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理論化学
無機化学
第11回 遷移元素①(Fe)

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遷移元素

周期表の第3族~11族の元素を遷移元素と呼ぶ。遷移元素は、最外殻の電子数が1個または2個で、単体、イオン、沈殿が有色のものが多く、典型元素に比べて密度が高く、融点が高くて硬いものが多い。
また、複数の酸化数を取るものが多いため、酸化剤や還元剤として用いられる。

電子殻を詳しく見ると、小さな電子軌道に分かれており、1つの電子軌道には2つの電子が収納される。電子軌道には s軌道、p軌道、d軌道、f軌道などの種類があり、アルファベットの小さいものほどエネルギーが小さい。
K殻はs軌道1つ、L殻はs軌道1つとp軌道3つ、M殻はs軌道1つとp軌道3つとd軌道5つからなる。
異なる殻の同じ名称の軌道を区別するため、K殻のs軌道を1s軌道、L殻のs軌道を2s軌道というように番号をつけて表記する。

N殻のもっともエネルギーの低い4s軌道と、M殻のもっともエネルギーの高い3d軌道を比べると、4s軌道の方が3d軌道よりエネルギーが低い。そのため、M殻の3p軌道が満たされると、その次の電子はN殻の4s軌道に収納される。

原子番号18 アルゴン(Ar)

K殻、L殻が電子で満たされた閉殻となり、M殻の3s軌道、3p軌道が満たされた状態。

※↑や↓は電子を表す。
(電子は惑星のように自転していて↑や↓はその方向が右回りか、左回りかを表す。1つの軌道には、右回りと左回りの電子がペアになって収納される。)

原子番号20 カルシウム(Ca)

M殻の3d軌道ではなく、N殻の4s軌道に電子が2つ収納された状態。
4s軌道は電子が収納されたことより、内側の電子軌道の電子に押し出されてエネルギー状態が3d軌道より高くなる。

原子番号21 スカンジウム(Sc)

4s軌道が満たされたまま、3d軌道に電子が1つ収納される。
このように、M殻の4s軌道に電子が収納されたまま、内殻の3d軌道に電子が収納されていく原子番号21~29の元素を(第一)遷移元素という。

第四周期の遷移元素(第一遷移元素)の電子配置

※1亜鉛は遷移元素ではない 

※2クロム、銅の4s軌道の電子数が1なのは、d軌道が4個、9個の状態よりも5個、10個の状態の方が安定だからである。

鉄 (Fe)

鉄の性質

鉄は、H2よりイオン化傾向が大きいため希酸を加えるとH2を発生して溶けるが、濃硝酸や濃硫酸を加えると、表面に緻密な酸化被膜が生じ、不動態となって溶けない。

鉄のイオンはFe2+(淡緑色)とFe3+(黄褐色)が存在する。Fe2+は空気中で酸化されてFe3+に変化しやすいため、Fe2+の水溶液を放置しておくと徐々に黄色く変色する。
Fe2+ は還元剤として、Fe3+ は酸化剤として働く。

Fe2+→Fe3++e-
Fe3++e-→Fe2+

Fe2+とFe3+をそれぞれ含む水溶液にNaOH水溶液または NH3水溶液を加えると、それぞれ緑白色のFe(OH)2と赤褐色のFe(OH)3が生じる。

Fe2++2OH-→Fe(OH)2
Fe3++3OH-→Fe(OH)3

鉄はヒドロキソ錯イオンやアンミン錯イオンを作らないため、Fe(OH)2 や Fe(OH)3にNaOHやNH3を過剰に加えても沈殿は溶解しない。しかし、塩基性化合物であるから、希酸に溶解する。

Fe(OH)2+2HCl→FeCl2+2H2O
Fe(OH)3+3HCl→FeCl3+3H2O

鉄は水酸化物イオンやアンモニア分子とは錯イオンを作らない(Fe2+はわずかに[Fe(OH)4]2-となる。)が、シアン化物イオンとは錯イオンを作る。錯イオンの形状は正八面体である。

