万円強です。
さらに自宅外で下宿するのであればここに生活費が月額10万円程度が上乗せされます。

つまり、私立大学医学部を卒業するためには月額60万円程度を6年間にわたって支払い続けられるだけの資本力が必要で、いわゆる一般家庭には高嶺の花です。
そのため、私立大学医学部への進学は最初から不可能と考えている人も多いようです。

しかし、学納金が比較的安い大学と奨学金をうまく組み合わせれば、負担を相当軽減して通学することができます。

今回は、学納金の自己負担額が1000万円以下で私立大学医学部に進学できる奨学金の組み合わせ方について解説します。

また、次回はその奨学金の返済スケジュールについてシミュレーションを加えながら解説します。

まず、私立大学医学部に進学した時に利用できる奨学金について簡単に説明します。各奨学金についての詳細はリンク先を参照してください。

(1) 医学部奨学金の種類について

1)日本学生支援機構の奨学金

日本学生支援機構(JASSO)が行っている奨学金制度、2004年に育英会奨学金を引き継いで運営している。育英会奨学金と内容は同じ。無利子貸与の一種奨学金と有利子貸与の二種奨学金がある。私立大学医学部に通う生徒であれば二種奨学金で月額16万円まで借り入れることができます。(ただし、受給には世帯所得の制限があります。)

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2)自治体奨学金

全国の自治体が独自に実施している奨学金です。月額15~30万円程度と比較的高額ですが、卒業後一定の期間自治体の指定する医療機関に勤務することによって返済を免除する制度があります。2013年度の募集枠は全国で1142名(当サイト調べ・年度によって変動)がある。しかし、これらのほとんどが入学後に申請・審査を行うため、資金計画に最初から組み込んでおくのは難しい。結局、手元資金が少ない人が私立大学医学部に進学する際に利用できるのは、1142名の枠のうち、進学前に受給の資格が得られる100名の枠しかありません。

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3)大学独自の奨学金

大学が独自に実施している奨学金。学費を負担している家族に不測の事態があった場合の緊急避難的なものや特待制度という意味合いが強い。高額の奨学金は少ないが、中には、兵庫医科大学(特定診療科医師養成奨学制度:1710万円)、金沢医科大学(特別奨学金貸与:授業料19,800,000円)、東邦大学(青藍会貸与奨学金:学年学納金の3分の2)のように、高額の奨学金を貸し付けてもらえるものもある。

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4)学資ローン

銀行による貸し付けと、日本政策金融公庫による貸し付けの2種類がある。大学によっては入学者に対して銀行による貸し付けをあっせん(紹介)しているところもある。銀行による貸し付けは入学後に行われるが、日本政策金融公庫は上限350万円を入学金の振込み前に一括で貸し付ける。

5)矯正医官修学資金

将来、矯正施設(刑務所・少年院など)で医師として従事する意志を持つ3年生以上の医学生に対して法務省が月額54,000円を貸し付ける制度。医学部卒業後、貸与を受けた期間の1.5倍の期間、矯正施設で医師として従事すると返済が免除されます。

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また、これらの他にも、全日本民主医療機関連合会や徳洲会病院のような民間団体が実施している奨学金などがあります。

さて、では、これらの奨学金をどのように組み合わせていくべきかというと、軸になるのは金額の大きな自治体奨学金です。そこに日本学生支援機構の奨学金や政策金融公庫の学資ローンを組み合わせます。

しかし、ここで重大な問題があります。2)の説明の部分にも書きましたが、自治体奨学金は地域枠など一部を除いて入学前の事前申し込みができず、入学後に審査を受けて受給が決まります。つまり、入学金+1年目の学費は自己調達しなければいけないうえ、最悪の場合奨学金を受け取ることができないのです。

ですから、地域枠など、自治体奨学金が合格と同時に支給されることが決まっているものを選んで受験する必要があります。ただ、そうすると選択肢があまりにも狭くなってしまいます。そこで、そこそこの金額を支給してくれる地域枠+日本学生支援機構の奨学金or政策金融公庫の学資ローンの組み合わせをすることによってこれらの問題を解決することができます。

それでは今回は組み合わせ方法について、次回はその返済計画などについて、説明しますね。

(2) 入学前に受給資格が得られる自治体奨学金

入学前に奨学金の受給資格が得られる自治体奨学金には以下の18種類100名の枠があります。この中で、自己負担0円で卒業できるのは、杏林大学東京都地域枠、順天堂大学東京都地域枠・新潟県地域枠、慈恵会医科大学東京都地域枠、北里大学相模原市地域枠、兵庫医科大学兵庫県推薦入試枠の33名です。さらに、この中で受験可能地域に制限がないのは順天堂・北里・兵庫医科の3校8名の枠しかありません。

