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慶應義塾大学 小論文 過去問解析

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過去三年間の出題内容

2018年 1.インターネット注文した「がんによく効く湧き水」だけを摂っている末期がんの患者の担当になった研修医として、どのような言葉をかけるか、その言葉を400字以内で書く。
2.自分の考える人生の意味について、600字以内で書く。
2017年 お金がなくて医療費が払えないと言う患者がいる。あなたはどんな声をかけるか。また、お金がない人に医療を提供することについてどう思うか、自分の考えを700字程度で書く。
2016年 医学部卒業生である自分に知人から赤ちゃんポストを利用したことを打ち明けられた。
問1:ポストが閉まった時の知人の気持ちを、知人の言葉で200字以内で書く。
問2:自分は知人にどんな言葉をかけるかを600字以内で書く。

分析

テーマ型での出題である。やや長めのテーマ型であるが、特定の対象に対して語る言葉や自分自身の体験を踏まえたうえで書くといった指定があるため、書く内容は絞りやすい。 2018年の1問目はがんに効く水という、いわゆるニセ医学に頼る末期がん患者にかける言葉を書くというものが出題された。がん患者の増加とともに様々な民間医療、エビデンスのない治療が問題となっている。医師としてどのように対応すべきかを考えさせるものであるが、このがん患者が末期であるということがカギになっていると言える。2問目は自分の考える人生の意味ついてという短いテーマでの出題であった。ここ数年の傾向と異なったものとなっている。

2017年のテーマは、現在問題となっている医療と医療費支払いに関するものである。お金を払えない人に対して医療提供をすべきかいなか、そう考える根拠は何かを考えなければならない。厚生労働省は医師の応召義務に関する規定の中で、医療費が不払いであっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできないと規定している。病院経営の視点、倫理観とのバランスが問われる問題である。

2016年も話題となった「赤ちゃんポスト」についての問題である。倫理観やコミュニケーション能力、立場の異なる人物に対する共感・理解をしようという姿勢の有無などが問われていると言えるだろう。相手の立場に理解を示したうえで、どのように対応するかを考える力が要求される。 物事を多面的に見ることができているか、自分が生活している社会に関心を持つことができているか、人とどのような関わり方をしているか、これまでどのような考えを持って生きてきたのかといったことが問われる出題となっている。

医療現場では、患者や医療従事者とのコミュニケーション、インフォームド・コンセントやナラティブ・ベイスト・メディスンの実践なども必要である。国際化が進み多様性が重視される現代社会において、医師には高度な対応力が要求される。過去三年間の問題傾向から、その素養があるかどうかを見ていると言えるだろう。

対策

簡潔にまとめる練習から始め、一定量の文章を書きあげる練習をしておくのがよい。600字程度の指定を想定して練習しておくのがよいだろう。構成メモをもとに、序論・本論・結論という流れを意識し、論理展開の明快な文章を書く練習をしておくべきである。

話し言葉で書く問題が出題された場合は、正しい話し言葉を使えるようにしておこう。たとえば、副詞の「全部」は話し言葉であり、書き言葉に直すと「すべて」である。話し言葉と書き言葉の使い分けを間違えるわけがないと思っている人も多いかもしれないが、小論文の添削をしていると高校3年生でもこの区別ができていない生徒は一定数存在する。また、「食べれる(→食べられる)」などの「ら抜き言葉」、「書かさせる(→書かせる)」などの「さ入れ言葉」、「言ってる(→言っている)」などの「い抜き言葉」などにも注意が必要である。

過去三年間のテーマに共通しているのは、現在話題になっていたり問題となっていたりするものである。また、2018年のテーマは、今後、実際に研修医・医師になったときに直面することかもしれない。このようなテーマについては、現役の医師の見解が役に立つ。たとえば、読売新聞で連載されている「ヨミドクター」のコラムや週刊朝日に掲載されている京都大学医学部特定准教授で皮膚科専門医の大塚篤司医師の記事(AERA.dotのサイトから無料で読むことができるし、yahooニュースなどでも取り上げられている)などは参考になるだろう。特に大塚医師の「『ニセ医学』を信じてしまった患者を救えない、“正論”医療の現実」(2019年1月11日)という記事は参考になる。その記事には、医者の対応に傷つき医療不信になったためにニセ医学に走ってしまった患者がいること、患者をニセ医学に走らせた原因が医者にある場合があること、大塚医師自身が若い頃に「トンデモ医療に走ってしまう患者さんの気持ちも考えず、正論を振りかざして」いたことについて触れ、自分がもし不治の病にかかったら、良い治療が存在しないか世界中を探し回り、それでも見つからなかったら、最後は「私の心もみてくれる優しい先生を探し」「決して、正しい治療をおこなってくれるだけの先生は選ばないと思います」とある。こうした現役医師の方々の記事はネットなどでも読めるので目を通しておくとよいだろう。そして、その考えや見解が正しいか正しくないかを考えるのではなく、「こういう意見がある。では、自分はどう考えるだろうか」ということを考えるようにするとよい。

もちろん、社会に対して関心を持ち、話題となっている事柄や社会的な問題についても新聞やニュースから情報を得ておくようにする。時間がない場合は、重大ニュースをまとめた書籍や時事ニュース一覧などを定期的に確認するということでもよいだろう。ニュースに目を通して、今自分が生活している社会で生じている問題は何か、どのようなことが話題となっているかを押さえながら、それらの問題や話題が自分とどう関係しているのか、自分にどのような影響を及ぼすのかについて考える。当事者意識を持つことが重要である。

自分が今まで経験したことのない経験をしている人物や年齢、性別、国籍、能力などが異なる人物を理解し、相手の納得を得るためには、相手を受け入れ、共感を示したうえで、自分の考えを伝え練習も必要である。

相手の同意や共感を得ながら納得させる方向で物事を考えるようにするとともに、自分自身の体験や見聞などを根拠としてまとめる練習を行おう。日頃から他者理解という視点を意識して会話をしたり、他者理解や共感力をテーマとした文章を読んだりすることも有益である。

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