医学部受験を決めたら私立・国公立大学に入ろう!ドットコム

国立大学42校、公立大学8校、私立大学30校、防衛医科大学校の医学部受験の入試データと攻略のための戦術、予備校講師による医学部受験の勉強法アドバイス、
医学部合格体験記、海外大学医学部入試情報など、医学部合格に必要なすべての情報を掲載

山添の英語学習法
第1回 英語力補完計画~私大医学部編①~その3

Twitter Facebook Google+ LINE

今回は、少し変わった(?)単語集を1冊、紹介したいと思います。

▼『JACET 8000』(桐原書店)

これは英語における「頻度順」に単語を配列した単語集で、例文はほとんど掲載されていませんから「覚える」のにはあまり適していないかもしれませんが、自分が調べた単語が英語学習の中でどれくらいの重要度(高頻度)であるのかが数値でわかるようになっているので便利な単語集です。レベルも、中学英語から社会人レベルまで網羅されているので、自分がどのあたりでつまづいたのかもわかります。本書の目安では、センター試験が「レベル3,000」、国公立二次・私大が「レベル4,000」、難関国公立二次・私大が「レベル5,000」となっていますから、医学部の場合、まずこの5,000レベルのクリアが必須と言えるでしょう。

なお、医療に関連した語彙を覚えるには、次の本が便利です。

  • ▼『医歯薬系の英単語』(教学社)
  • ▼『私立医大の英語』(教学社)
  • ▼『国公立大 医学部の英語』(教学社)

最後に、単語の暗記に限らず、「ものを覚えること」について少しお話ししておきましょう。

そもそも、人間の記憶には、短期記憶(short term memory)*1と長期記憶(long term memory)*2があります。より正確に言えば、短期記憶の前段階として、即時記憶(immediate memory)*3もあります。

たとえば、焼肉が食べたくなり、近所の焼肉屋が開いているかどうか電話で確認するために電話帳で調べるとしましょう。この時、情報は即時記憶として蓄えられます。しかし、焼肉屋に電話を入れて予約したら、もうその番号は忘れてしまうはずです。つまり、短期記憶の貯蔵庫にさえストックされていないことになるのです。ところが、その番号が印象的なものだったり(たとえば、086-XXX-8929[ヤクニク]といった語呂合わせになっているなど)、あるいはその店の番号を是非覚えておかねばならない理由があった場合は、その番号の情報が短期記憶の貯蔵庫(海馬)にストックされます(「短期」と言っても幅広く、数秒~1ヶ月、長いものだと2年近く留まるものもあります)。

  • *1 近時記憶(recent memory)とも言う。
  • *2 遠隔記憶(remote memory)とも言う。
  • *3 作業記憶(working memory)とも言う。

ところが、その情報へのアクセスを繰り返すことにより、ニューロンが強固に結びつき、長期記憶の貯蔵庫から抜け落ちることが防げるのです。つまり、「反復」が重要である、ということですね。

しかし、反復しなくても記憶に残ってしまうものがあることを、経験上、知っているはずです。たとえば、AKB 48のファンだったら、メンバーの顔と名前を楽に覚えられるはずですし、ジャニーズのタレントが好きな人はバックで踊っているジュニアの顔と名前(はたまた生年月日やら血液型)まで覚えてしまうはずです。

そう、「関心」のあることならば、人間、いちいち反復しなくてもわりと楽に頭に入ってしまうものなのです。

ぼくは中学1年の頃、数学の先生から円周率を小数点以下30桁まで教わったことがあります。

3.141592653589793238462643383279

この時は、「さんいっし[3.14] 異国に[1592]向こう[65] 産後厄無く[358979] 産児御社(みやしろ)に[3238462] 虫さんさん[6433] 闇に鳴く[83279]」という語呂合わせと一緒に教わりましたが、これが脳にこびりついて離れなくなり、いまだに覚えているのです(勿論、何の役にも立ちませんが…)。

また、浪人生の頃、予備校の先生が「世界で一番長い英単語」を教えてくれました。それは、

pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis

という単語です。意味は「(珪性)肺塵症[けいせいはいじんしょう]」。日本語にするとわずか漢字5文字です。これは医学用語で、「火山灰の微細なケイ酸塩の粉塵を吸い込むことによって引き起こされる肺の病気」のことですが、それをpneumono(肺)+ultra(とても)+micro(小さな)+scopic(目、見える)+silico(珪素)+volcano(火山)+coniosis(症)と説明したために長くなった単語です。

これも、先生が黒板に一度だけ書いたものを、発音しながらノートに一回書いただけで覚えてしまいました。つまり、「関心」のあることだったからですね。

上にも書いたように、人間の脳は非常に効率的・経済的にできていて、自分にとってどうでもいいことや関心のないことはすぐに忘れてしまうようです。だからこそ、「関心を持つこと」も何かを覚えるための必須条件と言えるでしょう。

とはいえ、何かを覚える時の受験生のやり方を見ていると、かなり非効率的な覚え方をしている、と感じられることもよくあります。ぼくは日ごろ、「暗記ものは見て覚えているだけではダメだ」「漢字の書き取りのように英単語を手で何度も書くのは時間のムダだ」「授業を聞いただけでは力にはならない」という話をよくします。

学校の中間試験や期末試験の前に、教科書やノートを見たり、教科書にマーカーを引いて覚えようとしている生徒さんをよく目にしますが、これはあくまでも「インプット」の作業に過ぎません。また、学校や予備校や塾で授業を聞いて、その場ではわかったつもりになっていても、いざ自分で問題を解きなおしてみたり、教わった範囲であるにもかかわらず新しい問題に直面すると問題が解けない、という経験をしたことがある人も多いはずです。これも、「インプット」しか行っていないからなのです。

