ここまでの章で酵素反応の性質を全般的に学びましたから、ここからはその具体例の一つとして光合成を扱っていきます。光合成とは同化反応の一種で、植物細胞の葉緑体で行われています。同化とは小さな物質から大きな物質を作る反応のことでした。また、第2章で葉緑体は畑であると例えたのを覚えているでしょうか?これは光合成が水と二酸化炭素をもとに、太陽の光のエネルギーを使って酸素とグルコースを作る反応であり、このグルコースはデンプンなどに姿を変えて貯蔵されたりエネルギーとして使われたりしているからです。

光合成:水+二酸化炭素+太陽の光エネルギー→酸素+グルコース→デンプン

光合成の起こる場所である葉緑体は、二重膜で囲われている細胞内小器官でした。第1章の最後で紹介しましたが覚えていますか。外膜と内膜に囲われています。葉緑体以外には核とミトコンドリアも二重膜でできているのでした。葉緑体の内部にはチラコイドという袋状の構造があり、これが積み重なったものをグラナと呼びます。ちょうど、丸い餅が重なった鏡餅のように見えます。チラコイドがない部分はストロマと呼ばれ、酵素を含む液体で満たされています。光合成の起点として重要な働きをするのがチラコイドに含まれている光合成色素です。クロロフィル、カロテン、キサントフィルなど様々な種類がありますが、最も主なものはクロロフィルの中でもクロロフィルaと呼ばれる色素です。この色素が太陽の光のエネルギーを受けることで光合成が始まります。