北里大学 一般入試 物理
北里大学の理科は二科目合わせて100分。単純計算で一科目あたり50分の計算である。
問題形式について
まず大問について。
2008~2012年度までの5年間、どの年度も大問数は3問だった。
この傾向はここしばらくはまず崩れないだろう。
どの年度も第1問は問1から問5までの小問集合となっている。
次に小問について。
この大学の問題は、全て選択式の問題となっている。答え自体を選ぶものもあれば、答えの係数部分をそれぞれ0~9から選んだり、実際の数値を同じように選んだりする物も様々であり、それによって穴の数も大きく変わっている。2008年度だけはほとんどが数値代入の問題で穴の数が明らかに多いが、続く2009年度で大きく減少していてそれから2008年度程まで穴の数が増えた事は無いのでこれからもおそらく無いだろうと思う。最も少ないのは2010年度でその後は少し増加していて、2012年度もほとんど同じなので2013年度にもよるがこのスタイルで固まっていくのではないかと思う。
以下に各大問あたりの穴の数を示す。
年度 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | |
---|---|---|---|---|---|---|
小問数 | 第1問 | 21 | 27 | 9 | 17 | 43 |
第2問 | 8 | 9 | 9 | 11 | 10 | |
第3問 | 13 | 9 | 9 | 9 | 36 | |
合計 | 42 | 45 | 27 | 37 | 89 | |
平均 | 14 | 15 | 9 | 12.3 | 29.7 |
まず一番初めにも記述した通り物理にかけられる時間は50分以内には抑えたいので、大体大問1問に15分程度かける計算となる。大問によって穴の数も性質も大きく異なるので穴一個あたり何分という言い方は避けるが、例えば第1問は例年問5まである小問集合なのだから、問い1個あたり3分という目安で時間配分をすると良いと思う。
この大学は他の大学と比べて理科の時間が多少短い傾向にあり、当然物理にかけられる時間も少ない。第1問が小問集合という特筆すべき特徴も踏まえて時間的な面から対策を立てるとよいと思う。
出題範囲について
以下に、年度・問題別の出題範囲の表を示す。
第1問 | 第2問 | 第3問 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2012年度 | 小問集合 | 力学 | 慣性力 ばね |
熱力学 | 気体分子運動論 | |
2011年度 | 小問集合 | 力学 | 摩擦 斜方投射 |
電磁気 | 交流 電荷の運動 |
|
2010年度 | 小問集合 | 力学 | 斜方投射 衝突 |
電磁気 | 振動回路 交流 |
|
2009年度 | 小問集合 | 力学 | 万有引力 | 電磁気 | 電荷の運動 | |
2008年度 | 小問集合 | 電磁気 | 電磁誘導 | 熱力学 | 気体 |
物理には大きく分けて力学、電磁気、波動、熱力学という4つの分野があり、重要度(よく出題される度合い)は断然一位が力学、次点で電磁気といった所だろう。どの大学でも問題数の関係などで年度によって波動、熱力学が出題されない年度はよくあるが、力学、電磁気の2つが出題されない年はまず無いだろう。
この大学にはあまり関係の無い事だが、その上で力学の方が電磁気より上としているのは、例えば大問数が5問の大学の場合、つまり4つの分野中最低一つの分野が2問出題される訳だが、ほとんどが力学の問題が2問出題されるからである。なのでこの大学の場合、2009~2011年度のように第1問が小問集合で残り2問が力学、電磁気となるのが最も理にかなっている。2012年度は熱力学が出題されているものの、2013年度以降もこの2つが最も多いだろう。
なお、電磁気が出題されていない2012年度では第1問の小問集合で電磁気が2問出題されたり、また一方で2009~2011年度はどの年度も小問集合の構成が力学2問、電磁気、波動、熱力学から1問ずつとなっていたりと、どの年度も全体的な範囲のバランスはとてもよい構成となっている。おそらく出題者はそういった所にかなり気を配っているのだろう。
問題について
まず、全体を通した雑感について。
