川崎医科大学の研究・研究施設

川崎医科大学は、創設者 川﨑 祐宣 先生の考えに基づき、研究者間の壁をなくし研究を効率化するための多くの施策を行っている。

川崎医科大学の研究および研究施設について、学長補佐 森谷 卓也 教授にお話を伺った。

――川崎医科大学での研究について教えてください。
中央研究センターセンター長 耳鼻咽喉科学 原田 保 教授
中央研究センターセンター長
耳鼻咽喉科学 原田 保 教授
森谷:

川崎医科大学では、基礎研究ももちろんですが、臨床に直接役立つ研究に力を入れています。最近では筋ジストロフィーの治療薬や慢性腎臓病の治療の分野で成果を上げています。科研費の獲得でも成果を上げています。筋ジストロフィーの研究ではAMEDの研究費も獲得しています。

――研究費について。
中央研究センター 実験室
中央研究センター 実験室
森谷:

普通、大学の研究というと、各研究室が科研費に応募して予算を獲得しますが、川崎医科大学では、学内予算によるプロジェクト研究も充実しています。各教員が研究プロジェクトを立ち上げ、大学に申請して審査を受け、予算を獲得するのです。その中でも特別推進研究という、複数の研究室が協力して行う研究プロジェクトは、川崎医科大学を代表し社会に貢献できる研究と位置付けており、特に力を入れています。研究成果は、論文、学会発表のほか、市民公開講座などで発表して地域医療の向上に寄与しています。

――予算面で心配しなくていいというのは大きいと思います。ほかに、研究を円滑に進めるための工夫があれば教えてください。
森谷:

まず、各研究室の垣根をなくし、風通しを良くすることを心がけています。そのために、教授には個室が与えられますが、准教授・講師・助教は教室を超えて1つの大きな部屋にデスクを持っています。こうすることで毎日顔を合わせることになり、意思の疎通が容易になるのです。

――普段から人間関係を作っておく、ということですね。
森谷:

その通りです。もうひとつは、公平感が出ます。ある研究室はお金持ちで広い部屋を使っているけれど、ある教室はお金がなくてこじんまりとしているという状況では、横断的な研究で成果を出すのが難しくなってしまいます。

――すると、研究室はどのようになっているのでしょうか。
森谷:

実は、すべての研究機器は、中央研究センターで一括管理をしています。教室ごとに研究機器を買わなくてよいので、予算が効率よく運用でき、どの機器も自由に使うことができますから、研究の自由度が非常に幅広くなります。また、異なる教室の教員と触れ合うことによって共同研究の立ち上げや推進も期待できます。

また、各機器にそれぞれ専門のスタッフが配置されており、操作方法が分からない場合や慣れていない場合にはそのスタッフが補助するようになっています。

そのため、新しい機器を購入するごとに、その機器の操作方法をよく知っている他大学に出向いて教えてもらうような必要がありません。

非常に効率が良いシステムだと考えています。

――研究機器をシェアするというのは初めて聞きました。しかし、専門スタッフがいるということで、かなり効率のよい運用ができますね。
森谷:

各研究室には、基本的には研究機材は置かず、研究補助員というスタッフがいるだけです。研究室ではデータの整理や論文のまとめなどを行い、実験は中央研究センターで行うのが川崎医科大学の工夫です。

研究から話が外れてしまいますが、秘書も教授ごとに配属するのではなく、中央教員秘書室で集約的に行っています。

森谷 卓也

川崎医科大学 学長補佐
森谷 卓也 教授

日本病理学会 病理専門医
日本臨床細胞学会 細胞診専門医
川崎医科大学 病理学2教授、同窓会長

[経歴]
川崎医科大学卒業、川崎医科大学病理、米国ジョージワシントン大学病理での修行ののち、川崎病院、東北大学病院病理部 副部長、東北大学医学部 准教授を経て現職