防衛医科大学校 入学試験情報
防衛医科大学校
在学中
防衛医科大学校は一般の大学(文部科学省管轄)と違い、防衛省の組織の1つです。募集資格は高等学校卒業あるいはそれに相当する資格を持つもので、18歳以上21歳未満の者のみです。
入学後は一般の大学生と異なり、自衛官と同じ特別職国家公務員という、社会人としての身分を持ちます。
給与も当然あり、月額114,300円、賞与(ボーナス)6月12月の2回が支給されます。これに加えて食事、衣料(制服)、住居(学生舎)は支給又は貸与されますから、基本的に学業・生活面で費用はかかりません。
防衛医科大学校への入学は防衛省の機関に入校することなので、中退しても大学中退にならず他大学への編入資格が得られません。ただし、卒業した場合は一般の大学卒業と同じ資格を得ることができ、他大学への編入学資格などが生じます。
生活は1年生から6年生までの全員が防衛医科大学校の敷地内にある学生舎に住み込んで行います。部屋は2人1部屋で1年生と3年生、2年生と4年生がペアになるように割り振られるのが基本です。(5年生、6年生は学年同士)
ところで、この2人部屋ですが、実質的には個室です。中央を本棚やロッカー等で仕切り、天井付近が隣の部屋とつながっていますが、入り口も別々になっている(一部同じ入り口の部屋もある)ので、お互いの生活はそれほど干渉しません。防衛大学の4人1部屋とは全く異なります。
外出・外泊等
学年 | 土曜日 | 日曜日・祝日 | 平日 | 外泊 |
---|---|---|---|---|
1学年 | 08:00~23:00 | 08:00~23:00 | 原則、外出はできません。 (休日等の前日は17:00~23:00は外出できます。) |
夏休みまでは外泊が制限されます。 |
2学年 | 休日等の前日17:00~休日等最終日23:00 | |||
3学年 | ||||
4学年 | ||||
5学年 | 17:00~23:00(要申請) | |||
6学年 |
※1学年については、着校日から入学式までの間の休日等は外出・外泊が制限されます。
平日の生活は、規則正しい生活により時間が設定されているため、役所などへの提出物がある場合など、やむをえない場合を除いて許可されません。(17:00から20:00)休日前の17:00からで休日最終日の23:00までは外出でき、外泊も可能です。原則1年生から4年生に適用されます。(5年生以降は病院実習が始まる関係から)
1日の生活(5、6学年は異なる点があります)
06:30(月~金) | 起床 |
---|---|
06:45~07:35 | 朝食 |
08:00 | 国旗掲揚 |
08:00~08:20 | 朝礼 |
08:30 | 課業開始 |
11:50~12:40 | 昼食 |
17:00 | 課業終了 |
17:15 | 国旗降下(学友会活動) |
17:30~18:30 | 夕食(学友会活動) |
17:00~20:40 | 入浴(学友会活動) |
21:00~14:00 | 自習 |
24:00 | 消灯 |
カリキュラムの密度は高く、6:30の起床から24:00の消灯までしっかりと組まれています。休日・休暇は土日、年末年始6日、夏季休暇3日、年次休暇(有給休暇)20日と一般の大学生の夏休み・冬休みに比べると非常に短くなっています。夏と春に休暇を集中して取得するような処置がなされています。
自衛隊の組織らしく、カリキュラムに訓練の時間が入っていますが、6年間でわずかに507時間しかありません。その中の134時間は訓育という座学、170時間は部隊実習という部隊見学で、これに加えてスキー合宿、水泳合宿などがあり、いわゆる戦闘訓練に類するものはあまりありません。更に、4年生後半以降は、臨床実習(病院実習)となるため訓練はほとんど行われません。
では、戦争になったらどうするの?と思うかもしれませんが、戦闘部隊はその専門の隊員が当たりますし、仮に自分が最上位の階級になってしまう場面があったとしても、指揮権を専門の隊員に委譲することができるのです。
訓練科目
学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
訓練科目 | ||||||||
訓育 | 36 | 24 | 35 | 11 | 10 | 18 | 134 | |
基本教練 | 徒歩教練 | 33 | 4 | 8 | 45 | |||
