第六回:早い段階で高校の教科書事項を全範囲抑えること、8 割理解できたら先に進むこと
ざっくりいうと
- ① まずは教科書レベルで、教科の全体を把握する
- ② 細かいところまで理解しようとしない、高いレベルから始めない
- ③ 完全に理解しようとせず、8割理解できたら先に進む
- ④ 理解できなかったところは後から復習する。繰り返せば理解が深まる。
勉強を始めたら、まずは教科書レベルの内容を全範囲にわたって固めることが先決です。ある分野だけを深く掘り下げて勉強したり、細かい事項にこだわったりする必要はまったくありませんし、むしろしてはいけません。各教科の全体像をしっかりと理解し、教科書章末問題を説明できる程度までしっかり解けるようにすることが先決です。
教科書をやり込むだけで、偏差値が50~55、カンのいい人で比較的簡単な模試なら60 近くになります。そうすると、模試でも点数が取れるようになり、気持ちに余裕ができますし、先に進む励みにもなります。
なによりその教科の全体像が分かってきて、基本知識が頭の中で整理されるため、応用的な参考書や問題集の解説・解答を読むことができるようになり、勉強の効率が良くなります。「勉強がはかどらない人へ」でも書いていますが、学習の第一段階、第二段階は、「基本事項の暗記」と「暗記した事項を使って新しいことを理解する」です。最初に幅広い基本事項を頭に入れておくことで、たくさんの事項を正確に理解することができるようになり、勉強の効率が上がるのです。
そう言っても、あんまり簡単な問題だとかえって心配になってしまう、と言う人もいます。「勉強がはかどらない人へ」の内容と重複してしまいますが、なぜ教科書から始めなくてはいけないのか、基本問題と標準問題と発展問題の違いを使って説明します。
- ① 基本問題:
- 1つの問題に1つの事項が入っている問題。覚えた知識をそのまま使えば解ける問題。
- ② 標準問題:
- 複数の基本問題が組み合わさった問題、その組み合わせ方が分かれば解ける問題。出題パターンが大体決まっており、そのパターンを理解して覚えておくことが大切。ただし、組み合わせ方を理解するためには、基本事項がきちんと理解できていないといけない。
- ③ 発展問題:
- 教科書などに載っていない題材を使ったり、受験生にとっては見たこともないような目新しいパターンの問題。問題文や数式をよく考え、本質に立ち戻って考えると解くことができる問題。基本事項への深い理解と分析が必要。
ほとんどの大学では②の標準問題を解くことができる力があれば突破することができます。実際、東大の問題でも②の標準問題+α程度が完全に解ければ合格点に達することができ、本当の発展問題と言うのは余り出題されませんし、重要ではありません。(東大の入試問題は解法は標準的ですが、解答にたどり着くまでの場合分けや計算量が多く、なかなか点数を取らせてくれません。むしろ発展問題は京大に多い・・。)
ですので、当面、②の標準問題を解くことが大切なのですが、その標準問題は基本問題の組み合わせによってできています。短絡的な人は基本問題は簡単だから、標準問題において基本事項がどのように組み合わさっているのか理解していればいいのだろう。じゃあ、それだけやればよい。と思ってしまいますが、これは誤りです。基本事項の理解は皆さんが思っているよりも重要で、しかも、本気でやると大変なことです。わかっている、と言う人ほど教科書事項について問うと答えることができないものです。そして、基本事項を軽視している人ほど、勉強が進まなくなってしまうのです。
次にやってはいけないのは、基本事項を完璧に理解しようとして、いつまでも標準問題に進まない事です。一冊の参考書や問題集を読み終わった時、10 章くらいあったら、そのうちの2~3章くらいは良く分からないことが書いてあるものです。残りの部分についても最初から完全に理解することは出来ないでしょう。
新しいことを学ぶと言うのはこういうものです。でも、一度読んだことは頭の中に残っていて、先に進んだ時に理解できるようになったり、先に進んでから戻ってきて復習した時に、突然理解できたりするものです。ですから、まず基本事項の全体、つまり教科書全体をざっくりと理解して、それから標準問題に取り組み、分からないところがあったらその単元の教科書事項に戻って復習をして・・。という繰り返しが一番良い勉強法です。
次のステップに進むときの目安は、その本の8 割くらいが理解できた、と思った時です。全体像が大体わかって、いくつか腑に落ちないところがある。そういう状態になったら先に進みましょう。そして、よく理解できなかった部分は覚えておいて、先に進んでからもう一度復習し直せばよいのです。
教科書事項が大体わかったら、標準的な問題集をやってみる。それが終わったらもう一度教科書事項に戻ってみる。それを繰り返しているとはっきりと理解できるようになる。最初は大雑把に、その後、徐々に煮詰めていくという感覚が大切。最初から細かく理解しようとしたり、高いレベルに達そうとすると先に進まなくなる。
勉強時間を1 日6時間程度とれるなら、約8か月~1年程度を掛けて中学・高校の教科書事項を、次の半年~1年で実戦問題+過去問を解けるようになる事を目標とすると良いでしょう。勿論、1日にとれる勉強時間、集中力や理解力などの差によって、期間は変化します。
実際、どのような参考書を使うべきかは第七回~第九回で説明しようと思います。