はじめに

医学部受験予備校COSMOS(コスモス)数学科の”山K”です。
お腹周りに蓄えている脂肪を、夏までに消費してしまいたいなあ、と思っています。

そんな私が書く、連載3回目のこの記事のテーマは「夏までにやっておいて欲しいこと」です。10ヶ月後に医学部を受験するあなたのために、夏までにやっておいて欲しいことを2点、お伝えしようと思います。

夏までにやっておいて欲しいこと

その2点とは・・・

  • ① 場合の数の標準問題について、なぜその解法で解けるのか、について自分なりに納得できているかをチェックする
  • ② 場合の数の標準問題について、なぜその解法で解けるのか、について自分なりに納得できているかをチェックする

です。それぞれについて、説明していきましょう。

1点目は、苦手分野を把握する

まず1点目、「標準的な問題について一通り目を通し、苦手分野がどこかを把握する」について。

孫子の言葉に『彼(敵)を知り己を知れば百戦危うからず』という言葉があるのは御存じでしょう。

“彼(敵)を知る”というのは受験で言えば志望校の問題傾向や難易度などを調べることに当たるでしょう。これは人に言われなくても、赤本を買う、ネットで情報を集める、などあなたもしているでしょう。通っている塾や予備校で志望校対策をしてもらっている人も多いと思います。

”己を知る”ことは意外と難しい

しかし”己を知る”つまり、自分が分からないところはどこか、どの程度分かっていてどの程度分かっていないのか、について自分で考える人は少ないと思います。これも、合格するためには大切なことです。

具体的には、教科書レベルからごく普通の入試問題レベルまでの問題を使って、どの分野が苦手なのかを把握しましょう。使う問題については、あまり特殊な解法などは必要とせず、問題集などでよく見るタイプのものにしましょう。自分で判断がつかなければ、信頼できる数学の先生に相談するとよいでしょう。

ただ、問題が解けたからここは得意、解けなかったから苦手、というように単純に考えてはいけません。正解していても実はよく分かっていなかったり、不正解であってもなかなか良い考えをしていたり、ということはよくあることです。それらも踏まえて、自分の理解度を洗い直すのです。

なかなか難しそう?

そうですね。それについては、次に挙げる2点目も関連があるので、そちらも見てみましょう。

2点目は、“場合の数”について深く考える

2点目、「場合の数の標準問題について、なぜその解法で解けるのか、について自分なりに納得できているかをチェックする」について。

“場合の数”という分野は、苦手としている人が多い分野です。そして、ほとんどの大学で出題される分野でもあります。そのため、この分野の克服は、合格のためのカギとなります。

本当に分かっているのか

「分かってるんだけどなあ・・・教科書レベルの問題はちゃんと解けるし、解法もたくさん知っている。でも入試問題になると解けないんだよなあ。解説見ると、ああそれかあ、って分かるんだけど。どうして解いてるときは思い出せなかったんだろう?」

場合の数と確率について、こんなことを思っている受験生は多いと思いますが・・・

甘い!甘すぎる!

喫茶店でケーキセットを注文し、セットのドリンクをココアにし、さらにココアに角砂糖を4個混ぜるくらいに甘すぎる!

どこが?

それは、「教科書レベルの問題はちゃんと解けるし、解法もたくさん知っている」というくだり。知ってはいるかも知れないが、本当に分かってはいますか?

例えば・・・
nCrの分母はr!ですが、なぜr!で割るのですか?
円順列の公式は(n-1)!ですが、なぜ1を引くのですか?
仕切りを入れる、いわゆる重複組合せは、どんな問題で使えるのですか?
条件付き確率の公式の分母はP(A)ですが、なぜP(A)で割るのですか?
・・・

これらの疑問に答えられますか?また、同じようなことを疑問に思ったことはないですか?

