やはり対面の指導には強みがある?

現在は、まったくの導入向けから入試難問対策向けまで、さまざまな参考書・問題集が世の中に溢れていますし、ネット上にも、ポータルサイトや質問掲示板、無料授業動画など様々な形で受験情報や教科の情報が上がってくるようになりましたから、ほぼ独学で数学の学習を進めることも不可能ではなくなってきました。実際、いわゆる再受験で、この参考書をみっちりやったら希望の大学に合格したとの嬉しいお知らせは、拙サイト「水野の数学参考書レビュー[高校数学・大学入試]」にも寄せられたことがあります。が、そうやって成功を収められる受験生は、全体からすればまだまだ少数派で、大多数の受験生は、進学校と呼ばれる高校や予備校、塾(最近では「授業をしない塾」なるものの噂も聞きますが、そういった所も含めて)に通ったり、家庭教師についたりしていると思います。

そこで、本記事では皆さんの身の回りの「指導者」について考えます。教科の内容自体を教えてくれる先生はもちろんのこと、それ以外にも予備校にはチューターと呼ばれるスタッフがいますし、皆さんのご家族、級友や先輩などからも何かしら教えてもらうことがあるでしょう。与えられた「指導者環境」は、どんどん『活用』していきましょう。

質問上手になろう

よく「授業を受けるだけではもったいない!どんどん質問に行こう!」と言われます。もちろん正しいことなのですが、何か分からないことがあると気に入った先生のところへすぐ「これ分かりません!」と持って行くのは、あまり良い質問の仕方とは言えません。また、質問してそれに答えてもらっている時間を何となく過ごし、それで勉強したような気分に浸りたいだけなのでは?と言いたくなる「質問」も、筆者はよく目にしてきました。結果につながらない質問は、皆さん自身の時間だけでなく、指導者の時間も奪うことになります。以下に、悪い質問のパターンとその改善案をあげていくことにしますので、参考にしていただければと思います。

  • 「この問題なんですけど…」いわゆる「丸投げ」質問
  • 解答冊子を読むだけ読んで「ここの意味が分かりません」質問

先ほども述べましたが、自分で何もアクションを起こさず、いきなり持って来られる質問に、指導者は最も失望します。極めて有能な指導者はさておき、どうしても授業で説明したのをそのまま繰り返すだけになりがちです。噛み砕いて説明してくれる指導者もいますが、全体がそうなってしまうと、間延びしてしまって、それはそれで分かりにくくなってしまいます。ポイントを絞りましょう。

また、一から説明して欲しいという場合や解答の意味が分からないという場合は、説明して欲しい問題を解く段になっていきなりつまずいたということは考えにくく、大抵は、その問題を解くための基礎になる考え方を経験すべきところで、その部分の理解が深まっていません。難しいところではありますが、参考書などで類題を探したり、自分にとって理解しやすく書かれているものを探したりして欲しいのですが、それをしない生徒さんは、解けない問題の載ったものと、その答えしか持たずに質問に行くので、「底」が見えてしまいます。

→自分で考えた!というところを指導者に何かしら見せて、どこを詳しく教えて欲しいか明らかに
  • 「学校、予備校、塾の指定外の参考書・問題集の質問をいきなり持って行く

基本的に、学校、予備校等に限らず、指導者は自分が今使っている教科書・問題集・参考書を中心に教材研究(授業の準備など)をしています。それ以外のものの質問をいきなり持って来られると、説明の仕方がそちらの解説と食い違ってしまったりして、総じてパフォーマンスは下がります。「えっ?そんな本を使っているの?」と、まずその段階で違和感や嫌悪感を覚える指導者も、いるかも知れません。少なくとも、そういう質問をしてよいか、一言ことわってからにしましょう。

→「あの~、自分で買った問題集に載っていた問題なんですけど、聞いていいですか?」
  • 質問したいというより、しゃべりたいだけ

受験生というのは総じて孤独なものなので、時にはそうしたいのも無理はありませんが、指導者はコンビニではありません。最初のうちは、指導者も質問に来て欲しいでしょうし、質問の仕方を「指導」するのも指導者の仕事のうちと考えて丁寧に対応してくれるでしょうが、まあ、ほどほどに。

→まずは、質問することを覚えましょう。次に、質問しないことを覚えましょう。
 そして、必要なときに質問することを覚えましょう。
  • 教えてもらったこと・回答してもらったことを、実行しない

質問に答えてもらって、最後に「解き方のポイントは分かったね。じゃあ、この後の答案を自分で完成させてみようか?」と言われたことはありますか?そういった場合に、そのあときちんと実行するかどうかで、その後の成績の伸びは、大きく違ってきます。指導者は、そのときに説明を聞くだけでは不十分であることも、暗に言ってくれているわけです。それに従い、努力しましょう。

また、これは問題の解き方よりも「良い参考書・問題集を紹介して下さい」という質問を持って行ったときに言えることかも知れませんが、勧められた本を結局のところ買ったかどうか。もし買わなかったなら、どういうところが自分に合わないと思ったのか、答えてくれた指導者にきちんとフィードバックしていますか?答えた以上、指導者は質問してくれた人の今後が気になります。全部いちいち報告する必要はありませんが、心には留めておいて欲しいものです。

→質問して、答えてもらったら、自分なりに「責任」を持つよう心がけましょう。

まとめ:指導者を『活用』するには、学習者自身のレベルアップも不可欠

…とまあ、いろいろと書かせていただきましたが、身の回りの指導者環境をよりよく『活用』できるようになることも、広い意味では学習のうちだと言えるかも知れません。指導者からよりよい指導を「引き出せる」ようにと考えていくと、学習者である皆さん自身も、自然とレベルアップできます。「おおっ」と思わせるような質問をして、指導者をビックリさせられるようになれたらよいですね。