この大学の物理の特色として挙げられるのが、まず全ての問題が選択式であるという事である。この部分で答えを記述する形式の問題と比べて明らかにワンランク下がっていると思うし、またその分時間との勝負になってくるのでこの選択式という特徴をどう使うかによって出来具合がかなり変わってくると思う。真っ向からきちんと計算していたようではおそらく時間が足りなくなるだろう。その使い方については各問題の部分でも触れていると思うが、例えば単位計算を先にやる、係数だけ計算する、などである。
次に、第1問がどの年度も小問集合となっている事である。問1~問5で構成されていて、はっきり言ってどれも本当に基本的な内容ばかりなので、ぱっぱと済ませて次に進みたい。
出題範囲については、上でも触れているがどの年度も非常にバランスが良い。その分あまりレアな問題は見られないので、広く基本をみっちりやれば十分な対策はできると思う。
次に、各年度について書いていこうと思う。
2012年度
全体
全体的な難易度は普通。第1問の問5と第3問の正答率が少し低くなるかもしれないが、その分他の問題はかなり取りやすいのではないかと思う。その部分で勿体無いミスをしないように注意すれば、合格点を取る事は決して難しくないだろう。
第1問 小問集合
全体的な難易度は普通。問5以外はおそらく解けるだろうが、問5で躓いてしまう人が多いだろうと思う。もし解けなければ早めに見切りをつけて次に移ろう。
問1は力学、モーメントと摩擦の分野から、糸のついた物体の静止状態における糸の張力を求めさせる問題。棒が一様でない(重心が棒の中心に無い)という部分が多少レアだが、その他で特に迷う部分は無いだろう。
問2は力学、万有引力の分野から、地球の重力圏から脱出するための速度を計算させる問題。いわゆる第二宇宙速度という速度であり、第一宇宙速度(地表面すれすれを等速円運動するのに必要な速度)と合わせてこの分野ではよく出題されるので、絶対に押さえておこう。
問3は電磁気、磁場の分野から、電流の流れるコイルに磁場から働く力を求めさせる問題。電流が磁場から受ける力の大きさに加えて、直線電流がある距離離れた部分に作る磁場の大きさも知っていないといけない問題。特に後者はあまり出題頻度が高くなく、見落としやすい所なのでしっかり覚えておこう。
問4は電磁気、コンデンサーとコイルの分野から、コンデンサーとコイルを含む振動回路について考察する問題。他に特にひねるは無く振動回路自体は必ず取り扱う部分なのでできていて欲しいが、一つ言えば文字ではなく実際に数字を代入して答えるので計算ミスの無いように、といった所だろう。
問5は波動、光波の分野から、凸レンズによってできる像の位置と倍率を求めさせる問題。物体とレンズの間の一部にガラス板が挿入されていて、それがこの問題を1ランク難しくしている。別の問題で、屈折率nの水の底に物体が沈んでいる時、見かけの深さは実際の深さの1/n倍になる、という事を示す問題があるが、この問題ではその事実を用いると解答のように簡単に解く事ができる。
第2問 力学 慣性力 ばね
難易度は普通。加速度のある電車内でのばねのついた物体について考察する問題。前半は加速度と慣性力の関係についての問題で、後半はばねによる単振動についての問題という構成になっている。後半は、「重力が鉛直方向とθ傾いた向きに の重力が働いている」と考えれば前半の加速度がどうのという事は全く考えなくてよくなり、あとの物体が皿から浮かない条件だとか、速度の最大値などはよく出てくる物となる。
第3問 熱力学 気体分子運動論
何度はやや高め。球形容器の内部の気体分子について考察する問題。教科書ではしばしば立方体の容器という形で取り扱うが、今回は容器が球形である事と、そもそも気体分子運動論という分野がイメージがし辛くまた考察も深いため少しレベルが高いので、難易度をやや高めに設定した。球体という事を除いて流れとしては教科書で取り扱う順序と全く同じように書いてあるので、ただ覚えるのではなく考えて解くという事が身についている人は難無く解くことができると思う。
2011年度
全体
全体的な難易度は普通。どの問題も難易度にほとんどばらつきが無く、どれが難しい、簡単といった事がほとんど無い。なのでとにかく自分に解ける所を時間の限り、といった作戦になるだろうと思う。特に小問でつまって時間を浪費する事だけは避けたい。
第1問 小問集合
全体的な難易度は普通。力学から1問、電磁気、波動、熱力学から1問ずつと非常にバランスの良い構成になっている。難しいものは無いと思うので、あとは時間との勝負になる。1問3分以内を目安にさくさくと解いていこう。