体育一般 | 19 | 8 | 8 | 4 | 4 | 4 | 47 | |
水泳 | 24 | 32 | 56 | |||||
スキー | 39 | 39 | ||||||
教育法 | 16 | 16 | ||||||
部隊実習 | 20 | 56 | 54 | 24 | 16 | 170 | ||
計 | 132 | 163 | 121 | 39 | 14 | 38 | 507 |
平成25年度
留年については、厳しく同一理由による留年は1回しか認められません。つまり、学業不振で1回留年したら、2度とできないのです。ただし、学業不振で留年、退学する人は少なく、集団生活になじめない等の生活環境に起因する理由で退校する者が数パーセントいるそうです。
また、医師国家試験の合格率は高く、現役合格率は92%、浪人も含めると100%の合格率を誇っています。
ところで、名称に防衛がつく大学なので、防衛大学のように厳しい体育会系の生活を想像すると思いますが、実際は訓練も少なく、上下関係も防衛大学ほど厳しくありません。集団生活の息苦しさを感じることはあるかもしれませんが。
また、学校の特徴として上級生には下級生の指導や面倒をみる義務のようなものがあります。これは上級生になるほどリーダーシップを身に付けさせ、また、学年を超えた人間関係を構築させるための方法です。
卒業後
医科幹部候補生(陸・海・空曹長)
幹部候補生学校(6週間)
広い知識と技術を修得する
卒業後は、陸・海・空曹長に任官され、幹部候補生として陸上・海上・航空自衛隊の幹部候補生学校(福岡県久留米市、広島県江田島市、奈良県奈良市)に入校し、幹部自衛官として必要な知識及び技術の修得のための教育を受けます。
幹部自衛官
初任実務研修(2年間)
診療・医療環境を学ぶ
医師国家試験に合格し、かつ幹部候補生学校を卒業した者は、2等陸・海・空尉に昇任します。防衛医科大学校病院及び自衛隊中央病院などにおいて2年間の臨床研修を行い、総合臨床医としての研鑽を積んでもらいます。
部隊などに勤務(約2年間)
現場で医療の技術を培う
初任実務研修が修了すると、自衛隊の病院または部隊、医務室などに医官として勤務することになります。約2年間、部隊棟において勤務する間に、初級幹部自衛官としての教育が行われます。
専門研修(2年間/研修科目によっては最大4年間)
医学の専門分野の基礎を広く修得
2年間の部隊勤務後は、自身が選択した専門分野(内科学・外科学など)の研修科目を防衛医科大学校病院などで学びます。研修修了後は、ほとんどの者が認定(専門)医の資格を取得しています。
部隊などに勤務(1年以上)
活躍の場は世界規模
自衛隊の役割・活動の範囲が広がるにつれ、医官に求められる能力は拡大の一途を辿っています。それにつれ、医官の役割はますます重大なものになり、本校卒業生の活躍の場は、国内のみならず国際的にも広がっています。
医学研究科(4年間)
進歩・発展する医学・医療に対応
医学に関する高度の研究能力及び豊かな学識を修得することを目的としています。
修了後は大学評価・学位授与機構の行う学位論文審査に合格すれば、博士の学位が授与されます。
部隊勤務
病院勤務
卒業後、曹長という階級の自衛官に任官します。医師免許を取得すると、まず幹部候補生学校で約6週間の基本訓練を受け、2尉に昇進します。その後、約2年間の初任実務研修を自衛隊中央病院及び防衛医科大学校病院などで行います。これは厚生労働省が定める初期臨床研修に相当するものです。
ちなみに、医師国家試験に不合格になった人も幹部候補生学校に行きますが2尉にはならず曹長のまま、防衛医科大学校病院などで医学に詳しい自衛官として勤務し、業務と次年度の医師国家試験に向けた勉強を同時並行して進めることになります。(この期間も義務年限に加算されます。)
初任実務研修を終了後、約2年間は各地部隊や病院で自衛隊員の健康診断や自衛官採用時の身体検査業務に従事します。この間に幹部の初級の課程に約1カ月半程度入校します。陸上自衛隊は衛生学校、海上自衛隊は横須賀病院、航空自衛隊は岐阜病院と航空医学実験隊で教育が行われます。
部隊での勤務の基本は、週休2日で5日間勤務ですが、5日のうち2日は、総合臨床医としての能力を向上させるため自衛隊以外の病院で勤務します。その後、防衛医科大学校で専門研修を2年から3年間おこなって専門性を高めます。
