子どもたちが「十分な知識と技能を身に付け、十分な思考力・ 判断力・表現力を磨き、主体性を持って多様な人々と協働することを通して、喜びと糧を得ていくことができるようにすること」(文部科学省答申『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた 高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』より)を目的とした大学入試改革が2020年度に行われます。(実施大学入学共通テストは2021年1月実施分より)これに伴い、現行のセンター試験は大学入学共通テストへと変わります。
大学入学共通テストは、センター試験で採用されている全問マークシート形式では十分に測ることができないとされている思考力や判断力、表現力を問うことができるようにするためのものです。
この試験を受験するのは現在中学3年生以下の子どもたちですから、小学生、中学生の保護者の方の中には、センター試験がなくなるので特別な対策がいるのではないかと不安に思われている方もいらっしゃるようです。

そこで、これまで行われていたセンター試験と大学入学共通テストについて比較したうえで、大学入学共通テストで測ることができる力とは何か、そして「大学入学共通テスト」に向けてどのような対策をすればいいのかということについて、見ていきたいと思います。

センター試験で測れる力

国語の問題ですから、読解力が測れることは大前提ですが、マークシート形式では、ある力については記述試験問題よりも正確に見ることができます。それは、迅速かつ正確な情報収集能力と情報処理能力です。素早く正確に、必要な情報を集め、手際よく処理する力です。本文の中から解答の根拠となる情報を収集し(情報収集能力)、必要な情報と不要な情報を見分ける力(情報処理能力)が必要になります。

そして、センター試験の問題は大量にあり、解答欄には同じ大きさのマーク欄が大量に並んでいます。正しい解答欄に欄からはみ出すことなく素早く欄を塗りつぶさなければなりません。ここで正確さと迅速さも必要となります。

センター試験は、限られた試験の中でこれらの力を測るにはとても優れた試験なのです。

センター試験では測れない力

一方、センター試験では測ることができない力があります。それが、記述力と表現力です。記述力とは、適切な言葉を選び、正しい日本語(正しい日本語文法)で答える力です。

表現力とは、質問の意図に合わせ、自分の考えを明確かつ論理的に伝える力のことです。これらの力は、大学入学後に必要となる力ですが、センター試験ではこの力を測ることはできません。

また、センター試験の読解問題では、本文の中から解答の根拠となる情報を収集し(情報収集能力)、それらを統合して選択肢の内容を正確に理解し(思考力)、設問文と選択肢を正確に認識して最適解を選ぶ(判断力)ことが必要です。

しかし、すべて選択肢であるため、解答の根拠があいまいでも消去法で正解できてしまうことがあり、限界があります。そこで、大学入学段階で求められる「思考力・判断力・表現力」を中心に評価することができるようにするために、大学入学共通テストで記述式が採用されるようになった理由だと考えられます。