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合格体験記 東京大学文科一類 H.A君②

 まず一番の苦手教科だった英語ですが、これはひたすら例文を読み返し、その単語の羅列のリズムに慣れていくという行程でした。リスニングも同様です。特別な参考書は使用せず、ひたすら毎日のラジオ放送の録音と東大過去問25か年の読解ばかりしていました。そもそも海を跨いだ地のものとは言え、生活手段の一端に過ぎない英語を学ぶのに必要なのは、継続と実践による反復作業だけだと言っても良いでしょう。ただ強制力の働かない非英語圏民がそれを行動に移すのには、自発的な意思を要します。私には恐らくこの部分が欠けていました。

 苦手意識は無いものの点数が取れないのが数学で、とりあえず25か年の過去問のほかに『大学への数学』を用いて多様な問題形式に触れるように心がけていました。高校時代の教師は私に解法手段の引き出しを増やすため、公式や原理という基礎事項を固めることを推奨しました。また、やや時間の短縮化、効率化に傾倒しすぎて解けない問題に時間を費やすのを惜しむ傾向にあった私を嗜め、記入済みの形で答案を出すよう促したのもこの教師でした。「書いてみれば何ぼか点数は来る」という、楽観的でありつつも泥臭い解答を求める言葉は、二次試験の日にも煩く私の耳元を飛び回っていました。

 物理と化学がお話にならないレベルだったので、センター理科は生物を選択しました。これは隙あらば研究室でのヒラメ養殖のエピソードを挟んでくる高校教師の授業が純粋に面白く、睡魔に負けじと(なぜか理科科目はいつも昼食直後に入れられていました)必死で黒板の文字を睨んでいた気がします。参考書として『センター試験生物の点数が面白いほどとれる本』を購入しましたが最初の数ページを捲ってお蔵入りし、当日も定期試験の勉強だけで切り抜けました。

 地理と歴史は好きな分野です、というか、恐らく文系選択者で社会科科目を敬遠する人は少ないのではないでしょうか。世界史では暗記用の参考書として『山川世界史B用語集』『ナビゲーター世界史』、地理では『資料・地理の研究』を使用しましたが、暗記事項で大きく躓いた記憶はありません。個人的に苦戦したのは論述問題での表現方法であり、東大の過去問に特化した特講授業では所謂試験特有のお茶の濁し方を学んだ気がします。二次試験でこの科目を要しない理系の人たちは驚くかもしれませんが、結論を結ぶ動詞や主語の具体性の違いによって点数は大きく変動します。私は東大の社会科は暗記科目ではなく、むしろ表現科目だと考えています。

 最後に国語について、成績の推移から見れば現代文は小中高と変わらず高得点を維持し続け、古文や漢文は平均から伸び悩みました。後者二教科での敗因は分かりきっており、これは用語や文法を初期のうちにしっかり身につけなかったことにあります。翻って現代文については明確な理由が出せませんが、恐らく生来の読書好きが功を奏したのではないかと思っています。既読書は多いほうが良いと一概には言いませんが、類似した内容を読んだ経験があるというのは大きなアドバンテージになります。問題文の要旨把握を短縮できる上に、出題者の視点を探る余裕もでき、主観的意見を省いて相手が求める答えに沿った客観的な見方が可能になるからです。ただし国語に関して自戒も籠めて忠告しておきたいのが、漢字は正確に書くということです。多くの人にとっては当たり前のことかもしれませんが、私は二次試験の僅か五問しか無い漢字問題のうち二つを間違えました。その一点に泣くことになったかもしれないと思うと、自分の見直しの甘さに身震いするようです。

 中間試験だったり外部模試だったりの成績は、あまり気にしなくていいと思います。私は殆どゲーム感覚で受けていました。判定が良くて喜ぶのも悪くて落ち込むのも結構ですが、個人的な意見としてそれはあくまで本試の前哨戦であり、三日以上引きずるような代物では無いと考えています。

 通学に往復四時間かけていたこともあって、単純な勉強時間としては他の人には劣っていたと自覚していました。ただし問題なのはその内実であって、いかに吸収率を高められたかという問題が一番重要です。全ての科目に共通する事項として心がけていたのは、ある問題に対峙する際には解答を裏返しに傍に置いて、少し経ってさっぱり分からなければ諦めてこれを見るというやり方です。もちろん解法について考え続けることも必要ですが、勉強時間を(ある意味自覚的に)限っていた自分の場合、より多くの問題に触れ、より多くの解答例を理解するほうが性に合っていると感じました。関連して時間制限の設定も求められるでしょう。残り時間を明確に意識することで、やらなければいけないこと、覚えなければいけないことというのがはっきり認識できてきます。私は大体勉強は塾か学校にいる間、と決めてその間に予習も復習も済ませることに決めており、高校卒業まで夜帰宅してからは殆ど机に向かった経験がありません。恐らく昔から学業に関して両親から干渉されなかったことが影響しているのだと思います。ちなみに家で何をしていたかというと、毎日三時間までと決めたネットサーフィンに明け暮れていました。息抜きの形は人それぞれですが、緩すぎず締め付け過ぎず、しかししっかりとメリハリのつくよう、受験を終えるまでずっと継続しうる程度のものにしておくのが現実的だと思います。それからもう一つ、添削を加えられた解答や、問題集の計算を記したノートなどはきちんと残しておくことが大切だと思います。これは高校時代の担任からアドバイスされたことですが、自分が勉強したという痕跡を振り返ることは、後の復習にも自信にも繋がります。

 最後に付け加えるなら、受験勉強は一人でするものだということを確認しておきます。受験は団体戦だという言葉を否定する気はありませんが、試験会場で、本番の問題用紙を目前にして、その時受験生は誰に頼ることもなく、生身の身体一つで戦わなければなりません。孤独な瞬間に備えて、受験勉強は一人で耐える訓練の時間だということを認識してください。証明問題で数値が合わなかったり、リスニング問題で理解できない単語を抽出してしまったり、そんな時貴方を助けてくれるのは何度も書き直した定型文の染みついた己の右手だったり、ラジオ放送をイヤホン越しに聞き流していた己の両耳だったりするかもしれませんが、決してファミレス勉強会と称して世間話をしようと目論むクラスメイトではないという現実を分かっていてほしいです。受験は、究極的には、一人で挑むものなのです。

 

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