医学部受験の化学学習法 第2回
偏差値50まで
それでは、学習の各段階において、注意すべき点などをお話ししていきます。
まずは、学習の初期段階について。“偏差値50まで”としましたが、形式的な区分けであり、この段階を終えたときの偏差値は諸条件によって変わります。“一通り目の学習”と考えてください。標準的には2か月~1年かかります。
<1>この段階こそが最も重要
学習の段階の中で、最も重要なのがこの段階です。それは、この段階の学習を通して、高校化学の学習の仕方、考え方やものの見方を身につけなければならないからです。この段階をうまくクリアできれば、今後の学習の基礎(知識ではなく、頭の使い方)ができるため、以降の学習が非常にスムーズに進みます。それどころか、この段階を終えただけで偏差値60近くになることもあるでしょう。
逆に、下手な学習をしてしまうと、いつまでたってもマーク模試で60点程度をうろつくことになります。
- “下手な勉強”をした結果の例
- ・なんとなく用語を記憶しているが、全く説明できない。
- ・根幹にかかわる部分と枝葉の部分の区別がつかない。
- ・他との関連性のない些末なことだけ覚えている。
- ・豆知識だけは知っている。
<2>この段階で必要な学習能力
①文章を読解する能力
説明(文、図)を読み、あるいは聞き、それを理解、整理する能力です。話の要点をつかむ、自分が理解しているかどうかをチェックする能力も含まれます。学習の初期段階で最も重要な能力でしょう。
おそらく、他の教科の学習においても最重要でしょう。例えば、歴史。教科書(文、図表)を読み、流れを理解し、要点を整理することこそが勉強であり、用語だけを覚えてもダメでしょう。科目は違っても勉強に必要な事柄の多くは共通しています。一度大学を卒業した再受験生の学習能力が、一般の受験生に比べて非常に高く、学習に必要な期間が短くて済むのは、大学での勉学を通してこの能力が上がったからだと思います。
逆に、この能力が低い場合、この段階の学習に他者より長い期間をかける必要があります。文章を読み、図を見て、説明を聞いたら、すべてその通りに再現する習慣をつけましょう。「なんとなくわかった」は禁物。授業を受けたその日のうちに1回、次の日に1回、1週間以内にさらに1回…。用語だけではなく、文章+図で再現するのです。はじめのうちは、必ず紙に書きましょう(書いた後は捨ててもよい)。この作業を繰り返していけば、「ストーリーが言えないと理解したことにはならない」と感じるようになります。この感覚こそが勉強が得意な人に共通する事柄です。
②計算関連の能力
- ・単位量当たり
- 例:密度1.2g/㎤の物質5㎤の質量は?→1㎤が1.2gだから5㎤は5×1.2=6g
化学の計算の大半は、これで成り立っています。 - ・比、比例反比例
- 上と同じ例で、1㎤:1.2g=5㎤:?g
時間と手間がかかるので、学習の最初期に考える以外は、できるだけ“単位量当たり”か“公式”に移行しましょう。 - ・公式
- 上と同じ例で、質量=密度×体積
公式を覚える必要がありますが、〔g〕=〔g/㎤〕×〔㎤〕とできます。
これらの3つを適当な割合で使いましょう。
- ・方程式の文章題
- 中学校で習う、方程式の文章題を解くことができれば大丈夫です。
算数、数学に自信がない人は、簡単な計算問題を多めに練習し、各量の求め方を暗記することで、ある程度は補うことができます。
医学部受験の化学学習法 記事一覧
- はじめに
- 偏差値50まで
- 偏差値50まで(理論化学)
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