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日本医療の将来と兵庫民医連の取り組み

尼崎医療生協病院  東 一 内科部長
取材人・文責:平野 晃康

東医師数年前から2015年問題が話題に上っていますが、近年ではこれに加えて、2025年問題が取りざたされています。

もう来年に迫っている2015年、全国に約800万人いる団塊の世代が65歳以上の前期高齢者になり、そして、その10年後の2025年に彼らは75歳以上の後期高齢者となります。この年を境に少子高齢化が加速的に進み、いまだかつて人類が経験したことが無いほどの少子高齢化社会が出現し、医療崩壊が起こると言われています。これが2015年問題と2025年問題です。

高齢者とは逆に若者は年々減少しており、年金負担者である現役層(20~64歳)と年金受給者である老年層(65歳以上)の割合は2005年に(現役層/老年層)=3人ですが、2030年には1.7人、2055年には1.2人まで減少します。つまり、2055年には1.2人の現役層で1人の老年層を養わなくてはならなくなるのです。

(1) 日本の医療界は大きな変革期にある

このような急激な医療環境の変化によって、どのような問題が生じると考えられるか、尼崎医療生協病院内科部長の東一医師にお話を伺いました。

東医師「このような超高齢化社会では今までとは全く異なる問題が生じるでしょう。その一つが医療職を含む医療インフラの不足と医療福祉のパラダイムシフトです。
老年期は単一の臓器の疾病よりも多臓器に渡る複合的な疾病が主体です。また、年齢に起因する体内の数値の異常もあります。それゆえに疾病の完治や異常値の完全な正常化を目指すのは難しく、むしろQOLの向上を目指して病気とうまく付き合っていくようなケアが必要ですが、急性疾患に対する対処や疾病を完治させることを主たる目標として専門化してきた日本の医療はこういった医療に十分対応しきれないのではないかと思います。
また、小泉改革で療養型病床が減少しました。病床が十分な数あれば、病院内で経過観察してケアすることができますが、今はそのような余裕はないので、患者さんを退院させなくてはいけません。その後は継続的に家庭や地域でケアしていくことが必要ですが、こういった役割を担う家庭医がそれほど増えていないのも問題です。
年間死亡者数は現在の100万人から2040年には166万人まで増加すると考えられています。彼らの多くは在宅あるいは病院以外の機関で看取ることになると思われますが、その場合のケアをどうするのかも考えなくてはいけません。しかし、現状はこういった対策は十分進んでいません。
行政や医療界が協力して高齢者を支える地域づくりが必要です。この中で医師が果たすべき責務は町の健康コーディネーターです。」

(2) 問題の根本は教育にあり

このような問題に対処するためには、日本の医学教育を根本的に変える必要があると東医師は指摘しています。

平野「なるほど、私の祖母も84歳で後期高齢者ですが、足が悪く、長時間歩くのは難しいです。また、日常生活には支障がありませんが軽度の認知症になっており、物忘れが激しい状態です。主治医には認知症の薬と精神安定剤を処方していただき、今はもっぱら週1回クリニックに通って経過観察をしています。
こういう高齢者が増えていくわけですね。」

東医師東医師「そうですね。ただ、そのクリニックの先生はどうかわかりませんが、日本では、地域医療を担うクリニックの医師、いわゆる家庭医の多くは、大学病院や勤務医として専門的な医療をしていた人たちが、年齢を重ねて病棟勤務が厳しくなって開業した人という特徴があります。もともと専門家だった人が総合診療に転身しても、すぐに十分な診察ができるわけではありません。
人数の問題に加えて、質の問題です。
こういった問題を解決するのは教育だと思っています。日本は大学・病院基盤型の医学教育をしています。これは、知識を専門化・細分化していくものです。
このような教育はある特定の専門家を作るものです。一方、欧米の医学教育は地域基盤型で、家庭医という制度が充実しています。
日本も学生のうちに全員が地域医療・総合医療についての知識を身に付けていく必要があるでしょう。つまり、プロフェッショナルな医師の養成のみを行うのではなく、ジェネラリストとして育て、そのうえでプロフェッショナルな領域を持つ医師を育てることが大切なのです。」

平野「なるほど、確かに若いころに教育を受けていれば、ある程度年齢が進んでから学びなおすこともできますね。ところで、いただいた資料には医学教育についての提言も書かれていました。」

