化学講座 第37回:分圧の法則と2気体の混合
理想気体は相互作用を及ぼさないのでした。ということは、二種類の気体が混合されている気体を考えるとき、一種類ずつ別々に気体の圧力を求める事ができるのです。お互い干渉しないのだから、別々に求めてもいいのです。
そして、その圧力の和を取れば気体全体の圧力を求めることができます。
例として、下図のように nA (mol) の気体 A と Bn (mol) の気体 B が混合された混合気体を考えます。
いま、この混合気体は体積 V (L) の容器に封入されて温度 T (K) に保ったとして、この混合気体の作る圧力を考えてみましょう。
この式から、気体の圧力は体積や温度が同じであれば、気体の種類によらず物質量によってのみ決まる。ということが再確認できますね。考えても見れば、理想気体の状態方程式 PV = nRT には、気体の種類に関する部分が入っていません。
ですから、この問題であれば、混合気体が であることから直接、
(混合気体の圧力) = としても問題は無かったのです。
さて、少し話が変わりますが、反応前後の温度と体積が同じであれば、分圧は物質量に比例するので、気体反応の計算をするとき、物質量に直さずに分圧で計算をすることができます。
例えば、A + B → C という反応を考える。V (L)、T (K) に保たれた容器に、 の気体 A と、
の 気体 B を入れて反応させた。A が完全に反応した後の容器内のを求めよ。という問題を考えてみよう。
まず、物質量を求めてから考える方法でやってみます。
気体の状態方程式より、A の物質量は、、B の物質量は
です。
( ここで、 なので、
ですね。反応後は A が全部なくなって、B が一部残ります。 )
化学反応式より、反応前後の物質量は以下のように求めることができます。
反応後の物質量は、 ですね。
よって、反応後の全圧は、 と求まります。
この解き方、どう思いますか? 表の値は全部 がついていますが、これは最初に圧力から物質量を出すときにくっついた値です。そして、最後にこれを外して圧力を求めているのですから、二度手間ですよね。
これを省略したって問題はないはずです。
そこで、分圧を物質量の代わりに用いて考えてみます。
よって、反応後の全圧は
では、問題をやってみましょう。
- 問題:
- 容積 1.0 L、温度 27 ℃ の容器に
の CO と
の
を封入して完全に反応させた。
反応した後の温度は 27 ℃、容積は 1.0 L だった。反応後の気体の全圧はいくらか。 - 解説:
- この問題を解くにあたって、理想気体の状態方程式を用いて CO と
の物質量を求め、反応後の
と
の物質量を出して、それから理想気体の状態方程式を再度用いて・・・ 。というプロセスで解くと、2 回も理想気体の状態方程式を解くことになって大変です。そこで、さっき説明したように、分圧を使って反応後の圧力を求めましょう。
反応式は 2CO + → 2
よって、反応後の全圧は、
すごく楽に解けましたね。実は、このやり方は、反応後に温度や体積が変わっても使うことができるのです。
問題を解きながら、やり方を説明します。
- 問題:
- 容積 1.0 L、温度 27 ℃ の容器に
の CO と
の
を封入して完全に反応させた。
反応した後の温度は 227 ℃、容積は 1.0 L だった。反応後の気体の全圧はいくらか。 - 解説:
- 一度に反応後の圧力を求めず、いったん27℃のまま反応が終わって、それから227 ℃に温度が上がったと考えればいいのです。
下のように表を一段増やします。ここで、27 ℃ (300 K) で反応が終わってから温度を上昇させて227 ℃ (500 K)にすると、シャルルの法則から、圧力は倍になります。
よって、反応後の全圧は、
反応後の容積が異なる場合も、同様にして考えることができます。同温、同体積で反応が起こると仮定して反応後の圧力を求め、そのあとボイルの法則やシャルルの法則を使って温度や体積を変えればよいのです。
次に、下図のように体積の無視できる細い管でつながれた二つの容器の中に封入された気体の混合後の圧力について考えてみましょう。ああ、よくある問題ですよね。これは、コックを開けた後の気体を 1 つのまとまったものと考えずに、左側に入っていた気体と右側に入っていた気体を別々のものとして扱うとうまく行きます。
複雑な事象の場合、独立したいくつかの事象に分解することによってとらえやすくすることができますが、これはそういう考え方の 1 つですね。具体的に下のような例で考えてみましょう。
最後に、先ほどの容器のコックを開けて P (Pa) の気体を入れ、左右を違う温度にしたら、各容器はどのような圧力になるか。また、各容器に入っている気体の物質量は何 (mol) かを考えてみよう。
基本的に、未知の値を求めるためには、その値に関する連立方程式を作って解けば良いのです。この条件でどういう式が成立しているか、考えてみましょう。
次に、物質が閉鎖された空間で移動するだけなので、気体の物質量は変わりません。物質量保存則と言います。
- 圧力について
それぞれの容器について気体の状態方程式を立てると
- 物質量保存則について
もともとの容器に、T (K)、P (Pa) の気体が入っていたので、気体の総物質量は気体の状態方程式より
よって・・・ ③ が成立する。
①より ・・・①' ②より
・・・②' これらを ③ へ代入して
よって、
①'より ②'より

平野 晃康
株式会社CMP代表取締役
私立大学医学部に入ろう.COM管理人
大学受験アナリスト・予備校講師
昭和53年生まれ、予備校講師歴13年、大学院生の頃から予備校講師として化学・数学を主体に教鞭を取る。名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、株式会社CMPを設立、医学部受験情報を配信するメディアサイト私立大学医学部に入ろう.COMを立ち上げる傍ら、朝日新聞社・大学通信・ルックデータ出版などのコラム寄稿・取材などを行う。