K4[Fe(CN)6](フェロシアン酸カリウム)は黄色の固体、K3[Fe(CN)6](フェリシアン酸カリウム)は赤血色の固体であることも覚えておこう。

Fe2+を含む水溶液に [Fe(CN)6]3- を加えると、 Fe3[Fe(CN)6]2 で表される濃青色の沈殿(ターンブル青)を生じる。また、Fe3+を含む水溶液に [Fe(CN)6]4- を加えると、 Fe4[Fe(CN)6]3で表される濃青色の沈殿(ベルリンブルー)を生じるが、逆の組み合わせでは異なる色の沈殿が生じる。
Fe2+ を含む水溶液に [Fe(CN)6]4- を加えると、 Fe2[Fe(CN)6] で表される青白色の沈殿が生じる。
Fe3+ を含む水溶液に Fe[Fe(CN)6] で表される褐色の沈殿が生じる。

Fe3+を含む水溶液にKSCN水溶液を加えると血赤色の沈殿が生じるが、Fe2+ではこの沈殿は生じないため、Fe3+の検出反応のひとつとして用いられる。

また、Fe2+は中性、塩基性にしてH2Sを通じると黒色の FeS が沈殿するが、Fe3+は硫化物の沈殿を作らない。

Fe2++S2-→FeS

鉄にCr、Niを加えた合金はステンレスとして身の回りの製品に多く用いられている。

鉄の性質

鉄の単体は、赤鉄鉱 (Fe2O3:赤色) や磁鉄鉱 (Fe3O4:黒色)を高炉でコークス(C)や石灰石(CaCO3)と共に強熱することにより得られる。
高炉の上部から赤鉄鉱、コークス、石灰石を投入すると、炉内で生じた二酸化炭素とコークスが接触し、以下の反応によって一酸化炭素が発生する。

CO2+C→2CO

この一酸化炭素と鉄鉱石が反応して、次のような三段階の還元反応により鉄の単体が得られる。このような一酸化炭素による還元を間接還元という。

高炉の中での還元反応 ( 間接還元 )
① 3Fe2O3+2CO→2Fe3O4+2CO2
② Fe3O4+CO→3FeO+CO2
③ FeO+CO→Fe+CO2

また、鉄鉱石の一部はコークスと接触して還元されるものもある。これを直接還元という。

高炉の中での還元反応 ( 直接還元 )
2Fe2O3+3C→4Fe+3CO2

高炉で還元された鉄は高炉の底に溶解状態で溜まり、銑鉄と呼ばれる。 銑鉄は炭素を多く含むため硬いが、もろくて割れやすい。そこで、銑鉄を転炉に移して酸素を送り込み、含まれる炭素をCOやCO2にして取り除くと粘り強い性質の鋼が得られる。鋼は建築材料や機械部品として大量に利用されている。

また、鉄鉱石に含まれるケイ素などの不純物は、CaCO3が熱分解して生じるCaO(生石灰)と反応しCaSiO3やCa(AlO2)2として銑鉄の上に浮かぶ。これをスラグとよび、セメントなどの原料として用いられる。

Fe の関連図と化学反応式

化学反応式

  • ① Fe+2HCl→FeCl2+H2
     Fe+2HNO3→Fe(NO3)2+H2
  • ②Fe2+→Fe3++e-
  • ③Fe3++e-→Fe2+
  • ④Fe2++S2-→FeS
  • ⑤Fe2++2OH-→Fe(OH)2
  • ⑥Fe(OH)2+2HCl→FeCl2+2H2O
  • ⑦Fe3++3OH-→Fe(OH)3
  • ⑧Fe(OH)3+3HCl→FeCl3+3H2O
  • ⑨2Fe2++[Fe(CN)6]4-→Fe2[Fe(CN)6]
  • ⑩3Fe2++2[Fe(CN)6]3-→Fe3[Fe(CN)6]2
  • ⑪Fe3++[Fe(CN)6]3-→Fe[Fe(CN)6]
  • ⑫4Fe3++3[Fe(CN)6]4-→Fe4[Fe(CN)6]3
  • ⑬3Fe2O3+2CO→2Fe3O4+2CO2
  • ⑭Fe3O4+CO→3FeO+CO2
  • ⑮FeO+CO→Fe+CO2
 
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