漢字の書き取りのように英単語を何度も書いている人もいますが、これは、綴りが複雑な単語を覚えるには必要かもしれませんが、綴りが簡単な単語まで何度も書いて覚えようとすることにはあまり意味を感じません(英作文などで綴りを間違えないようにする必要はありますが)。ぼくはいつも授業(特に文法や語彙の授業)で、このように言っています。

「勉強で重要なことは、〈理解⇔暗記⇔確認〉を確実に行うことだ。」

まず、授業で「理解」し、重要項目や単語や熟語を「暗記」したら、必ずそれを問題集などで「確認」することが必要なのです。授業を聞いただけでわかった「つもり」になってしまうことが一番恐ろしいことです。この「確認」という作業を怠ってはならないのです。

特に、大学入試では、見たことが無い未知の問題が出題されます。授業中に扱った問題や参考書・問題集で学んだ問題だけが完璧に出来るようになってもそれだけでは不十分であり、大切なことは、それまで学んだことを「使って」、未知の問題を自力で解けるようになることなのです。

そのためにぼくはいつも、「〈確認〉のために、授業で学んだ単元について、問題集を最低3冊分は解くこと」という指示を出しています。あたりまえのことではあるのですが、この「確認」を怠っている人がかなり多いのです。

〈理解⇔暗記⇔確認〉というプロセスを「インプット」と「アウトプット」という言葉で置き換えるとすると、

[1] インプット…理解・暗記
[2] アウトプット…確認

と言えます。

実はこの「アウトプットの重要性」について脳科学の分野から論じた興味深い記事 があります。これは、東京大学大学院の池谷裕二先生による解説記事ですが、これを読んだ時に「ああ、やっぱりそうか!」と納得しました。

以下、その記事から引用した文章です。

ワシントン大学の学生を多数集めて、スワヒリ語40個を暗記する試験を行う。adahama=名誉、farasi=馬、sumu=毒…といった具合に単語のペアを5秒ずつ提示して次々に覚えさせる。しかし、名門大学の学生とはいえ、40個を一回で覚えることはほぼ不可能である。そこで何度も繰り返して覚えてもらうのだが、この時、学生たちを4つのグループに分けて学習してもらった。

1つ目のグループには40個を通しで学習させ、その後に40個すべてについて確認テストする。この学習とテストの組み合わせを、完璧に覚えるまで何度も繰り返す。2つ目のグループは、確認テストで思い出せなかった単語だけを選んで学習させる。ただし、確認テストでは毎回40個すべてを試験する。そして、テストで満点が取れるまで学習と試験を繰り返す。

3つ目のグループはこの逆のパターンだ。覚えていない単語があったら、初めから40個すべてを学習してもらう。そして、先ほど覚えていなかった単語だけを確認テストする。そして、満点が取れるまで学習と試験を繰り返す。

最後のグループは、学校の授業でしばしば使われるパターンである。確認テストで思い出せなかった単語だけを学習して、再確認テストでも先ほど覚えていなかったものだけを試験する。そして、再試験すべき単語がなくなるまで学習と試験を繰り返す。

▼これを整理すると次のようになります。

  • Aグループ →40個全て学習+40個全て再テスト
  • Bグループ →間違えた単語のみ学習+40個全て再テスト
  • Cグループ →40個全て学習+間違えた単語のみ再テスト
  • Dグループ →間違えた単語のみ学習+間違えた単語のみ再テスト

▼問題は、1週間後に再テストをしたときにどのような差が現れたか、ということです。

面白いことに、この4つのグループには習得の速さには差はなかった。実際、5回も学習と試験を繰り返すと、全員が40個すべてを覚えることができた。そこでカーピック博士は、1週間後に再テストを行うことにした。さて、成績はどうだったか。グループ1と2は約80点と好成績であったのに対し、グループ3と4はともに約35点しか取れなかった。

▼つまり、インプットの方法に関係なく、「40個全ての再テスト」を繰り返した学生の方が成績が良かったのです。

私たちの脳は、情報を何度も入れ込む(学習する)よりも、その情報を何度も使ってみる(想起する)ことで、長期間安定して情報を保存することができるのだ。

言うなればこれは、参考書を繰り返し丁寧に読むより、問題集を繰り返しやるほうが、効果的な学習が期待できるというわけだ。

そう、単語集や熟語集を漫然と眺めていても、「覚えたつもり」になってしまうだけなのです。大切なことは、「本当に覚えているかどうか」を確認することにほかなりません。

授業で理解したことも、それを本当にマスターしているかどうか、自分の力で問題が解けるようになったかを「確認する」プロセスがなければすべて水の泡になります。

「インプットよりもアウトプットを」というのは、脳科学的見地から見ても正しいと言えるわけですね。ですから、何かを学んだら必ず問題集などで「アウトプット」が確実にできるかどうかを試す必要があります。そして、是非、このことを念頭に置いて、「インプットとアウトプット」の両方をバランスよく組み込んだ学習計画を立ててください。

次回は、英文読解の道具のうち、〈[2] Structure(文構造解析力):文法的に正しく文構造を分析する力〉について説明します。

引用元:脳は「入力」より「出力」で覚える | BizCOLLEGE

« 最初‹ 前 123次 ›最後 »
 

連載予定

Twitter Facebook Google+ LINE

私立大学医学部 入学試験情報

国公立大学医学部 入学試験情報

海外大学医学部 入学試験情報

小・中・高校を探す(中学生以下向け)

準備中

塾を探す(中学生以下向け)

準備中