川崎医科大学 一般入試 物理
川崎医科大学の理科は二科目合わせて120分。単純計算で一科目あたり60分の計算である。
問題形式について
まず大問について。
2008、2009年度は大問数が4問だったが、2010年度以降は6問となっていた。
次に小問について。
全ての問題が選択式で構成されていた。
穴埋めは、計算の答えを選ぶものもあれば、文章の穴埋めのものもあった。
以下に各大問あたりの小問数の表を示す。
年度 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
小問数 | 第1問 | 1 | 7 | 8 | 5 | 6 | 14 |
2 | 4 | 5 | 6 | 11 | 8 | ||
3 | 9 | 5 | 4 | ||||
第2問 | 1 | 7 | 5 | 4 | 6 | 7 | |
2 | 7 | 4 | 6 | 6 | 6 | ||
3 | 7 | 8 | 6 | ||||
合計 | 41 | 35 | 31 | 29 | 35 | ||
平均 | 6.8 | 5.8 | 5.2 | 4.8 | 5.8 |
2010年度以降大問数が4問から6問へと変わったが、それによって小問数が大きく増加した、という事は内容だ。しかし小問数は年々増加傾向にはあり、2012年度がここ5年間で最も多くなっている。これ以上どんどん増えていくという事は考えにくいので、2013年度以降も大体35問前後をふらふらとするのではないだろうか。5年間での合計の穴埋めの数は171問で、一年度あたりの平均は34.2問なので、大体穴埋め一つに2分弱、という計算になる。文章の穴埋めは当然そんなにかからないと思うので、その分面倒くさい計算に時間を回そう。
出題範囲について
以下に、年度・問題別の出題範囲の表を示す。
第1問 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
2012年度 | 力学 |
摩擦 衝突 |
電磁気 | 抵抗 | 原子物理 | |
2011年度 | 力学 | 物体の運動 | 電磁気 | 電流と磁場 | 力学 | 万有引力 |
2010年度 | 電磁気 | ダイオード | 電磁気 | 電荷と磁場 | 力学 | 二物体の運動 摩擦 |
2009年度 | 力学 | 動滑車 | 波動 | プリズム | ||
2008年度 | 力学 | 重心 | 電磁気 | 電荷と磁場 |
第2問 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
2012年度 | 力学 | 等加速度運動 | ? | 電磁気 | コンデンサー(回路) | |
2011年度 | 波動 | 音波 | 波動 | 凸レンズ | 電磁気 | 抵抗を含む回路 |
2010年度 | ? | 波動 | ドップラー効果 | 力学 | 物体の運動 | |
2009年度 | 電磁気 | 磁場 | 電磁気 | 振動回路 | ||
2008年度 | 波動 | 正弦波 定常波 |
熱力学 | 気体分子運動論 |
表の?と書いてある所は、下にも書いた物理とは関係の無い点取り問題である。また、2008年度以降熱力学の問題が出題されていないので、2013年度以降もそう出題されないのではないかな、と思う。2010年度以降、大問数が6問の年は、力学と電磁気が2問ずつ、波動か原子物理か?と書いた問題が2問、という構成になっている。作りとしては非常にバランスがよいので、これが崩れる事はそう無いだろうと思う。
問題について
まず、全体を通した雑感について。
この大学の問題で目に付く所は、まず全て選択式である、という事である。当たり前の事だが、記述式との違いは答えを出すのではなく選べばよいという事である。基本は記述式と同じようにやればよいが、わからない時、計算に時間がかかりそうな時に、選択式であるという事を上手く使えるとよいと思う。あと目に付いた所としては、2012年度と2010年度で物理とは全く関係の無い問題が出題されているという事である。どちらも内容としてはとても簡単である。他で少し難しい問題が出題されている時に出されるというイメージなので、全体のバランスをとるために出題されているのではないかと思う。全体的な難易度、また問題ごとの難易度に他の大学と比べてばらつきがないので、解けるものをどんどん解いていこう、という感じだろう。
次に、各年度について書いていこうと思う。
2012年度
全体
全体的な難易度は例年通り。どれも本当に基本の基本について問われていて、公式を知っているか知らないかレベルの話なので、時間が足りないならまだしもわからないというのは避けたい。
第1問
(1) 力学 摩擦 衝突
難易度はやや低め。自由落下、斜方投射とその後の地面との衝突について考察する問題。思考力という物はあまり求められていなく、教科書に書いてある公式を覚えているかどうか程度の事しか問われていない。落とすとすれば計算ミスくらいだと思うので、そのような勿体無い事は避けたい。
(2) 電磁気 抵抗
難易度は普通。抵抗を含む回路について考察する問題。直列と並列にならんだ抵抗の合成抵抗の求め方と、抵抗で発生する熱がどのような値になるかがわかっていれば解くのは難しく無い。基本の基本が大切である。
(3) 原子物理
省略
第2問
(1) 力学 等加速度運動
難易度はやや低め。加速度を表すグラフに対して速度はどうなるかを考察する問題。「加速度」が速度の変化率を表し、速度のグラフ上では速度の傾きとして表される事がわかれば、というか加速度が何なのかを知っていれば全て簡単に解けてしまう問題である。
(2) ?