また、負担額が1000万円を下回る大学だけに絞っても、自己負担0円の大学に岩手医科大学の地域枠15名が新しく加わって48名になるだけで、自治体奨学金を利用して私大医学部を安く卒業するにはかなり厳しい競争をくぐり抜ける必要があるのです。

入学前に受給資格が得られる自治体奨学金

大学名 定員 奨学金合計額 学納金の自己負担額 義務年限 地域等の条件 連帯保証人の条件
岩手医科大学
(地域枠)
15名 3050万円 350万円 9年間 岩手県内の高校を卒業あるいは卒業見込みのもの 2名、1名は岩手県に居住するもの
獨協医科大学
(AO地域枠)
(地域枠)
AO3名
地域枠7名
2200万円
(入学金100万円、授業料年額350万円)
1460万円 修学資金貸与年数の1.5倍の期間 なし 2名、独立の生計を営むもの
杏林大学
(東京都地域枠)
10名 学納金全額貸与
生活費月額10万円を支給
0円 修学資金貸与年数の1.5倍の期間 東京都内に住所を有するか、東京都内の高校を卒業あるいは卒業見込みのもの 2名、独立の生計を営むもの
杏林大学
(茨城県地域枠)
2名 1080万円 2675万円 9年間 茨城県内の高等学校を卒業あるいは卒業見込みの者、あるいは保護者が茨城県内に居住しているもの 2名、独立の生計を営むもの
順天堂大学
(東京都地域枠)
10名 学納金全額貸与
生活費月額10万円を支給
0円 奨学金貸与期間の1.5倍の期間 東京都内に居住するか、東京都内の高校を卒業あるいは卒業見込みのもの 2名、独立の生計を営むもの
順天堂大学
(新潟県地域枠)
2名 2160万円 0円 9年間 なし 2名、独立の生計を営むもの。申込者が未成年の場合、1名は法定代理人
東京医科大学
(茨城県地域枠)
8名 1080万円 1860万円 9年間 茨城県内の高等学校を卒業あるいは卒業見込みのもの、あるいは保護者が茨城県内に居住しているもの 2名、独立の生計を営むもの
慈恵会医科大学
(東京都地域枠)
5名 学納金全額貸与
生活費月額10万円を支給
0円 奨学金貸与期間の1.5倍の期間 東京都内に居住するか、東京都内の高校を卒業あるいは卒業見込みのもの 2名、独立の生計を営むもの
北里大学
(相模原市地域枠)
1名 3890万円 0円 9年間 なし 2名、独立の生計を営むもの申込者が未成年の場合、1名は法定代理人
北里大学
(山梨県地域枠)
2名 936万円 2954万円 9年間 なし 2名、独立の生計を営むもの。申込者が未成年の場合、1名は法定代理人
日本医科大学
(茨城県地域枠)
2名 1080万円 1690万円 9年間 茨城県内の高等学校を卒業あるいは卒業見込みのもの、あるいは保護者が茨城県内に居住しているもの 2名、独立の生計を営むもの
東海大学
(神奈川県地域枠)
3名 720万円 3224万円 9年間 なし 2名、独立の生計を営むもの。申込者が未成年の場合、1名は法定代理人
愛知医科大学
(愛知県地域枠)
5名 2010万円 1790万円 9年間 なし 2名、独立の生計を営むもの
近畿大学
(大阪府地域枠)
2名 720万円 2862万円 9年間 なし 2名、独立の生計を営むもの
近畿大学
(和歌山県地域枠)
10名 1440万円 2142万円 奨学金貸与期間の1.5倍の期間 なし 2名、独立の生計を営むもの。申込者が未成年の場合、1名を法定代理人
近畿大学
(奈良県地域枠)
3名 1540万円 2042万円 奨学金貸与期間の1.5倍の期間 なし 2名、独立の生計を営むもの。申込者が未成年の場合、1名は法定代理人
兵庫医科大学
(兵庫県推薦入学制度)
5名 4540万円
(生活費月額10万円を含む)
0円 奨学金貸与期間の1.5倍の期間 なし 2名、独立の生計を営むもの
久留米大学
(一般入学試験福岡県地域枠)
5名 720万円 2520万円 9年間 なし 2名、独立の生計を営むもの

※このデーターは2013年度のものです。

奨学金の組み合わせで6年間の学費が1000万円以下になる大学

このように、自治体奨学金だけを利用して手元資金が少ない家庭が私立大学医学部を卒業することは至難の業です。しかし、①で紹介した日本学生支援機構の奨学金や日本政策金融公庫の学資ローンを自治体奨学金と組み合わせると6年間の学納金が1000万円を下回る大学が相当数出てきます。

ただし、日本学生支援機構の奨学金や政策金融公庫の学資ローンには以下に示す世帯年収の上限があります、まず、この条件に該当するかどうか確認してください。

本学生支援機構の奨学金受給制限(第二種奨学金)

