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化学講座 第54回:化学反応速度⑤ 化学平衡

逆反応をする反応を可逆反応と言います。可逆反応は反応開始から十分に時間がたつと正反応(右向きの反応)と逆反応(左向きの反応)の速度が同じになって、反応物も生成物も濃度が変化しない状態になります。

このような状態を化学平衡と言います。A2Bという可逆反応において、反応物Aのみを反応容器に入れて反応させた場合の濃度と反応速度の変化について説明します。

反応物AはA→2Bという反応により徐々に減少していきます。この反応の速度はと表せるため、反応によってAが減少するに従って反応速度は遅くなっていきます。
しかし、Aが減少してBが生成すると、2B→Aの反応が起こるため、全てのAがなくなってしまう事はありません。

逆に、生成物Bは最初は勢いよく増加しますが、2B→Aという反応により減少する事。反応物Aの濃度が低下してBの生成速度が遅くなっていくことから、右図のように時間がたつに従って増加速度が緩やかになります。(化学平衡)

逆反応の反応速度をとすると、この値は[B]の増加とともにどんどん大きくなっていきます。

そして、右図のように、となると、見かけ上の反応が停止します。(反応物も生成物も濃度変化が起こらなくなって)、これが化学平衡の状態です。

化学平衡になっている時の各成分の濃度の間に成立する関係を、質量作用の法則と言います。
質量作用の法則はこれ以降、化学平衡関係の問題では常に出てくる式で、ものすごく重要です。

順番に説明していきます。aA+bBcC+dDで表される可逆反応で化学平衡が成立しており、正反応の反応速度定数を、逆反応の反応速度定数をとします。

正反応の反応速度:  逆反応の反応速度:

化学平衡のときなので、

これを整理すると、 ここで、(濃度平衡定数)と置くと

 となりますが、この式を質量作用の法則と言います。

濃度平衡定数は最も良く使われる平衡定数なので、単に平衡定数という事もあります。
は反応の種類と温度のみで決まる数字で、物質の濃度や触媒の有無によって変化しません。触媒があってもなくても値が変わらないというのは速度定数と違うところですね。

この式は使い勝手の良い非常に重要な式なのですが、これだけではしっかりわからないと思いますので、幾つか例題をやってみましょう。

問題

A+B2Cで表される反応について、V(L)の容器の中にAをn(mol)、Bをn(mol)加えて反応させると、しばらくして平衡に達した。平衡時にCは何mol生じているか。この温度での平衡定数をK(L/mol)とし、温度一定で反応させたとして答えよ。

解説

Cが(mol)生じたとします。このとき、平衡前、平衡時の物質量を表にまとめると、見やすいです。
この問題の場合は下表のようになりますね。

問題

A+B2Cで表される反応について、V(L)の容器の中にAをn(mol)、Bをn(mol)加えて反応させると、しばらくして平衡に達した。平衡に達した後、Aをさらにn(mol)加えたところ、更に反応が起こって新しい平衡状態に達した。新しい平衡状態でCは何mol生じているか。この温度での平衡定数をK(L/mol)とし、温度一定で反応させたとして答えよ。ただし、K<4とする。

解説

このように、反応の途中で物質を加えた場合に到達する平衡は、最初からその物質を加えた時に到達する平衡と同じです。つまり、この問題の場合はAを2n(mol)とBをn(mol)加えて反応させた時に到達する平衡を考えればよいのです。
生じたCを(mol)とします。

どうですか?やや複雑な式になりましたが、こういう感じで問題を解くことができるのです。

ここまでは、平衡時の各成分の濃度の関係について説明してきましたが、気体反応の場合、濃度よりも分圧を使うほうが便利が良く、実際によく用いられます。

そこで、気体反応では濃度平衡定数ではなく、分圧を用いた平衡定数、圧平衡定数が使われます。まず、圧平衡定数と濃度平衡定数の関係について説明します。

絶対温度T(K)、容積V(L)、気体定数R(Pa・L/(mol・K))、平衡時の各物質の物質量として気体反応aA+bBcC+dDの平衡時の分圧の関係と圧平衡定数を考えます。

ここで分圧の法則により、Aについて 整理するとが成立する。また、同様の式がB、C、Dについても成立する。

ここで(圧平衡定数)とすると、となります。は反応の種類以外には温度Tのみにしか影響されない値なので、も同様に反応の種類以外にはTのみにしか影響されず、と同じように使うことができます。

 

 

平野 晃康

平野 晃康

株式会社CMP代表取締役
私立大学医学部に入ろう.COM管理人
大学受験アナリスト・予備校講師

昭和53年生まれ、予備校講師歴13年、大学院生の頃から予備校講師として化学・数学を主体に教鞭を取る。名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、株式会社CMPを設立、医学部受験情報を配信するメディアサイト私立大学医学部に入ろう.COMを立ち上げる傍ら、朝日新聞社・大学通信・ルックデータ出版などのコラム寄稿・取材などを行う。

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