この後、部隊や病院で勤務を続ける者、防衛医科大学校の医学研究科に入学し博士号を取得する者、若干名ではありますがアメリカや諸外国に留学するものや、各種医学関係の国際学会にも参加する者もいます。これらの期間はすべて9年間の義務年限に含まれます。医学研究科に入学する者は3人に1人の割合です。
自衛官としての出世コースは幹部学校指揮幕僚課程(陸上:CGS 海上・航空:CS)に入校することですが、医官がこのコースに入校することは稀です。医官の階級は、ポストの関係上一佐以上に昇進する人は、各年5名前後で、ほとんどの医官は二佐で定年時に一佐としてキャリアを終了します。
さて、防衛医科大学校卒業の医師は、部隊配備がある分、一般の大学卒業の医師より専門性を深める機会が少なくなってしまいます。では、防衛医科大学校卒業の医師が一般大学を卒業した医師と比べて劣るのか。というとそういうわけではありません。自衛隊の医官には他の大学にない特徴ある医療技術を身に付けるチャンスがあるのです。
例えば航空医学や潜水医学などです。航空機に搭乗しているときに生じるGや気圧変化、潜水中に加わる水圧による特有の疾病・障害についての研究・臨床です。これは国内では自衛隊しか研究をしていないそうです。
また、戦場や災害地でさまざまな外傷や疾病を負った自衛官や被災者の治療を行い、あるいは衛生環境を保全することが本来の任務のため、非常に広範囲知識を取得することができます。
医官の活動場所は、周囲から十分な支援を受けることができない可能性も高いことから内科も外科も一通りの治療行為ができなければいけません。そのため、医官は1つの専門ばかりではなく幅広い技術を取得することもできます。また、周囲に対するリーダーシップも必要で、限られた資源の中でどのように医療をマネジメントしていくかを学ぶことができます。
こういった能力は総合臨床医や地域医療の現場で必要とされている能力ですから、民間に移ったとしてもこれらの分野で活躍することが見込めます。
ところで、自衛隊の医官は国際緊急援助隊のメンバーに指定されることが非常に多くあります。指定されると必要な訓練を実施し、その後通常の勤務を行いながら出動できるように対応します。自衛隊は被災地等での医療活動について日本で最も優れた装備と豊富な経験を持っています(何もないところにテントなどの機材を組み合わせて簡易的な病院を構築することができる、災害派遣の経験が豊富など)。
ですから、医療従事者として災害地などでの国際貢献をしたいと考えている人にとっては魅力的な職場だと言えますし、自衛隊にいる間にそういったノウハウを学んでおき、民間に移ったとしてもNPO活動などに従事しやすいと思います。
まとめますと、防衛医科大学校は『研究や臨床の世界最先端を目指す専門医』を志す人にはお勧めできない学校ですが、『国際貢献』、『地域医療』、『総合臨床医』、『自衛隊での勤務』、『潜水医学や航空医学など特殊な分野』、などに興味のある人にはお勧めできる進路といえます。また、他者のために働きたいという気持ちのある人にとっては、国家のために働くということで、大きな生きがいを感じられる選択肢です。
学生のサポート体制(担任みたいな人は居るのか?等)
1年生の学生に対し入学当初から学生個人の悩み等に対し助言を行う指導教官がいます。 指導教官の任務は、継続的に年数回の個人面談等を実施し、身上把握を行い必要に応じ助言を行うことです。
防医大の最大の魅力、売りは?
- 医学を通じて国を守ることに貢献
- 幅広い活躍フィールド(災害派遣、国際緊急援助活動)
- 医学を学ぶための充実した環境(学位、学生舎)
よくあるQ&A
- 1. 中退した場合、それまでにかかった費用を返還する必要があるか。
ありません ―
防衛医科大学校を卒業した時点から、任官義務が生じます。
従って、中退した場合、費用の償還は必要ありません。
ただし、中退した場合は単位が他大学で認められないため他大学への編入試験を受験することはできません。つまり大学中退ではなく、高校卒業の資格しかないということに注意が必要です。- 2. 償還金免除になった場合、税金がかかることはあるのか。
ありません ―
防衛医科大学校での授業料の返還が免除になる時に、その金額について税金がかかるという噂がありますが、税金は一切かかりません。
防衛医科大学校 大学情報
- TEL
- 04-2995-1211
- 住所
- 〒359-8513 埼玉県所沢市並木3丁目2番地
- URL
- http://www.ndmc.ac.jp/