難易度は低め。容器中に貯まる雨の量について考察する問題。いわゆる物理の公式は一切用いなくても解ける、というか正直物理の問題なのかと感じてしまうような問題である。
(3) 電磁気 コンデンサー(回路)
難易度はやや高め。コンデンサーが直列にn個繋がった時の合成容量について考察する問題。コンデンサーを直列に繋いだ時の合成容量の求め方を知っていればそれまでだが、そうでなくても電位についてとコンデンサーの基本式Q=CV、を知っていれば答えまでは十分たどり着けるだろう。しかし他の問題と比べて多少分量が多いので、てきぱきと片付けたい。
2011年度
全体
全体的な難易度は例年通り。全体的に計算量がかなり少なく、また内容も浅いので、まず時間が足りないという事は無いだろう。なので、落ち着いてケアレスミスでの取りこぼしを避けていけば合格点は十分に取れると思う。
第1問
(1) 力学 物体の運動
難易度は普通。糸でつながれた2物体の運動について考察する問題。分量としてはやや多く見えるが、誘導がしっかりしているだけで計算自体は実はほとんどしなくても最後までいく事ができる。見た目に騙されずとにかく取り組んでみる事の大切さがわかる。
(2) 電磁気 電流と磁場
難易度は普通。二本の電流が流れた導線の間に働く力について考察する問題。直線電流が直線電流からある距離r離れた地点に作る磁場の大きさについてさえわかっている、というか知っていれば、なんてことはない問題だろう。
(3) 力学 万有引力
難易度はやや低め。前半では静止衛星について、後半では地球の自転について考察している。題材としては難易度が高い問題もできうるが、この問題では考察が非常に浅い。例えば問1のセ、静止衛星の公転周期だが、地上から見て静止しているのだから24時間(=86400秒)に決まっているだろう。次のソは、静止衛星の角速度だが、一日で2πradなのだから、一秒では2π/86400radである。このように、そもそも物理の万有引力の知識が無くても解けてしまうのである。こういった問題で例えばセで秒を時間と勘違いして24を選んだり、公転だから365を選んだりというのは避けたい。
第2問
(1) 波動 音波
難易度は普通。長さの変えられる閉管での共鳴を利用しておんさの振動数などを求める問題。内容的には基本振動を3倍振動しか出てこないので、単純だと思う。後半では温度が変化しているが、その変化率を求める事は無く、それによって振動数などが大きいか小さいかだけを問うているので、計算はほとんど無く楽。早ければ5分程で終えることができるだろう。
(2) 波動 凸レンズ
難易度はやや低め。凸レンズについて考察する問題。問3以外はまずほとんど計算はいらないので、これも早い人はすぐに終わるだろう。
(3) 電磁気 抵抗を含む回路
難易度はやや高め。抵抗を含むいくつかの回路について、合成抵抗などを考察する問題。内容自体は、直列、並列での合成抵抗をどんどん計算していけばよいが、強いて言えば他の問題よりも計算量が多いので、難易度はやや高めに設定した。
2010年度
全体
全体的な難易度は例年通り。2012年度と同様、物理的な知識のいらないパズルのような問題が出題されている年度である。第1問の(3)が他と比べて明らかに分量も多く計算量も多いので、一目見て後回しにすべきだと思う。一方他の問題はかなり軽いので、第1問(3)以外の問題でしっかり得点を稼ごう。
第1問
(1) 電磁気 ダイオード
難易度は普通。ダイオードの一方向にしか電流を流さない働きについて考察する問題。後半は、ダイオードの性質と、可変性抵抗(抵抗値が電圧によって変化するため、電圧が電流に比例しない)の二つについて考えなければならない。グラフが何を表しているのかを正確に読み取ろう。
(2) 電磁気 電荷と磁場
難易度は普通。電界で加速されたあと磁場に入った電子の運動について考察する問題。問5はわざわざ計算しなおす必要は無く、問3、4の答えのEを2Eに、Bを2Bに変えるだけで答えはわかってしまう。そのため、問3、4が解ければ5はまず解けるだろう。ここで解けている人とそうでない人には大きな差がつくので、ここは取っておきたい。
(3) 力学 二物体の運動 摩擦
難易度はやや高め。斜面上に置かれた質量も摩擦係数も異なる二つの物体について考察する問題。二物体が接触した状態について考えている。計算量が多く、また内容が難しいので力学が苦手な人はほとんど手がつけられないと思う。だが選択式である事を生かせば簡単に解けてしまうものもある。
例えば問2では、二つの物体を一つの物体とみなした場合の動摩擦係数について問われているが、まず摩擦係数に斜面の角度は関係無いのでθが入っている答えは論外である。また、例えば物体2が物体1よりも極端に大きい場合を想像して欲しい。それこそボールと米粒程に大きさが離れている場合、物体2から見て物体1はほとんど関係なくなる。よって合わせた物体の摩擦係数はμ2に近い値をなるはずである。よって、m2だけが極端に大きいとした時にμ2に近づく値が答えである。それは⑦しか無い。このように計算をしなくてもわかるものはわかってしまうのである。
第2問
(1) ?
