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小論文対策講座 第2回

小論文における「正解」とは、「主張の内容」ではなく、「主張の論証」のことである。

前回は、「小論文を書く」ということの入り口も入り口、すなわち、「考えを述べる」とはどういうことかについてお話ししました。すなわち、

小論文で述べる事柄については、事柄ごとに必ず「自分で考えた理由・根拠」を付随させること。

・・・ということが、意味のある小論文が書けることの大前提になっているわけです。

今回は、上を踏まえて、「小論文における正解」というものの定義に更に肉付けをしておきたいと思います。

いきなりですが、以下のような問いかけがあった場合、あなたならどのように答えますか? それぞれの問いかけに対して、1~2分ずつ考えてみてください。あるいは、何かアイデアが浮かぶまでは、ちょっと我慢して考えてみてください。どんな簡単なものでも結構です。

Q1 経営難に陥っている動物園をどう救うか、その方策を考えなさい。

Q2 薬を変えることに抵抗感を抱いている患者をどう説得するか、その説得の仕方を考えなさい。

Q3 慈善活動団体に向けて寄付を断る主旨の手紙をどう書くか、手紙の内容を考えなさい。

さて、漠然としたものでもよいですから、お答えは出ましたか?
細かい条件が取り払われてている点で答えにくかったとは思いますが、動物園救済の方策について、患者説得の仕方について、寄付を断る手紙の内容について、どのようなアイデアが浮かびましたか?
ちなみにこれらは、某大学の医学部で実際に出た問題から、要旨だけ抜き出したものです。

さて、次のステップです。

上の質問に対して出たアイデアを踏まえて、それらのアイデアがよいと思えた理由を考えてみてください。それから、そのアイデアが実現するための条件や、実現することに伴う課題点を考えてみてください。

例えば、動物園を救済するには、動物を増やせばいいかもしれません。では、なぜ動物を増やせばよいのでしょうか? より現実的な、あるいは建設的な、他の手立てはありませんか? あるのなら、なぜそれを書かず、「動物を増やせばいい」と答えたのでしょう? あるいは、動物を増やす際の問題点は?・・・あるいは、その解消法は?・・・あるいは・・・。

患者を説得するという事柄についても、同じような問題が生じます。患者に薬の変更を認めさせたければ、患者を懇々と諭せばいい。強い言い方になりますが、こんなことなら、誰だって思いつきます。だから、「懇々と諭すべきだ」と論じたところで、何の説得力も、何の論証能力もないわけです。「諭す」ということ以外に、手はなかったのでしょうか? 知らない間に薬をすり替えてしまうというのは、どうでしょうか? そういう仕方が、「諭す」という仕方に比べて劣る理由は何でしょうか? あるいは、「諭す」ということ自体の課題点は? その解消法は?

もちろんのことですが、寄付を断る手紙の内容についても、上と同じような質問がまとわりつきます。

さて、上の二つ目の問いかけで僕が要求したのは、一つ目の問いかけで答えたアイデアが他のアイデアよりよいことの論証、そのアイデアの課題点の検討等々・・・つまりは、そのアイデアを説得的な仕方で裏付けていくこと、いわばアイデアを「論証」することです。この「論証」は、ただアイデアを出すことに比べて、おそらくかなり難しいのではないでしょうか。

でも、小論文で問われているのは、まさしくそこなのです。

受験生諸君から答案を見せてもらうと、その大半は「自分のアイデアをただ並べておしまい」といったものにとどまっています。残念ながら、ただアイデアを放り投げて完結してしまうような答案は、先回の話の枠組みで言うなら「理由と切り離された思いや考えそれ自身」にすぎず、そういうものは小論文では有効性を持ちません。小論文では、「何が書かれているか」は例外を除いて主たる検討対象にはなりません。常識的に正しいことが「正解」であるわけではない。「おお、ナイスアイデア」と思わせるものが「正解」であるわけではない。もちろんアイデアそれ自体の斬新性が「正解」であるわけでもない。アイデアは、それ自体としては必ずしも強い印象を持つものである必要はありません。小論文の主題になるのは、「主張の内容」ではなく、先の二つ目の問いかけで示したような「主張の論証」なのです。

しかも、その「論証」の仕方は、その都度の答案に応じて、君たちが自分で考えなければいけません。自分の案がそれに対抗しうる他の案と比べてより良いのだ、ということの論証をするべきなのか・・・。あるいは、自分の案の課題点を提示し、それへの考察を加えるべきなのか・・・。あるいは、自分の案が課題文にあるどの要素に適切に応じたものなのかを説明するべきなのか・・・。あるいは・・・。そうしたことについての答えはもちろんのこと、その手がかりさえも、課題文や設問には書かれていない。誰も問いかけてはくれないのです。

・・・というわけで、まとめです。

小論文で検討の対象になるのは、提示された主張それ自身というよりもその根拠づけや論証の仕方である。また、その仕方はあらかじめ課題の方で設定されているわけではないため、それを自分でどう輪郭付けるかが、重要なポイントになる。

安達 雄大

安達 雄大

昭和53年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程出身。学生時代より大手予備校で指導を開始。現在は現代国語講師として全国で活躍する傍ら、医学系予備校で小論文指導も手掛ける。日々たゆまぬ研究に裏付けられた切れ味の鋭い現代国語の講義と丁寧な小論文指導により、受験生から絶大な信頼を集める。

 

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