世帯人数 3人世帯 4人世帯 5人世帯
世帯年収(給与)の上限 1026万円 1117万円以下 1259万円以下
世帯年収(事業所得)の上限 594万円 685万円 827万円

※このデーターは2013年度のものです。

政策金融公庫の学資ローン

子供の人数 1人 2人 3人 4人 5人
世帯年収(給与)の上限 790万円 890万円 990万円 1090万円 1190万円
世帯年収(事業所得)の上限 590万円 680万円 770万円 860万円 960万円

※このデーターは2013年度のものです。

めでたく?上の条件に合致したら、先ほどの自治体奨学金の制度が利用できる大学への進学が見えてきます。先ほどの一覧に、第二種奨学金を受け取った場合、それに加えて政策金融公庫の学資ローンも利用した場合の学納金自己負担額の一覧を以下に示します。

この中で、近畿大学医学部の和歌山県地域枠は毎年定数割れしていることが確認できています(2014年6月の時点)。和歌山県地域枠に出願しても、一般入学試験と試験は変わりません(ただし、和歌山県独自の面接試験があります。)。地域枠を考えるならねらい目と言えるでしょう。

自治体奨学金+学生支援機構の奨学金で負担額1000万円以下になる大学

大学名 定員 自治体奨学金受給後の自己負担額 第二種奨学金(16万円/月)を受給後の自己負担額 政策金融公庫の学資ローンも受給した後の自己負担額 義務年限 地域等の条件
獨協医科大学
(AO地域枠)
(地域枠)
AO3名
地域枠7名
1460万円 308万円 0円 修学資金貸与年数の1.5倍の期間 なし
杏林大学
(茨城県地域枠)
2名 2675万円 1523 1173万円 9年間 茨城県内の高等学校を卒業あるいは卒業見込みの者、あるいは保護者が茨城県内に居住しているもの
東京医科大学
(茨城県地域枠)
8名 1860万円 708万円 358万円 9年間 茨城県内の高等学校を卒業あるいは卒業見込みのもの、あるいは保護者が茨城県内に居住しているもの
北里大学
(山梨県地域枠)
2名 2954万円 1802万円 1452万円 9年間 なし
日本医科大学
(茨城県地域枠)
2名 1690万円 538万円 188万円 9年間 茨城県内の高等学校を卒業あるいは卒業見込みのもの、あるいは保護者が茨城県内に居住しているもの
東海大学
(神奈川県地域枠)
3名 3224万円 2072万円 1722万円 9年間 なし
愛知医科大学
(愛知県地域枠)
5名 1790万円 638万円 288万円 9年間 なし
近畿大学
(大阪府地域枠)
2名 2862万円 1710万円 1360万円 9年間 なし
近畿大学
(和歌山県地域枠)
10名 2142万円 990万円 640万円 奨学金貸与期間の1.5倍の期間 なし
近畿大学
(奈良県地域枠)
3名 2042万円 890万円 540万円 奨学金貸与期間の1.5倍の期間 なし
久留米大学
(一般入学試験福岡県地域枠)
5名 2520万円 1368万円 1018万円 9年間 なし

※このデーターは2013年度のものです。

さらに、学生支援機構の奨学金のみで6年間の学納金が1000万円以下になる大学、1000万円台になる大学を以下に示します。

学生支援機構の奨学金のみで学納金の負担額が1000万円以下になる大学

大学名 本来の学費 第二種奨学金(16万円/月)を
受給後の自己負担額
政策金融公庫の学資ローンも
受給した後の自己負担額
順天堂大学 2080万円 928万円 578万円
昭和大学(特待)
※正規合格者
1900万円 748万円 398万円

※このデーターは2013年度のものです。

学生支援機構の奨学金のみで学納金の負担額が1500万円以下になる大学

大学名 本来の学費 第二種奨学金(16万円/月)を
受給後の自己負担額
政策金融公庫の学資ローンも
受給した後の自己負担額
慶應義塾大学 2158万円 1006万円 656万円
慈恵会医科大学 2250万円 1098万円 748万円
昭和大学(一般) 2200万円 1048万円 698万円
東邦大学 2580万円 1428万円 1078万円

※このデーターは2013年度のものです。

学生支援機構の奨学金のみで学納金の負担額が2000万円以下になる大学

大学名 本来の学費 第二種奨学金(16万円/月)を
受給後の自己負担額
政策金融公庫の学資ローンも
受給した後の自己負担額
東京医科大学 2940万円 1788万円 1438万円
日本医科大学 2813万円 1661万円 1311万円
関西医科大学 2770万円 1618万円 1268万円
大阪医科大学 3141万円 1989万円 1639万円

※このデーターは2013年度のものです。

このように、複数の奨学金を組み合わせることによって自己負担額を減らし、私立大学医学部に通学することが可能になります。

次回は、第二種奨学金や学資ローン以外の奨学金の返済プランや今回説明した以外の奨学金についての説明をする予定です。

 

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