問1は力学、モーメントの分野から、円盤が浮く時の外力の大きさを求めさせる問題。力を水平方向と鉛直方向に分解したり、力を作用線上に伸ばしたりなどの作業が必要になり、図がかなり複雑になってくる。きちんと練習を積んでいなければ途中で混乱してしまうだろう。
問2は力学、衝突の分野から、2物体の衝突後の運動について考察する問題。後半は、物理現象として「壁から3Lの位置でAとBが2度目の衝突をする」という事が、「Bが2L動く間にAは4L動く」という事と同じ意味合いである事に注目して手を付けるとよいだろう。問1よりは正答率が高いだろうと思う。
問3は電磁気、コンデンサーの分野から、抵抗、コンデンサーを含む回路について考察する問題。どことなくホイートストンブリッジ(回路図のコンデンサーの部分を検流計で置き換えた回路)を彷彿とさせるような回路図である。後半は「コンデンサーの極板間に電圧がかからない→コンデンサー両端の電位が同じ」と、「検流計に電流が流れない→検流計両端の電位が同じ」という事から、ホイートストンブリッジの問題を解く時と同じように抵抗の比で答えを求める事ができる。
問4は波動、回折格子の分野から、回折格子に対して斜めに光を入射した時のスクリーンの明線について考察する問題。垂直に入射した場合との違いは、スリットごとに入射光の位相がずれるという事だという事に気がつけば、そう難しい問題ではないと思う。ご丁寧にも近似の式も与えられている(つまりそれを使えという事)ので、それをうまく利用するとよい。
問5は熱力学、気体の分野から、容器内に封入された気体の等温変化、定圧変化について考察する問題。それぞれの変化が等温変化なのか、定圧変化なのか、はたまた断熱変化なのかを読み取ってあとは理想気体の状態方程式に随時代入していけば難無く取れる問題である。5問中これがおそらく最も解きやすいので、これが解けないという事は絶対に無いようにしたい。
第2問 力学 摩擦 斜方投射
難易度は普通。摩擦のある面での物体の運動と斜方投射された物体について考察する問題。設定自体はまあ全く同じ設定の問題は無いだろう、といった所。力学にはよくある、様々な分野を複合した問題だと言える。複合問題と言っても一つ一つは単純なものに落ち着いているので、取り組めば意外とあっさり解けるといった問題だと思う。
第3問 電磁気 交流 電荷の運動
難易度は普通。磁場中での電荷の運動について考察する問題。電源が交流と言っても、交流であるという事は問5にしか関係が無いので、そう身構える必要は無い。前半は問題文に「PがAB間を運動している間のAB間の電位差は一定とみなせ、」と書いてあるため、交流であるという事実はまだ使わなくてよい。よくある、磁場中で電荷を加速し、その後ローレンツ力により電荷が円運動するという問題となる。回転方向も問われているが、電荷の電気量が-qと負の値である事に注意して解答しよう。後半では何度も電荷を加速した際について考察している。この辺りは、サイクロトロンをイメージしながらやるとよいだろう。
2010年度
全体
全体的な難易度はやや高め。問題自体の難易度が高いというよりも計算量が多く、時間が足りないという人が多いのではないかと思う。あまりレアなものは出題されていないので、見た事のある、見て解き方のわかるものからてきぱきと消化していこう。
第1問 小問集合
難易度はやや高め。問題の難易度自体がそれほど高いわけではないが、問1、問4、問5など、計算量が多少多い問題が複数見受けられるので、時間を削られるかもしれない。時間が足りないと思ったらさっさと見切りをつけて、解く事よりも選択肢を絞るという方向に切り替えた方がよいと思う。
問1は力学、振り子の分野から、振り子の運動について考察する問題。選択肢を見るとどれも項が二つで片方にω、もう片方にθが入っているので、例えば回答番号1のωの項はどれになるはずで、θの項はどれになるはず、と項ごとに分けて考えた方がわかりやすいかもしれない。
問2は力学、摩擦とばねの分野から、粗い面上のばねのついた物体について考察する問題。静止摩擦係数とばねの伸びが問われているが、ばねがあるからといって伝わる力の大きさが変わるわけではないので前者を解く際はばねについては全く考慮に入れなくて良い。
問3は電磁気、電流と磁場の分野から、直線電流によってできる磁場の大きさを求めさせる問題。直線電流が6本あるので一見複雑そうだが、ただそれぞれの電流によってできる磁場をベクトルにしてそれらを合成すればよいというだけの話なので、身構える必要は全くない。
