(一斉)授業風景

川崎医科大学は、開学以来、教養と専門に分離した制度ではなく、6年一貫で専門教育を行う6年一貫教育を実施してきた。また、臓器ごとに様々な教室の教授が、それぞれの視点から教育を行い、人体の仕組みをより明確に理解できるようにしている。

川崎医科大学のカリキュラムについて、学長補佐 森谷 卓也 教授にお話を伺った。

――川崎医科大学の教育の特徴を教えていただけますか。
森谷:

まず、川崎医科大学の理念は「人間(ひと)をつくる 体をつくる 医学をきわめる」です。この理念に従った教育を行っています。

1年次に、コンスタントに勉強する体制、姿勢を作るための教育を行っています。ここを徹底していることが一つの特徴だと思います。

具体的には、1年間の全寮制と今後の学習を見越したカリキュラムを通じて、協調性と生活習慣、医学を学び続ける姿勢を作ります。

また、全体を通じて、アクティブラーニングの考えを導入しており、受動的に授業を受けるだけではなく、自ら目標を立てて能動的に学習することのできる学生を育てています。

――1年次のカリキュラムについて、具体的に教えていただけますか。
実習風景
実習風景
森谷:

1年次から専門教育が始まり、「人体解剖実習」も行われます。それに加えて「良医の礎」というコースや「発表の技法」といった授業により、学習するための基礎を教育しています。

「良医の礎」は4年次まで続きますが、倫理、日本語リテラシー、英会話、英語論文の作成や英語でのディスカッションなどを学びます。「発表の技法」では、課題作成やプレゼンテーション、学会発表などを見越して、表計算ソフトの使い方や発表資料の作成方法などを学びます。また、選択制のリベラルアーツでは、異文化理解やメディカルイラストレーションなどを学ぶことができます。

――1年次にそうした姿勢をきちんと学んだ人と、そうでない人で大きな差が出そうですね。
学生寮(個室)
学生寮(個室)
森谷:

そうです。実際、各学年の出席率とその後の成績は相関関係があり、1年生からその姿勢を貫くことが非常に重要です。

また、1年次に重要なのは授業だけではありません。1年次は全員寮に入るのですが、この共同生活が非常に重要なのです。

――協調性を高めることができるということでしょうか。
舎監さん、寮母さん
舎監さん、寮母さん
森谷:

そうです。医師は1人で仕事をすることはまれです。必ず周囲の専門家と分担して仕事をします。また、患者さんやそのご家族に対する配慮ができないようではいけません。寮生活は、他人に迷惑をかけずに自分の意図を達成する。あるいは他人と協力して共通の目的を達成するために必要な協調性やコミュニケーション能力を高めることができます。

――なるほど。共同生活には、最初は多少のストレスもあると思いますが、重要なストレスと言えますね。
 
森谷:

若いころに友人や人間関係の幅を広げ、協調性を養うのは、かけがえのない財産になります。また、寮生活により、自分に合った生活習慣を身に付けることができます。朝早く起きて自修室で勉強をして、授業に出る、授業が終わったらラウンジで勉強をして帰る。朝はゆっくり寝て、授業を集中して聞き、夜、復習する。

スタイルやリズムは人それぞれだと思いますが、この1年間で自分のリズムを理解し、コンスタントに勉強できる生活習慣を身に付けることができます。

また、うまくリズムがつかめない学生には勉強合宿を行うことがあります。これも、学習態度を作っていくための取り組みです。

――2年次以降は
大学院(医学研究)
大学院(医学研究)
森谷:

2年次には「医学研究への扉」という講義を開設しています。これは、学生が自分の興味のある研究室に入って実際に医科学研究を行うもので、受け身で授業を受けるのではなく、自学自習をし、自ら考える力を育むものです。

また、4年次には臨床教育研修センターでの実技実習や症候論という教科があります。後者は、架空の患者さんについてグループでディスカッションを行い、病態を解明して、臨床的な対応方法を考えていくものです。

臨床教育研修センター
臨床教育研修センター

これらは、川崎医科大学が進める、アクティブラーニング型のカリキュラムに即したもので、学生が当事者意識を持って進めることができるため、より高くモチベーションをもって受講することができます。また、自ら学ぶ姿勢を作ることで知的好奇心を育てることになり、これが後の臨床実習に活きてきます。

――授業時間を短縮されたそうですが。
森谷:

平成27年から全学年90分から60分に短縮しました。これは、より高い集中力を保つための措置です。授業は映像や画像によってビジュアライズされ、短時間で多くの情報を与えることができるようにしています。

また、マルチメディア教室ではパソコンを使った有機的な学習をすることができます。ほかにも、医師国家試験、CBT対策のためのビデオ授業なども用意しています。

森谷 卓也

川崎医科大学 学長補佐
森谷 卓也 教授

日本病理学会 病理専門医
日本臨床細胞学会 細胞診専門医
川崎医科大学 病理学2教授、同窓会長

[経歴]
川崎医科大学卒業、川崎医科大学病理、米国ジョージワシントン大学病理での修行ののち、川崎病院、東北大学病院病理部 副部長、東北大学医学部 准教授を経て現職