日常生活でも酵素という単語を耳にしたことがあると思いますが、似たような単語に触媒というものがあります。実は触媒という大きなグループの中に、酵素という小さなグループが含まれています。 ですからまずは触媒の定義から話を進めますが、触媒の定義は生物でも化学でも出題されるので、必ず押さえてください。触媒の定義は3つの部分に分けることが出来ます。

①化学反応の前後で自身は変化しないが
②反応の活性化エネルギーを下げることで
③化学反応を促進する物質

これが触媒の定義です。酵素はこれに加えて、触媒のうち主成分がタンパク質のものに限られます。つまり、酵素とはタンパク質でできた触媒のことなのです。 一方で、触媒のうち酵素以外のもの、つまり無機物でできた触媒のことを無機触媒と呼びます。それでは触媒と酵素の定義について、ある物質Aが物質Bに変わるという反応を酵素Eが促進している、という例を用いて説明していきます。 通常、A→Bという反応は、酵素がない状態では活性化エネルギーが大きいのでなかなか進行しません。活性化エネルギーとは、物質が化学変化しやすい状態になるのに必要なエネルギーであり、山のようなものです。 これを超えなければ反応は起きません。ちょうど、食べごろの料理というのは暖かいと感じる程度の温度なのに、一度はフライパンなどで強く加熱しないと美味しくならないことに似ています。 化学反応も料理同様、一度強いエネルギーを加える必要があるのです。そこへ酵素Eが現れると、酵素はAと結合して活性化エネルギーが小さくなり、反応が起きやすくなります。これが酵素反応の実態です。 ところで化学反応の前後で酵素Eの様子を比べてみると何の変化もありません。自身は前後で変化しないのに反応を促進してしまうすごいやつなのです。

ここからは酵素の構造と特徴について見ていきます。酵素の作用を受ける物質を基質と言います。上記の例で言うと物質Aにあたります。酵素分子には、基質と結合するためのくぼみがあり、これを活性部位と呼びます。 この活性部位は高性能なくぼみで、きちんとくぼみに合う形をした基質でないと反応が起こらないようになっています。ちょうどカギと鍵穴の関係に例えられます。 このように酵素が活性部位にぴったりと合う基質としか反応しないという性質を基質特異性と言います。これは酵素の重要な特徴ですのでよく覚えておいてください。

続いて酵素反応の流れについてです。酵素と基質が出会うと活性部位に結合します。これにより酵素と基質が合体した全体を酵素-基質複合体と呼びます。そして反応が起こり基質の構造が変化すると、やがて酵素を離れていきます。 これは以下のように簡単にまとめることができます。

活性部位に結合→反応→離れる