第三回:1科目に集中せず、時間を区切って複数の教科に取り組む
ざっくりいうと
- ① 高校生の方が勉強に集中できる環境にいる。
- ② 集中力は高校のときより下がっている。
- ③ 効率の良さと安定感で勝負する。
- ④ 集中力は最初と最後に発揮される。
- ⑤ 最初と最後を増やして集中力を途切れさせない。
1科目を集中的にやってそれを得意科目にしてから・・という勉強方法を取ると、一気に偏差値を上昇させることができ、その科目を軸にして受験を乗り切ることができる。そういう方法があるのは確かですし、否定はしませんが、社会人がこの方法を取るのはあまりお勧めしません。
理由は、社会人が受験勉強する場合、勉強に振り向けることができる時間や体力などのリソースが限られているという事、スタートラインが普通の受験生よりずっと低い事です。
1日中勉強だけにコミットできる時間と体力のあった高校生時代とは違って、仕事が終わってから、あるいは仕事の合間に勉強をしなくてならず、(高校生の時に比べて)体力が低下している事から集中力が低下しがちな社会人にとって、1日5時間~6 時間の勉強を1科目に振り分けるのはあまり得策ではないのです。
1 日5~6 時間、ある科目だけやり続ける。これは、相当の集中力が無くてはできません。ひょっとしたら10代の半ばや終わりごろのように体力と気力がみなぎっていたころならできたかもしれません。でも、社会人は仕事をせねばならず、体力も気力も昔ほどではないのですから、それを自覚して最も効率の良い方法を模索するべきです。
第二回で集中力について少し触れましたが、作業と言うのは終わりの時間が近づくにつれて効率が上がります。私もコラムを書いたり、雑誌や赤本の原稿を書くとき、時間があるとああでもない、こうでもない。と考えて筆が全く進みません。しかし、締め切りが迫って明日、提出しないといけない。となると俄然集中力が出てきて、一気に完成させてしまいます。
このように、終わる直前に集中力が上がる効果を、締切効果と言います。もう後がない!そう思ってから人間の集中力が発揮されるのです。
そして、もう1 つ集中力が発揮される瞬間があります。それは、始めた直後です。気持ちが一番新鮮で、やる気に満ち溢れた瞬間です。
そこで、80 を1 単位、途中に10 分休憩を挟んでそれを4 単位にすると集中力は下図のような形になります。途中に休憩をはさんでいますし、80 分とそれほど長い時間ではありませんから、集中力もそれほど低下しません。
また、ある程度勉強した科目でも、しばらく何もせずに放置しておくと、勉強した内容を徐々に忘れていってしまいます。毎日、少しずつでもすべての教科に万遍なく取り組むことは、そうしたロスを最小に抑える効果もあります。
勉強は積み重ねが大切と言うのは、やったことは時間がたつと忘れてしまうので、忘れてしまう前に次々と積み重ねていき、忘れていく速度よりも覚えていく速度を速くする、と言う意味でもあるのです。