山添の英語学習法
第1回 英語力補完計画~私大医学部編①~その1
はじめまして!山添です。
今回から5回にわたり「英語力補完計画~私大医学部編~」と題して、私大医学部の英語問題攻略法についてお話していきます。
私大医学部の英語というと「難しい」とか「特殊だ」という印象を持っているかもしれません。はじめに、そのことから検証してみましょう。
【1】私大医学部英語の〈特殊性〉
「医学部の英語」というと、医学に関連したテーマの英文がよく出題される、と思うのではないでしょうか。
2014年度の私大医学部の入試問題のうち、いま私の手元に資料のある21の大学の長文読解問題のテーマについて分類したところ、読解問題65問のうち医療・健康に関連した内容の英文は23問で、それ以外のテーマは42問でした。ということは、この時点では医学に関連したテーマはおよそ3分の1で、必ずしも「医学部ならば医学に関連したテーマの英文が出る」とは言い切れません(※ただし、これは大学にもよります。たとえば東邦大学では読解問題5問中3問が医療・健康に関連した内容の英文で、日本大学医学部の場合、読解問題4問中4問とも医療・健康に関連した英文が出題されていますから、自分が受験する大学に応じた対策が必要だといえます)。
しかしながら〈医療・健康に関連した英文が出題される=医学についての(高度な)専門知識を持っていなければならない〉というわけではありません。そもそも大学の入試問題の英文は、大学に入ってから英語で専門書を読むための基礎知識(文法・語法・語彙・内容理解力)をもっているかどうかを測るためのものであって、医学に関する専門知識は大学に入ってから習得することですから「医学部の入試英語を読めるようになるために、英語で医学の専門書を読もう」などと思う必要はありません(ついでに言えば、大学入試問題は文部科学省の学習指導要領の範囲を大きく逸脱してはならないことになっています。その点からも、あまりにも高度な専門知識を必要とする英文を出題するわけにはいかないのです)。
もちろん、医療系のテーマが出題された場合、内容を理解するためにはそれ相応の背景知識も必要になります。しかし、それ以前に、英文を文法的に正しく読んだり、高校までに学習する語彙の知識を蓄えたりするといった〈普遍的な基礎力〉を優先的に身につけねばなりません。
つまり、
- ①読解問題に関していえば、医学部の英語が必ずしも〈特殊〉とは言い難い。
- ②医学系のテーマを扱った〈特殊〉なものも中にはあるが、その対策以前に〈普遍的な英語力〉を養う必要がある。
ということを心掛けてください。
【2】私大医学部英語(読解問題)の〈難度〉
医学部に限らず、英語の問題の「難度」を客観的に測定することは難しいのですが、読解問題に関しては一つの目安として「リーダビリティ(readability)」という指標を用いて難易度を表すことができます。
ここでは http://wordcounttools.com/ で用いられている Dale-Chall Score に準拠した数値で表したいと思います(Dale-Chall Scoreについては http://wordcounttools.com/dale_chall_readability_level.html を参照)。
Score | Readability level |
---|---|
4.9 or lower | easily understood by an average 4th-grade student or lower |
5.0-5.9 | easily understood by an average 5th or 6th-grade student |
6.0-6.9 | easily understood by an average 7th or 8th-grade student |
7.0-7.9 | easily understood by an average 9th or 10th-grade student |
8.0-8.9 | easily understood by an average 11th or 12th-grade student |
9.0-9.9 | easily understood by an average 13th to 15th-grade (college) student |
10.0 or higher | easily understood by an average college graduate |
( http://wordcounttools.com/dale_chall_readability_level.html )
※日本の学年とは若干異なりますが、12thが高校3年生に相当すると考えてください。
たとえば、2014年度慶應義塾大学医学部の英文を例にあげてみましょう。
- 〈2014年度慶應義塾大学医学部〉
- 第1問 9.7(13-15th):大学教養課程
- 第2問 9.7(13-15th):大学教養課程
- 第3問 10.5(graduate):大学卒
この数値だけを見ると「ずいぶん難しいなぁ」という印象を受けるかもしれませんが、2015年度のセンター試験第6問の長文を入力してみると、次のような結果になりました。
- 〈2015年度大学入試センター試験〉
- 第6問 10(13-15th)
「あれ?ほぼ同じくらい?」
2014年度慶應義塾大学医学部の場合、医学用語などを含まない一般的なテーマの英文であったということもありますが、実のところ、リーダビリティに関していえばセンター試験の英文とあまり大差がなかったのです(勿論、これはあくまでも英文の「読みやすさ」だけであり、他のリーダビリティソフトを使えば結果が変わる可能性もあります。また、設問によっても難易度が変わってくるので、一概に「センター試験と同じ難易度」は言えませんが)。
確かに、大学によっては非常に難解な英文を出題するところもあるかもしれませんし、高等学校の教科書や市販の単語集のレベルをはるかに超える難度の語彙の知識を問うような問題が出題されることもあります。しかし、高等学校で学んだ基礎事項を確認する大学入試センター試験に近いリーダビリティをもつ英文も出題されている以上、いちがいに「医学部の英文は難しい」と恐れたり構えたりする必要はありません。
大切なことは、【1】で述べたように、どのような英文が出題されても合格点をとるために必要な〈普遍的な英文読解力〉を構築することなのです。
それでは「普遍的な英文読解力」を構築するためには何が必要なのでしょうか。次回から、具体的に説明していきたいと思います。