問4は波動、音波の分野から、ドップラー効果について考察する問題。難易度としては低く単純なものだが、回答番号7の選択肢がどれも複雑である事から計算量が多少多い事は容易に想像ができるので、普段過去問を解いていて時間が足りないと感じるようなら後回しにしてもよいかもしれない。時間が足りなかった場合でも答えとまではいかなくてもある程度絞る所まではやって欲しい。今回だと、例えばv1=v2だった時は観測者の観測する音の振動数はどちらの音源からの物も同じになるのでうなりの回数は0回となるはずである。なので答えはv1=v2の時に0になるような、②④⑥のどれかに絞られる。これだけで選択肢を10個から3個に絞る事ができるので、こういったテクニックは身につけて欲しい。
問5は熱力学、気体の分野から、ピストンで連結された二つの容器内の気体について考察する問題。Bの温度がΔTだけ変化したという事実だけでは当然圧力、体積を求める事はできないので、何かもう一つ条件が無いか探そう。今回だと、Bの体積の増加量がAの体積の減少量と同じである事を用いてA,Bそれぞれについて状態方程式を立てるとよいだろう。
第2問 力学 斜方投射 衝突
難易度はやや低め。斜方投射された物体と鉛直投げ上げされた物体が衝突し、その後一体となり運動する事について考察する問題。問題設定が非常に単純で、しかも問題集でしばしば見かける問題のため、かなり解きやすい問題の部類に入ると思う。これは10分程で全て解けていて欲しい問題である。
第3問 電磁気 振動回路 交流
難易度は普通。コンデンサーを二つとコイルを含む回路での電流の振動について考察する問題。途中でスイッチの切り替えがあり、そのそれぞれの状態は独立しているので、どこかが解けなかったからといってその先が全て解けないとは限らない。なので全部の問題に諦めずに取り組むようにしよう。
2009年度
全体
全体的な難易度は普通。第1問は例年よりも計算量が少ないので、15分弱で解ききれると良いかなと思う。残った時間を他の問題に割こう。第2問は万有引力についての問題になっている。どちらかといえば出題頻度は少ない方なので手落ちになりがちかもしれないが、万有引力の法則と位置エネルギー、ケプラーの法則くらいはしっかり覚えておこう。
第3問は下にも書いてあるが力学の色がかなり濃い。力学が苦手、という人はかなり苦戦したのではないかと思う。
第1問 小問集合
全体的な難易度はやや低め。他の年度と比べて選択肢に数字のみで、具体的な値が問われるのではなく何かに対する倍率を求められているものが多い。なので計算する時には、文字の部分は無視して係数だけに絞って計算するのがより早く解ける道のりとなるだろう。
問1は力学、モーメントの分野から、物体のバランスが崩れる瞬間について考察する問題。設定がなんだか仰々しいが、内容自体はとても単純なので、勿体無いミスをしないようにしよう。
問2は力学、ばね、単振動の分野から、ばねについた小球の運動を考えさせる問題。この問題では途中で小球が二つに分裂するという所が珍しい。分裂する前と分裂した後の振動中心を軸に考えを進めていくとよいだろう。
問3は電磁気、コンデンサーの分野から、コンデンサーと抵抗を含む回路について考察する問題。回路中のコンデンサーについて考える際には、常に①コンデンサーの基本式(Q=CV)、②電荷保存則、③キルヒホッフの法則(任意の閉回路で電源の電圧と電圧降下の和は同じ)の3つについて考えるようにしよう。
問4は波動、音波の分野から、長さの違う2本の開管で共鳴する音について考察する問題。前半は基本振動について、後半は3倍振動について扱っている。どちらもうなりについて問われているが、うなりは振動数の差なのでそれぞれの開管で共鳴するような音波の振動数を求めてからうなりを求めるのがセオリー通りで良いだろう。
問5は熱力学、気体の分野から、密閉容器中の気体の等温変化、定圧変化について考察する問題。この問題では2回変化があるが、前者が等温変化、後者が定圧変化である事を正確に読み取ってあとは気体の状態方程式で考えよう。(ボイル・シャルルの法則でも可)
第2問 力学 万有引力
難易度はやや高め。惑星間の万有引力について考察する問題。そもそもの分量が多い上にいくつか数値計算の問題があり、計算の速さ、正確さがかなり求められると思う。問3では第二宇宙速度、問4では第一宇宙速度を求めさせる問題もあり、これらは様々な大学でよく出題される(この大学でも2012年度第1問に第一宇宙速度の出題がある)ので、この二つ必ずできるようにしておこう。問6からは火星へ探査機を到着させる方法について考察している。問題の最初に書いてあったケプラーの法則を用いて解こう。
