第2回 原核細胞と真核細胞の構造 ~細胞内小器官~の章では、細胞内小器官について学びました。読んで字のごとくですが、細胞内小器官は細胞の中にあります。ですから、細胞内小器官の働きを調べるうえで細胞の中から取り出してくる操作は欠かせません。この「細胞内小器官を細胞の中から取り出してくる操作」の1つに細胞分画法というものがあります。細胞分画法の要点は、非常に簡単に次の3つにまとめることが出来ます。

①壊して
②いろいろな速度で
③回す

この1つ1つの項目について詳しく見ていきます。

まず①壊すという作業についてです。この作業には名前がついていてホモジェナイズと呼ばれます。この際に使われるのはホモジェナイザーという器具です。試験管のような細長い形をしたガラス管の中に細胞と溶液を入れ、ガラス管にぴったり合う太さの棒ですりつぶします。こうすることで細胞が壊れて中身=細胞内小器官が出てくるわけです。

続いて出てきた細胞内小器官を回収する作業です。ホモジェナイズしただけでは様々な種類の細胞内小器官が交ざった状態ですから、これを種類ごとに分ける必要があります。この際、②いろいろな速度で③回すという操作をします。細胞内小器官が入った試験管を回すことでこれらが沈殿するわけですが、回す速さを変えることで大きさごとにより分けることが出来るのです。核などの大きなものは重いので、低速で回しても沈殿します。しかし、リボソームなどの小さなものは軽いので、高速で回さなければ沈殿しません。こうして、目的とする細胞内小器官ごとに回す速さを工夫することで、種類分けしているわけです。このように、回転する速度を調節して物質を分けることを遠心分離といいます。ですから、細胞分画法は①壊して②遠心分離とも言い換えられますね。

遠心分離の際の沈殿のしやすさがテストで聞かれることがありますので、沈殿しやすい(=低速でも沈殿する)物から順番に4つに分けて以下に書いておきます。①核、②葉緑体、③ミトコンドリア、④その他(リボソームなど)となります。

さて、ここまで細胞分画法の具体的な方法について述べてきましたから、ここからは実施する上での注意点を2つ紹介します。

①等張な溶液に入れた状態で
②低温で行う。

まず等張な溶液に入れる理由についてです。細胞内小器官を形作る膜も細胞膜同様、半透膜です。ですから濃度の異なる溶液が膜を通じて隣り合った場合には浸透が起きてしまいます。これを防ぐために等張液に浸すわけです。

続いて低温で操作を行う理由についてです。細胞内小器官の中には様々な消化酵素を含むものがあります。ホモジェナイズすると細胞内小器官も壊れて中の消化酵素が出てきてしまうことがあります。これらの消化酵素は約37℃でもっともよく働きますが、温度を低くすると働きが鈍くなります。そこで、これらの消化酵素によって他の細胞内小器官が壊されてしまうのを防ぐために低温で行うわけです。

以上が細胞分画法の内容です。すでに学習した浸透の分野の理論が出てきましたが、このように他の分野とつながってくる姿が見えると勉強が楽しくなることでしょう。