難易度はやや低め。物体の密度と質量について考察する問題。この大学ではしばしばこのように物理とは直接関係の無い、物理的な知識のいらない問題が出題される。比較的簡単なものが多いので、しっかり取ろう。
(2) 波動 ドップラー効果
難易度は普通。観測者が動くドップラー効果の問題について考察する問題。前半は観測者が動き、後半は動く壁に反射した音を観測するタイプの問題になっている。うなりの回数を求めるなど、非常によくある作りとなっているので、誰もが一度はやっているはずである。しっかり取ろう。
(3) 力学 物体の運動
難易度は普通。半球の上を転がり落ちる物体の運動について考察する問題。こういった問題の問4あたりをいきなり出せと言われると出せる人はそう多くないと思うが、この問題では誘導がかなりしっかりしているので順番にやっていけば割と簡単に解けるだろう。問5が選択肢を見てもわかるように明らかに計算が面倒くさいので、時間配分によっては真っ先に捨て問とすべきものだと思う。
2009年度
全体
全体的な難易度は例年通り。2010~2012年度までが大問6問だったのに対し、2009年度と2008年度は4問で構成されている。かといって分量、難易度がそう大きく変化したわけではないので、取り立てて対策が必要というわけでもないと思う。第2問(2)の振動回路は元々難易度が高くてなおざりにしてきた人も多いのではないかと思うが、公式さえ覚えれば必ず解けるのでそれだけは覚えておこう。
第1問
(1) 力学 動滑車
難易度は普通。動滑車につるされた物体を、それらに繋がれた斜面上の物体の運動について考察する問題。動滑車の性質についてわかっていれば、難無く解ける問題だと思う。
(2) 波動 プリズム
難易度は普通。プリズム中を進む光について考察する問題。最初は文章の穴埋めなので、考える必要が無い。その次は屈折率の違うプリズムでの光の屈折についての考察である。屈折率の公式を使えば解けるもので、特別捻ってあるわけではないので、おそらくほとんどの人が解けるだろう。ここは取りたい。最後は全反射についての考察で、臨界角がいくつになるかを求める問題である。これもよく出るもので、比較的簡単である。
第2問
(1) 電磁気 磁場
難易度はやや低め。選択肢それぞれがほとんど単発問題のような大問である。イの磁束密度の単位を知らない人は多いと思うが、これは別に知っている事を期待しているのではないと思う。何か磁束密度の入った公式(F=IBLなど)を使って単位を計算すればよいのである。文章の穴埋めも多いので、ここは得点の稼ぎどころになると思う。
(2) 電磁気 振動回路
難易度はやや高め。典型的な振動回路について考察する問題。そもそも振動回路自体しっかり考えるためには微積を使わなければならないので、正直公式を知らなければ、覚えていなければ解けない、という分野でもある。回路、問題自体はとても典型的なものなので、公式はしっかり覚えて臨もう。
2008年度
全体
全体的な難易度は例年通り。各問題の難易度にもばらつきは無く、できる所をどんどん解いていけばよいだろう。2007年度以前にどうだったかはわからないが、2008年度からの5年間で唯一熱力学の問題が出題された年度である(といっても気体分子運動論なのでほとんど力学の内容になるが)。
第1問
(1) 力学 重心
難易度は普通。形の異なる板の重心について考察する問題。問題では重心の座標をx座標、y座標に分けてモーメントの式を立てて考えているが、実際はもっと楽にできる。2枚の板を合わせた重心の座標は、それぞれの板の重心を結んだ線分を質量の逆比に内分した点である。この問題で言えば、板Aの重心(1,1)と板Cの重心(3,1/2)を1:2に内分する点が求める重心の座標であり、(5/3,5/6)とすぐにわかる。
(2) 電磁気 電荷と磁場
難易度は普通。電界で加速された電荷の磁場中での運動について考察する問題。前半は2010年度第1問(2)とよく似た構成になっている。後半は、磁場中での電荷の円運動の半径を測定する事により電荷の運動量変化を求めるという問題である。こちらは、電磁気の問題というよりも図形の問題に近い。
第2問
(1) 波動 正弦波 定常波
難易度は普通。正弦波と、それが壁によって反射されてできる定常波について考察する問題。正弦波のグラフを見て波長や振動数を答えたり、反射波と合わさってできる定常波について考えたりと、やる事は波動の基礎の基礎である。注意すべき点としては、自由端反射と固定端反射の区別をしっかりとつけておく事である。壁際の媒質が固定されていれば固定端反射、動く事ができれば自由端反射である。
(2) 熱力学 気体分子運動論
難易度は普通。よくある気体分子運動論の問題である。内容自体は教科書に載っているものの域を出ていない。この大学ではこの問題を最後に熱力学の問題は全く出題されていないので、2013年度以降はそう警戒しなくてもよいのではないかと思う。