第3問 電磁気 電荷の運動
難易度は普通。電位差のある極板間に射出された電荷の運動について考察する問題。電磁気の問題はしばしばそうだが、基本事項が電磁気なだけで考える内容はほとんど力学の分野の話になっている。力学が致命的に苦手だとこのように他の範囲の問題にも手が出なくなってしまうので、力学だけは絶対にきちんとやっておかなければならない事がよくわかる問題だと思う。
2008年度
全体
全体的な難易度はやや高め。第1問、第3問はほとんどが数値代入の問題で、時間という面で多少厳しいかもしれない。その上第2問がかなり難しいので、他の年度と比べて得点率は低くなるのではないかと思う。第1問と第3問の難易度自体はそれほど高くはないので、この2つをしっかり取って余った時間で第2問、といった作戦がよいだろう。
第1問 小問集合
全体的な難易度はやや低め。第1問だけで43個の穴埋めがあって若干気圧されるが、そのほとんどが数値なので一度に何個もの穴が埋まり実質の量はそれほどでもない。穴埋めの数値は問1、問2が文字の係数で、問3、問4は数値代入の値なので、前者と後者で解き方を変えるべきだろう。前者は文字の部分は半ば無視して係数のみを考えればよく、後者は計算ミスの無いように慎重に計算しなければならない。難しい問題は一つも無いので、ミスしても一つに抑えたい。
問1は力学、モーメントの分野から、釣り合いを保っている物体や糸に働く力を求める問題。どの点まわりでモーメントの釣り合いの式を立てればよいかわからなくなるかもしれないが、例えば最初の糸の張力を求める場合、①点BやCまわりに式を立てると肝心の張力が消えてしまう(距離が0なため)、②点Aで壁から働く力がまだわからない、という理由から点Aまわりでモーメントの式を立てる(そしてまだわからない点Aに働く力を式から消す)と解けるという事がわかる。大きさの未知な力が図中に2つの場合はこのように一方の点まわりでモーメントの式を立てると解ける。一方が求まればもう一方は簡単である。未知の力が3つ以上の場合は、いくつかの点のまわりで式をたててそれを連立方程式にして解くのがセオリーだと思う。
問2は力学、振り子と衝突の分野から、ともに振り子状態の2つの物体の衝突と衝突後の運動について考察する問題。衝突が完全弾性衝突である事に注意して、ミス無く取ろう。
問3は電磁気、電荷の運動の問題。内容自体はとても単純な基本問題だが、全て数値計算なので見た目にも若干面倒である。焦らず正確に計算しよう。
問4は波動、音波の分野から、定常波の腹と節について考察する問題。2つの振動数の同じ音源から音を出して、その合成波の腹から隣の腹までの距離を求めさせている。こういった問題は水面波ではかなりメジャーで、ただ波が水面波なのか音波なのかの違いしか無いので、怯む事無く解けていて欲しい。
問5は波動、光波の分野から、異なる媒質の境界面で全反射する時の入射角を求めさせる問題。ちなみにこの角度を臨界角と呼ぶ。一方を空気、もう一方を水だと思って考えるとわかりやすい。
第2問 電磁気 電磁誘導
難易度は高い。磁場中を動く導線によって回路に生じる誘導電流について考察する問題。この問題のレベルが高いのは、見てもわかる通り導線が円運動をするという事である。これによって誘導電流の値がわかりにくくなっている。しかも磁束密度も一定の値では無い。その回路を抵抗、コンデンサー、コイルと3つの性質の異なるものに接続してそれぞれについて考えるという点もこの問題のレベルを上げていると思う。正直かなり面倒な問題である。
これを全て解くという事は時間的にも内容的にも厳しいかもしれないが、例えば問6ではコンデンサーで電力が消費されない(熱や光が発生しない)事は明らかなのだから、どんな設定が付こうともコンデンサーでの消費電力は0である、といったように独立して解ける問題もあるし、値ではなく符号を選ぶものもいくつかあるのでこういった部分でも得点稼ぎができる。全て解けないにしても、前から突っ込むのではなく同じ時間でより得点が稼げるような取り組み方をしよう。
第3問 熱力学 気体
難易度は普通。容器に密閉された気体の変化について考察する問題。この問題で珍しい所は、ピストンと容器の間にバネがついているという事である。気体が膨張したり収縮したりした際には、このバネに蓄えられる弾性エネルギーについても考慮に入れなくてはならない。あとは、セオリー通り、それぞれの変化がどのような変化なのかを的確に読み取り、それぞれに合った公式を用いてといていけば良いと思う。