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合格体験記 東京大学文科一類 H.A君③

 センター試験の得点率は八割と少しくらいでした。本番が迫ってくると何故か娯楽に走りたくなるのが受験生の性だとは思いますが、試験前日の夜中までソチ五輪のリプレイ動画を延々と検索し続けるのはお勧めしません。しっかり睡眠をとって、精神統一を図るのが合理的な判断だと思います。私はこのセンター試験の(東大後期試験にも出願できないような)悲惨な結果と慶應での試験中の居眠りという二段階の失敗を経て、ようやく前日にはインターネットを封印する決心がつきました。

 二次試験当日のことについてはあまり覚えていません。すぐに思い出せるのは昼食を買い忘れたせいでどうしようもなくお腹が空いていたことと、文系数学の第一問があまりに簡単過ぎて三度見くらいしたことくらいです。ただし身体に染みついた‘緊迫した感じ’というのは試験会場を出て自宅に落ち着くまで拭えず、以降合格発表までの二週間はよく眠れない夜が続きました。寝不足が祟ったのか肝心の発表当日の朝に寝坊して、父親からの「受かってるみたい」という電話で目が覚めたというのは今ではいい思い出です。

 実際に自分の目で受験番号を確認したとき蘇ったのは、三年前担任が私に言い放った「東大に行け」という台詞でした。思えばその力強い言葉が、自らの学習に大局的な目標を持たず終ぞ他人に寄りかかるばかりだった私の志望校への道筋を後押ししてくれていたのでしょう。

 この大学に来てから常々思うのは、周囲には私よりもずっと前から東大を意識して勉強してきた人の方が多いということです。意識はしていなくても、いずれ日本トップの大学を目指すため、専門分野の研究に携わるため、同じ志望校の友達に遅れないためという理由で最難関と呼ばれる学校や専門塾に通っていた東大生は学年の大半を占めています。彼らと話せば直ちに分かることですが、その東大への過程には彼ら自身の強い意向と信念があります。例えば親からの期待だとか将来の夢だとか実現したいことだとか、そうした動機に突き動かされる強烈な上昇志向を内に秘めた人々の集まりという言葉で東大生は形容されるかもしれません。受験勉強の上で躓いたり転んだりしながらも、彼らの視点は常に未来の自己像へ向けられていました。

 この前進的なモチベーションを支えるものとして、私は「経験の密度」を推したいです。常々東大は官僚養成機構だとか、他大学と比較して無味乾燥でつまらない頭でっかちが多いとか言い囃されていますが、私は何の根拠もない妄言だと思っています。高みを目指して長い道のりを乗り越えてきた東大生は、例外なくその背中に抱えきれないほどの人間力と経験を携えています。それは東大の入学試験(想像がつかないので理科三類を除いておきます)が努力以外の何物も要求しないこと、受験生は努力できるという才能を携えた者たちを指すということ、そして挫折と成功とを蛇行して進まなければならない努力の過程には、教養知識や出来事との遭遇と、想起される感情とがきっと存在するということで説明されるように思います。成績向上を例にとってもけして一本道の平坦なものとは限りません。机に向かう意志を揺るがす対人関係の悩みだったり、体調の良し悪しだったり、周囲からの期待だったり、逆に緊張感に伴うストレスを発散させてくれる、もしくは成績への冷静な判断力を取り戻させてくれる部活動への没頭だったり、一生忘れられない文化祭の思い出の創出だったり、あらゆる実体験が時には日差しや追い風に、時には雨や吹雪となって行く手の景色を眩ませます。それでも目的地を見失わないようにと自らの意志を研ぎ澄ませ続けた結果として最高学府の門は開かれるのであり、経験に揺さぶられ続けた末の彼らの強靭な精神を「無味乾燥なもの」として片づけるのはあまりにも安直すぎます。

 つまり東大にも面白い人はたくさん居るということです。東大に限らず、京大にも、早慶にも、他のあらゆる大学、学部に、受験という人生経験を突破して這い上がってくる面白い人たちは数多く居ます。皆さんも多くの出来事に出会って、多くの衝撃に打ちのめされて、傷を負って硬くなった手の平で是非、志望校への扉を抉じ開けて下さい。

 

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