東海大学 小論文 過去問解析
過去三年間の出題内容
2018年 | 1日目
第1回「働くパパママ川柳」大賞作品の「カバンには パソコンスマホ 紙おむつ」からは、仕事と育児の慌ただしさが伝わってくるが、自分の現在の状況や将来の意気込みが伝わるような1句を詠み、その心境を500字以内で述べる。 |
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2日目
八木重吉の詩「おおぞらのこころ」(「わたしよ わたしよ/白鳥となり/らんらんと 透きとおって/おおぞらを かけり/おおぞらの うるわしいこころに ながれよう」)を読み、感じたことを500字以内で述べる。 |
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2017年 | 1日目
医療や生活に人工知能(AI)が活用される未来が近づいており、うまく使いこなせば様々な社会問題を解決に導くこともありうるという文章を読んで、AIをどのように役立てようと考えるか、それとも恐怖心からAIの活用を躊躇するか、自分の考えを500字以内で具体的に述べる。 |
2日目
小澤征爾・村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』を読み、自分の好きな曲について、500字以内で自由に述べる。 |
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2016年 | 中村真一郎『雲のゆき来』の中で述べられている「世界人としてのあり方」について、医師としての世界人とはどのような人か、自分の考えを500字以内で自由に述べる。 |
2日目
谷川俊太郎著・パウル・クレー絵『クレーの絵本』にある「黄金の魚」という詩と絵から、自分が感じたことを500字以内で自由に述べる。 |
分析
過去3年間の出題は基本的には課題文型と考えてよいだろう。短めの課題文が提示される場合が多いが、それ以前には写真や絵などの資料が提示される場合があるので今後復活する可能性もあるかもしれない。基本的に自由に述べる形式のものであり、提示される課題文や資料は医療と関わりのある場合もあれば、医療とは関係がないものもある。
2018年の1日目は1句を詠んだうえで自分の心境を説明するというあまり目にすることのない形式での出題であった。また、2日目は八木重吉の詩を読んで感じたことを述べるもので、2日間とも韻文がからむ出題となっている。2016年の2日目でも詩が出題されたので、短歌・俳句・川柳・詩といった韻文には注意が必要であろう。
2017年は人工知能(AI)の活用についてどう考えるかが問われたが、AIを使うことで生じるメリットと危険性を考慮し、バランスの取れた見方ができるかどうかがポイントとなるであろう。
2016年の「医師としての世界人」というテーマは、国際化社会における医師の役割、医療におけるグローバル人材など今注目されている点に着目する必要がある。
東海大学は小論文試験について、現代社会の抱える問題・テーマが出題されやすいことを公表しているが、過去3年間の出題テーマは近年話題となっている事柄やニュース性のあるものが多くなっている。今後もこの傾向は続くと考えておくのがよいだろう。
対策
提示されるものが多岐にわたるため、様々なパターンを想定した練習が必要である。解答時間が例年30分と短いので、着目すべき点を素早く見抜いてテーマ設定を行う練習を行おう。また、500字という短めの指定であるので、不要な情報と必要な情報の取捨選択を適切に行い、自分の考えを明確かつ簡潔に文章化する練習を行おう。序論で結論を提示する頭括型で書くとまとめやすくなるだろう。
基本的には自分の考えを「自由に述べる」形式ではあるが、2017年のように「AIをどのように役立てようと考えるか、それとも恐怖心からAIの活用を躊躇するか」について考えを述べるという指定や、2015年には「具体例や経験を交えて」という指定が入ったこともあるので、求められている事柄を落とすことなくまとめるように意識しよう。そのためには、課題文型ではあるが、同程度の字数で指定のある自治医科大学の出題文1などを用いて練習してみるのもよい。
現代の医療の問題点、話題となっている医療問題、医療と関わる社会問題なども押さえ、提示された課題文や資料と結びつけて考えられるようにしておくと、テーマ設定がしやすくなる。また、将来医師になる者の資質の一つである、観察力、大局的に物事を捉える力、課題発見力などが問われているということを念頭に置いて対策をする。細部のみ大局のみに捉われず、物事を総合的に捉えて考える力を鍛えるようにするとよい。
東海大学は小論文試験で求めている力と対策について、具体的な現実問題・課題と関連させて考え、まとめ上げる力が必要であると公表し、「さまざまな課題(例えば現代の風潮、世相や最近のトピックスなど)について、広く関心を持」つことを勧めている。また、課題に対する理解力、文章構成力、自分の考えを表現する表現力とともに表記面でのチェックも行うと述べている。したがって、これらの点は必ず押さえておくべきなのは言うまでもない。理解しやすい文章を書くために、主語・述語の対応や指示語・接続語・修飾語・読点の適切な使い方などを確認することも重要となる。一文の字数は最大でも70字程度にすることで読みやすい文にすることができる。また、書き言葉と話し言葉を正しく使い分けられるようにしておこう。「全部」「いちばん」「全然」は話し言葉だが、小論文では書き言葉に直す必要がある。また、「食べれる(→食べられる)」などの「ら抜き言葉」、「書かさせる(→書かせる)」などの「さ入れ言葉」、「言ってる(→言っている)」などの「い抜き言葉」などを使っていないかということにも注意しよう。