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自治医科大学 小論文 過去問解析

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過去三年間の出題内容

2018年 出題文1
曾野綾子の『人生の収穫』を読み、筆者の主張を短くまとめ、賛成か反対かを論じる。(400~500字)
出題文2
杉浦敏之『死ねない老人』を読み、「延命のみの治療は止めた方がいいだろう」という主旨に対して反論を展開する。(400~500字)
2017年 出題文1
寺田寅彦の「科学論文」に対する文章(『寺田寅彦随筆集 第四巻 小宮豊隆編』より)を読み、①内容を短くまとめ、②自分の賛否を記述し、③「科学論文」以外の文章、すなわち散文・随筆・紀行文などのような「文章全般」に対する自分の考えを述べる。(400~500字)
出題文2
松尾豊『人工知能は人間を超えるか~ディープラーニングの先にあるもの~』を読み、人工知能の発達により医師の役割は変わるか変わらないか、自分の考えを述べる。(400~500字)
2016年 出題文1
吉村昭『その人の想い出』を読み、「文学者」の「死」は一般の人とは異なるという考えに同意するかしないかを述べたうえで、「医者」の「死」について述べる。(400~500字)
出題文2
藤原てい『流れる星は生きている』を読み、文章中に出てくる「血清を注射してくれた医師」が自分だったとして、その日の日記を書く。(400~500字)

分析

課題文型での出題である。医療系の文章からの出題が多く、患者やその家族の思い、医師の思いや医師の在り方などが出題されやすい。2018年の出題文1の著者、曾野綾子(「曽野」の表記もある)は他大学の医学部課題文型の小論文や大学入試現代文でも頻出である。今回引用されたものは、ローマ教皇ヨハネパウロ二世が故郷に帰り、父母の墓を訪れた際、墓の周囲には多くの人がおり、子供たちが慰霊の歌を歌っているニュースを見た筆者の主張をまとめたうえで賛成か反対かを論じるものであった。筆者は子供たちが慰霊の歌を歌ったことを「残酷な計画」と表現し、これが教皇から親子の会話を奪ったと筆者は述べている。「死、親子の思いは、個人のものに還してあげたかった」という表現や筆者の友人の「子供たちが両親のために歌を歌ってくれた優しさを教皇もお喜びになった」だろうという言葉などを手掛かりにして、文章全体から読み取れる筆者の思いに着目し、自分はどう考えるかをまとめればよい。賛成であれ、反対であれ、自身の主張の根拠を明確にしてまとめる。出題文2では主旨に対する反論を述べさせるものが出題された。延命だけが目的の治療に反対する筆者への反論を述べなければならない。単なる感情論とならないようにする必要がある。2017年は2014年以来3年ぶりに一般的な小論文の形で出題された。出題される文章のレベルは決して難解なものではなく、問いも明確であり、論じやすいものであるが、日記や手紙、語りかけの言葉を書かせる場合があるので注意が必要である。2016年の出題文1は吉村昭『その人の想い出』が出題された。文学者の死には肉体が消滅しても作品が遺る可能性があるという点で、一般の人にはない特権があると筆者は述べている。この点について、「文学者」の「死」は一般の人とは異なるという考えに同意するかしないかを述べたうえで、「医者」の「死」について述べるというものであった。また、出題文2は藤原てい『流れる星は生きている』が出題され、他院で1000円と言われたジフテリアの血清を、「私」に所持金がないのを知りながら打ってくれたという話を読み、自分がその医師だったとしてその日の日記を書くというものであった。

自治医科大学医学部では、「医の倫理に徹し、医師としてのプロフェッショナリズムと豊かな人間性をもった人格の形成」「生涯にわたり精励する医師を育てる」「社会に貢献する気概を持った医師を育てる」というミッションを掲げている。出題される課題文や問いは医療との関わりのあるものが頻出で、医学・医療とどのように向き合うかなど、将来医師になる者としてふさわしい倫理観を持っているかを見ていると思われる問題が多いのは、そのためであろう。

対策

90分で二つの課題文を読み、論じなければならないので時間配分には十分注意しなければならない。

指定字数が400字~500字と決して多くはないわりには指定が多いため、伝えたいことを明確にしたうえで指定内容をしっかりと押さえて自分の考えを簡潔にまとめ上げる練習が必要となる。指定字数が少ないと書きやすいと勘違いしやすいが、限られた字数の中で自分の考えを伝えるには、文章構成力のほかに豊富な語彙力の養成が不可欠である。現代文の重要語句を覚えることやわからない言葉については、意味を調べその都度覚えるようにしよう。

過去三年間の課題文と設問は、いずれも患者と関わる際に必要となるコミュニケーション力や共感力、患者の病気だけでなく背景にまで意識を向けることができるかといったことも見ていることは明らかである。これらの力は現在医療現場で重視されている力であることも踏まえると、今後、2016年の日記を書く形式や2015年で出題された絵の説明やその中に描かれている人物の語りかけの言葉を書くという形式での出題が復活する可能性もあると考えておくほうがよいだろう。その対策として、慶應義塾大学医学部や順天堂大学医学部の過去問にあたっておくとよい。

また、自分が医師になったときにどのような医師でありたいか、自分が患者の立場になったときにどのような医師に治療されたいかなど、自分が求める医師の姿を明確にしておくとよい。人としていかに生きるか、どうあるべきかといった点に意識を向け、自分の道徳観・倫理観を構築しておくことが必要である。現役医師の記事などに目を通すことも役に立つ。

また、賛成か反対かを選ぶのではなく、「反対」と指定して自分の考えを述べなければならないという出題もあるので、日頃から物事を多角的に考え、それぞれの視点についてその根拠や対立する視点を考えるようにしておくとよい。「なぜ」と問うことを習慣づけたり、自分とは異なる見解を想定してそれに反論したりする練習を行うことが役に立つ。

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