答えられない人は、これまでの勉強が解法パターンの暗記のみになっていないか、反省する必要がありそうです。

解法パターンの暗記のみが勉強ではない

このタイプの問題はこうやって解く、という、いわゆる解法パターンの暗記は大切なことです。

ただし、すべて暗記できるのは一握りの人でしょうし、パターン化しにくいちょっと変わった問題が出題されたときに、対応できない人もいるでしょう。教科書レベルの問題は解けるけど、入試問題が解けない、というのはそのあたりに原因があるのではないでしょうか。

私は、解法パターンの暗記も大切ですが、医学部などの難関大学に合格するためには、もう少し踏み込んだ勉強が必要だと思います。

それが、「解法について深く知ること」であり、そのために「なぜその解法で解けるのか、について自分なりに納得できているかをチェックする」ことなのです。

場合の数は、思考型の問題である

なぜたくさんある分野から、なぜ”場合の数”の分野を取り上げたのでしょうか。
それは、”場合の数”の分野には、計算型ではなく思考型の問題が多いからです。

計算型の問題とは、例えば微分積分の面積を求める問題などです。囲まれた部分の面積を求める場合、その図形の上部の関数(式)は何か、下部の関数(式)は何か、積分範囲はどこからどこまでか、を把握しさえすれば、誰にでも面積を求める式はつくることが出来ます。ただし、その後の計算は、それなりに難しいものもありますので、計算を工夫することが大切です。

この手の問題は、解く過程において「思考して式を立てる」ことよりも「式を計算して答を出す」ことの方にウェイトがあります。考える要素が少ないため、面積を求める解法を知っていれば、つまり解法パターンを知っていれば、あとは計算を頑張るだけ、と言っても良いでしょう。

この手の問題は、勉強すればすぐに計算式を作れるようになるので、数学が苦手な人でも比較的マスターしやすいのです。つまり、解法パターンの暗記がとても重要な問題です。

しかし、思考型の分野となる”場合の数”はそうはいきません。

この分野の計算は大したことはありません。計算式さえ作れば、基本は足し算かかけ算をすればよく、小学生にでも解けます。しかしその計算式を作るまでが難しいのです。

解法パターンを暗記することは必要ですが、それだけではどれを使ってよいのかよく分かりません。それどころか、考え方によって計算方法は違うので、複数の解答が出来るのはごく普通。解法パターンも複数あることはよくあります。

そんな分野なので、問題集の解答解説を見たら、自分が考えた解き方とは違っていた場合、自分の考え方でも解けるのか、それとも自分の考え方は根本的に間違っているのか、すぐに判明することは希です。

そんなとき、とりあえず問題集の解法を「この問題はこう解くのだろう、覚えておこう」と深く考えずにスルーしていく人は多いでしょう。それは結局、納得しないまま解法を覚えているだけです。

しかし、そんなときこそ、場合の数と確率を克服するチャンスがあるのです。

なぜこの解法で解けるのか、なぜここでnCrを使ったのか、nPrではいけないのか、他の解法はないのか、など、よく考えてみれば納得できていないことはたくさんあるでしょう。

その1つ1つについて深く考え、納得するまで考えて欲しいのです。そして「それはこれこれこういう理由なのですよ」と人に説明できるくらいまでになって欲しいのです。そうでなければ、場合の数を分かっているとは言えません。

今ならまだ考える時間がある

年末など、試験が目前に迫っている状態だと、なかなかそこまで深く考える余裕はないと思います。その時期は、学んだ解法パターンの確認や、時間内に解答を作る訓練などをしなければならない時期ですから。

しかし夏前の今の時期ならば、まだ考える余裕はあると思います。今のうちに、些細な疑問や納得できていなかった部分を、スルーせずに考えることが大切です。

すると、これまでは正解したことで満足していた教科書レベルの問題にも、深く考えてみればなぜこの解法で解けるのか説明が出来ないものがあることに気付くでしょう。

それらの疑問の大半が、思考の末に納得できるものに変わっていれば、夏以降の実戦問題を解いていくときにぐんぐん伸びていくと思います。逆に言うと、納得できないままにしておくと、実戦問題についても一つ一つ納得できず、でも時間がないからとりあえず覚えよう、という勉強になってしまい、本番の試験では使えず・・・というパターンに陥ってしまうかもしれません。

ぜひ夏までに、場合の数と確率の分野について、深く納得するまで考えておきましょう。

最後に

さて今回の記事のまとめです。

  • ① 標準的な問題について一通り目を通し、苦手分野がどこかを把握する
  • ② 場合の数の標準問題について、なぜその解法で解けるのか、について自分なりに納得できているかをチェックする

実を言うと、②については、他の分野についても当てはまります。特に、数列・整数問題など、公式と解法パターンの暗記だけでは対応しにくい分野は他にもあります。これらには、今回話した内容が大部分当てはまります。これらの分野が苦手な人は、同じように深く考えてみましょう。

<今週のK-Word>

”敵を知り、己を知れば百戦危うからず、ただし深く知ること”

【情報提供】
医学部受験予備校 COSMOS(コスモス)