産業医科大学 小論文 過去問解析
過去三年間の出題内容
2018年 | 大問1 大問2 大問3 大問4 |
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2017年 | 大問1 大問2 |
2016年 | 大問1 大問2 |
分析
2017年までは英文と日本文の課題文型、大問2問構成で出題されていたが、2018年は大きく変わった。大問は4問構成になり、課題文型の問題が2問、資料型の問題が1問、またテーマ型の問題が1問出題された。大問1の外山滋比古は大学入試現代文・小論文で頻出の著者である。模試で目にしたことがある受験生も多いだろう。『思考の整理学』は1983年に刊行されたもので、1986年に文庫化され「2017年東大生協文庫売上」1位を獲得して話題になったものである。文章内容は明快でわかりやすい。「グライダー人間」と「飛行機人間」の対比を正確に理解できれば、問1も問2もそれほど難しいものではない。大問2の問1・問2はともに読解問題と捉えることができる。大問3は時計と二人の人物の姿勢に着目して考える。設定は自由なので、状況が明確にわかる文章を作成する。大問4は2015年の慶應義塾大学の問題(4歳の甥にイルカは魚ではなく哺乳類だということを教える言葉を書くというもの)と似ている。自分が理解できている事柄を何も知らない相手に正確に伝わるように説明する力が求められている。これは、医師になったときに患者に病状や治療方針などを説明する際に求められる力と言えるだろう。読解力、思考力、課題発見力、観察力、想像力、論理的でわかりやすい文章を書く力、コミュニケーション能力などが求められている。
2017年以前は英文と日本文の課題文型の出題となっており、ともに日本語で答えるものとなっている。2017年はこれまでより英文・日本文ともに設問数が減少し、日本文の問題では600字で自分の考えをまとめる問題のみ出題された。
2016年の英文の問題では、主張の根拠を説明する問題が2問出題された。問3では、具体例を挙げて理由を説明する問題が出題されている。
課題文のテーマは、多岐にわたっており、医療分野からの出題もある。英文は注釈が多いので医学部受験レベルの力があれば十分理解できるものである。日本文は主張が明快な文章が多い。論理的でわかりやすい文章を書く力や、英文を正確に理解し、適切な日本語でまとめる力も求められる。直訳のような不自然な日本語ではなく、自然な日本語でまとめられることが必要である。
出題テーマの幅広さや出題されている問題の性質は、産業医を産業の発展と活性化を支える立場にあるとし、深く広い視野で物事を考えることのできる人間性豊かな産業医の養成を目指すという大学理念の反映でもあるだろう。
対策
日本文では、本文内容を問う200字程度の記述問題があるので、現代文の問題集を用いて字数の多い記述問題を解いてみるのがよいだろう。自分の考えを述べる問題については、400字~600字を想定して練習しよう。400字程度でまとめる場合は、不要な内容と必要な内容を正確に見極める必要がある。構成メモはその選別に役立つので、まずは構成メモを作る練習から始める。500字~600字程度の文章作成では、小論文の基本の型である序論・本論・結論を特に意識して構成メモを作成し、それをもとに文章を完成させていこう。
どんなテーマにも、どんな出題型式にも対応できるようにすることが必要である。そのためには、日頃から話題となっているものを中心に様々な分野の情報に関心を払い、自分はどう考えるかということを意識するようにする。新聞やニュース、もしくは、重大ニュースをまとめた書籍や時事ニュース一覧などを定期的に確認し、今自分が生活している社会で生じている問題や話題になっている事柄を押さえながら、自分とどう関係しているか、自分には何ができるのかといったことを考えるようにし、課題発見力や問題解決力を鍛えておくようにする。
英文の記述解答は字数指定がない問題とある問題が出題されるが、指定がない問題のほうが多い。そのため、解答欄の大きさから字数を予測し、解答に必要な要素を抽出できるようにする練習をしておかないと、大きく減点されかねない。一定量の英文を要約したり、それについて自分の考えをまとめたりする練習をするとよいだろう。英語長文読解の問題集や英検二級程度のリーディング問題集、英文のニュースなどを活用するとよいだろう。
医療分野からの出題があることを踏まえて医療用語の意味と内容を押さえ、それぞれの医療用語について自分の考えを明らかにしておくとともに、問題点についても考えるようにしておくとよい。これは医療テーマへの対策となるだけでなく、思考力を鍛えることにもなり役に立つ。たとえば、「医療崩壊」であるなら、その原因と対策や医師の立場でできることなどを考えてみるとよい。