(3) 教育のあり方についての提言

東医師は2025年問題を抜きにしても日本の医学教育には問題があると指摘する。その表れの1つが、現在は日本の大学を卒業するとアメリカの医師国家試験を受験する権利を持つが、2023年以降はこの権利が取り消されるという。

東医師「そうですね、実は日本の医学教育には大きな問題があると思っています。実は、日本の大学を卒業後、アメリカでの臨床行為を行うための試験を受験する資格があるのですが、これが2023年以降はなくなってしまうのです。
これは日本の医学教育が海外の医学教育に比べて、教育方法論において30年は遅れていると考えられているためです。」

平野「教育内容ではなく、教育方法なのですね。」

東医師「教育内容は世界の最先端にあります。それだけにクローズアップされにくいのですが、日本の医学教育は知識伝達型の暗記主体です。これでは知識をたくさんもった学生を作ることはできますが、その本質を理解し、現実の問題に適応する応用力を付けることが困難です。
結局、そういった力は現場でつけなければならず、非効率ですし、暗記に凝り固まってしまってそこから抜け出せない研修医も見かけます。
知識や臨床技術は正解を教えてそれを覚えさせれば身に付きます。達成度の測定はペーパーテストやOSCE※1によって測定できます。
しかし、臨床の現場にはテストのような正解はありません。このような教育の中で正解を暗記し、それを正確に吐き出すという練習ばかり積んできた研修医は現実の問題に知識や技術を応用できる力が弱いのです。
また、このような応用力をいまの知識伝達型の指導法で養成するのは難しいと考えられます。
学生のうちから、現実問題には答えがない事を意識させ、相手は感情のある人間であるということを教えることが大切です。
2023年以降も日本の大学卒業がアメリカの試験の受験資格になるためには、米国医学部認証委員会(LCME)または世界医学教育連盟(WFME)の基準を満たす必要があります。私はこのような臨床に直結する教育を目指すことがこの基準を満たすことにつながると考えています。」

※1 (Objective Structured Clinical Examination)客観的臨床能力試験の略称。医学部の学生が、臨床実習を受ける前に基本的診療技能と態度を客観的に評価する試験。臨床実習に進むための条件の1つである。現在では、4年生で実施されている。

(4) このような問題への兵庫民医連の取り組み

平野「なるほど、ありがとうございました、最後に、このような医療界の変化、あるいは教育の不足に対して兵庫民医連はどのような取り組みをされているのでしょうか、あるいは将来の展望も含めて教えていただけませんか。」

東医師東医師「兵庫民医連の医学生実習では、患者さんの心理・社会的背景をつかむように接してもらいます。これは医学知識のない低学年でもできることであり、医学知識がついてきた高学年では忘れがちになることです。高学年は、心理・社会的な問題点と、医学的な問題が噛み合うかどうかを考えてもらいます。具体的には、身体の弱った高齢者が入院すると病気が治ったとしても単純には退院できず、家に帰るのにどういう配慮や工夫が必要かという点などです。
また、高校生・受験生向けの一日医師体験企画を夏・春に行なっており、医師を目指す人たちに現場を知ってもらう機会を提供しています。限られた時間ですが、医療現場の雰囲気や、医師のナマの声を知ってもらう企画としています。その中でも、医師に求められるのは、患者さんという人間の人生に関わっていく姿勢だということが伝わればいいかなと考えています。
同じ時期に、高校生・受験生向けの学習法セミナーを開いています。簡単に言うと、暗記中心の勉強では面白くないし、医師になったとしても苦労する、という話です。医療現場で求められる学習スタイルや医学教育理論から、受験勉強を見直します。「これで偏差値がいくつ上がる」なんて即効性のある受験講座ではありませんが、ご両親や教師の方々も時々参加されています。」

推奨図書

臨床に不可欠な学び方覚え方テクニック 知識とスキルのスマート習得術・エバンス、ブラウン著
「臨床に不可欠な学び方覚え方テクニック 知識とスキルのスマート習得術」
(プリメド社, 2013)

イギリスの医学部における勉強の仕方を解説した本ですが、受験生にも大いに役立ちます。

臨床に不可欠な学び方覚え方テクニック 知識とスキルのスマート習得術・森剛志・後藤励
「日本のお医者さん研究」
(東洋経済新報社, 2012)

日本の医療の実態を示すデータを集めた本です。

詳しくは、兵庫民医連の医学生のページをご覧ください。

 

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